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か 「カツ丼」

カツ丼が好きだ。「死ぬ前に何が食べたい?」みたいな質問があって、あれの日本人の一位は「うな重」だ、みたいな本当か嘘か分からないネット記事を読んだことがあるが、妙に説得力があった。たしかにうな重は格別だろう。でも、僕の場合、案外カツ丼もありかな、と思っていたりする。この数年はめっきり観なくなったが、子どもが生まれる前に、かつて妻と毎週楽しみに録画して観ていたテレビ番組に「モヤモヤさまぁ~ず2」というテレ東の番組がある。その2代目アシスタントの、狩野恵里さんが僕たち夫婦はとても好きだった。ウソのない、素直な人なんだろうなぁというのが画面越しにも伝わってくるし、いじられたときに「受け身」がとれるので、ボケの大竹さんが嫉妬していた。

三村、大竹、狩野というお笑いトリオだとすると、これまで「大ボケ」だった大竹さんが、狩野さんの登場により、「中ボケ」に格下げされた。三村さんが軽くボケる→大竹さんが大きくボケる→三村さんやナレーションがツッコむ、という構造が変化した。三村さんの小ボケ→大竹さんの中ボケ→狩野さんの大ボケ→大爆笑という流れになった。大竹さんは寂しそうな顔をし、狩野さんに怨恨を抱くようになり、ゆえに狩野さんに陰湿ないじりをするのだが、それすらも笑いのホームランで返す。モンスターだった。

その狩野恵里さんが惜しまれながらアシスタントを卒業する回で、「最後に食べたいもの」みたいなロケでカツ丼を選んでいた。「分かってる!」と僕は思った。そうなのだ。カツ丼なのだ。いろんなものを食べている人の脳内麻薬物質の量みたいなものを測定すると、カツ丼をかき込んでいる人の脳内はかなり高濃度のそれらがドバドバ出ていると思われ、長州力の言葉でいうなら、「食ってみろ、飛ぶぞ」ってことになる。

カツ丼はそういう食べものなのだ。どこか「バカっぽい」。そして、欲望に忠実な食べものだと思う。僕が一番好きなカツ丼は「かつさと」というチェーン店のカツ丼だ。出汁とタレの甘さが秀逸だと思う。豊橋に住んでいた時に近所にあり、よく仕事帰りに食べていたという思い出補正もあるが、関東にはほとんど店舗のないその店に、愛知に帰ると僕はほぼ必ず行くことにしている。いつも「うん、やっぱり一番美味い」と確認して店を去る。

あと、2年前まで住んでいた東伏見の駅前に、三晃庵という安くて美味しいそば屋さんがあって、そこのカツ丼もマジで美味い。せいろそばとミニカツ丼のセットが1,000円で食べられたのだけど、満足感は半端なかった。たぶん今はちょっと値上げしてるんだろうな。あと、カツ丼って、「最も自分で作らない料理」でもあるんだよね。パン粉まぶして揚げるだけですでに面倒なのに、さらに一手間だからね。二つの料理をする感じになるんだよね。だから、カツ丼って特別なんだよね。でも、案外、「当たり」を見つけるのが難しい食べものでもある。サービスエリアとかファミレスとかで意識低い系のパサパサのカツ丼が出てきたときの悲しみったらないからね。


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