中国法人の社長に就任して3ヶ月経った

職位は董事兼総経理。
日本で言うところの、代表取締役社長に就任して3ヶ月経った。濃密で刺激的で大変で、もう2度と経験したくない3ヶ月だった。

ざっと振り返っておきたい。

まず、正式就任の10日前くらいに共有された財務諸表を見て背筋が寒くなった。社長就任に対する喜びの気持ちが一転、その時からずっと緊張感が抜けない。実質的には不採算事業の立て直しとも言えよう。


朝も夜も土日も、仕事をしているか、仕事のことを考え続けるようになった。この3ヶ月、ほぼ毎日仕事のことが夢に出てくる。日中の業務時間では足りない、寝ながらも仕事のことをずっと考えている。夢に仕事が出てこなかったのは、先日勝利した大型コンペの合格通知が届いた日だけだ。

この3ヶ月に何をしたのか。
今まではクライアントワークをしていれば良かった状況から、法務、財務、人事、総務的なことも諸々対応することになった。

5カ年の事業計画の再策定、人員整理、現地オフィスの確認や選定、資金繰り、中国事業に適した法務フローの構築、親会社との利益分配の座組交渉など。中国ビザの手続きも地味に結構大変だ。

これらの動きをしながら、既存案件と新規コンペ3つにも参加して、現場状況に対しても対応する日々。

どれもこれも不可逆的で重い意思決定が多く、案件対応においてもトラブル続出で、本当にゲロ吐きそうな毎日だった。これ以上大変な日が来るだろうかと思った翌日に、早速さらに大変な1日が始まるといった具合だ。週に何度も栄養ドリンクを飲んだ。

メンタルが弱りそうな時は、状況を俯瞰して見ること、すぐに課題を誰かに相談すること、ちゃんと寝ること、運動することで、ギリギリなんとか乗り越えている。お酒も助けにしてる。家族の支えにも感謝している。


本社への交渉の対峙先は基本的には経営層クラスの方々。彼らからすれば、僕なんて赤子の手を捻る程に小さな存在だ。中国市場の可能性と、この事業の可能性を論理と熱意込めて、丁寧に説明をするところから始まった。

本社は業界最高の実績を持つ大きな会社である。さらに、本社は誰もが知る巨大グループの傘下に位置する会社だ。

当初は自分が提案する諸々の議案が全然前に進まないことが不思議でたまらなかったのだが、本社の業界での立ち位置、グループ内での立ち位置、各組織の立ち位置、そういった背景を入念にインプットすることで、その不可思議がなぜ起こるのかも、最近ようやくわかってきた。

そもそも自分はこの業界で1番になるためにこの会社に入社した。勝つために必要なリソースがあるかもしれないと思ったからだ。どうやったら他社に追いつき勝てるのか毎日考えている。現状を嘆くのではなく、いかに本社やグループのリソースを上手く活用するのかを考えている。

自分の能力経験では解決出来ないような課題も数多持ち込まれる。
そういった時は、溜め込まず、周りや上の方々に頭を下げて、教えてもらう、協力してもらうことを意識している。見栄やプライドなんてない。前に進むなら、いくらでも誰にでも頭を下げる。

就任して3ヶ月、ようやく年内までの黒字化が見えてきた。今までずっと赤字だったと聞く。
大型クライアントのコンペにも勝てた。本社の今までのどのクライアントより大きな会社、かもしれないくらいの世界的大企業だ。
絶望的な状況から、希望が見えてきた。優秀な仲間達のおかげである。


どこまでいけるだろうか。どこまででもいきたい。
でも実際は、目の前の課題に対して、転がりながら、傷を負いながら、謝りながら、ボロボロになりながら、3本進んで2歩を下がるような、進んでいるのか、後退しているのかも分からないような日々だ。もがきながら、苦しみながら、粘り強く、周りに感謝しながら、進むしかない。

この年齢でこの立場でこの経験が出来るのは、運が良かったのだと思う。プロセスを味わいながら日々ベストを尽くしていきたい。


何故こんなに毎日辛いのだろう。振り返ると2つ考えられる。まず自分の権限が小さいこと。社長ではあるけどサラリーマン社長ゆえに動かせる権限が少ない。だけどこれは裏返すと守られている安心感もあるし、許可を貰えた時にリソースが豊かであるということでもある。もう一つは、孤独感。自分に似た状況の人はいないから。秘匿情報も多いし、愚痴れる人もいないし。そこがツライなと思うのだ。慣れるのかな。

何年後が振り返って、あぁあの時の自分はなんて小さかったのだと、そう思える日が来たらいいなと思って、記録を残しておいた次第。

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