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なぜ、ファーリーには10代から20代の男性が多く、完全異性愛者が少ないのだろうか。

はじめに:本稿をお読みになる方へ

 筆者は自らのセクシュアル・オリエンテーション*1について惑った経験があることもあり、同性愛に対して中立よりの肯定的立場と自認している*2。その一方で、本稿においてはセンシティブな内容にも言及しているとも認識しており、またポリティカル・コレクトネスに則った執筆経験が筆者に不足していることから、同性愛に対して攻撃的な論調になっていたり、あるいは攻撃的でなかったとしても、読者の気分を害する表現があるかもしれない。そのような箇所があったとすれば、同性愛そのものや同性愛的傾向を持つ人に対しての批判や攻撃が筆者の意図ではないことを事前にどうか了解願いたい

 また、筆者には社会学研究の経験もなく、本稿は直感に起因する筆者なりの考えを可能な限り言語化・表出したものに過ぎないことも、事前に了解願いたい。それでも本稿がファーリー・ファンダム(定義は後述)や同性愛的傾向について捉える視点を増やす一助になれば幸いである。

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*1. 性的指向。魅力を感じる相手のこと。

*2. 本脚注項目についての余談を、「おわりに」の最後に記載している。

なぜ、ファーリーには10代から20代の男性が多く、完全異性愛者が少ないのだろうか。


<問題提起> 


 ファーリーとは、特に本邦においては「ケモノ」と称される、擬人化した動物にまつわるサブカルチャーにおいて、動物的要素を持つキャラクター自体やサブカルチャーを愛好する人を指して用いられる言葉である*3。
本稿タイトルにおいてのファーリーとは、このサブカルチャーを愛好する人を指す。

 また、ファーリー・キャラクターを愛好する人たちによる文化集団はファーリー・ファンダムと呼称される。筆者もファーリー・ファンダムに属するファーリーの一人であると自認しており、2019年現在(執筆時)で本邦最大のファーリー・コンベンション*4の運営委員会に属し、同運営委員会における活動においても、またその他の趣味的活動においても、日本人に限らないファーリーと接する機会は多い。

ファーリーの友人らと語らう中で、ファーリーには10代から20代の生物学上の若年男性が多く*5、またファーリー・ファンダムにおいては、異性愛よりも同性愛が主流だという印象を受けている。

 また近年、ケモノというサブカルチャーの認知拡散に伴い、ファーリー・ファンダムの人口は増加の一途を辿っており、全世界におけるファーリー・コンベンションの参加者数は実際に右肩上がりを続けている。ファーリー・ファンダム自体の人口増に並行して、ファーリー・ファンダムにおける生物学上の女性や完全異性愛者の人口も増えているように筆者は感じている。

これは裏を返せば、これまでの全世界と本邦におけるファーリー・ファンダムが、男性かつ非完全異性愛者に偏ったサブカルチャーであったということを意味するとも考えられる。

 そこで本稿では、ファーリーに対して筆者が持っている上述の印象の正否およびその理由を、稚拙ながら思案していきたい。

なお本稿においては、一義的には本邦におけるファーリーを思案の対象とするが、筆者としては、同様の仮説が全世界のファーリーに適用され得ると思料するものである。

*3. なお、ケモノやファーリーについての詳細な定義はここでは割愛する。それらの定義について一層深い知見を求める方は、猪口智広氏の記述を参考にされたい。

*4. ファーリー文化にまつわる人・情報・知識・物などの交流場。

*5. なお筆者も本稿を執筆している2019年時点で20代男性である。

* * *

<あらすじと目次>


本稿では、以下の順序で論を展開する。

 まず、少なくとも米国におけるファーリーには、10代から20代の男性が多く、完全異性愛者が少ないという事実を、米国における調査を通して確認する。その後、それぞれの事実とその原因や、関係しそうな事柄に対して、筆者の考えを記述していく。

<目次一覧>

1.
ファーリーには、10代から20代が多く、かつ生物学上の男性が多い

2. ファーリーには、世間一般に比しても、他のサブカルチャーコミュニティに比しても完全異性愛者が少ない

3.
なぜ、ファーリーには、10代から20代の男性が多いのか。その要因は何だろうか。

3-1. サブカルチャーの愛好者、サブカルチャーコミュニティの構成員には10代から20代の男性が多い。その理由はなぜだろうか。またその考察から発展して、どのようにして、サブカルチャーを愛好し、サブカルチャーのコミュニティに属するようになるのかを考える。

3-2. サブカルチャーの中でも、10代から20代の男性がケモノにだからこそ惹かれる独自の要素はあるのか。ケモノというサブカルチャーは、生まれ持った性質として愛好されるのか、それとも、生後の過程でケモノというサブカルチャーを愛好するようになるのか。

Tips. 脳の性分化について

4. ファーリーの多くは、ケモノに関わるコンテンツでオーガズムを感じる事が多いようである。果たして10代から20代の男性ファーリーにとって、ケモノと性愛とは不可分なのか。

5. セクシュアル・オリエンテーションの決定は、先天的か後天的か。

6. ファーリーであることと、同性愛的傾向の後天的な「開発」に関連性はあるだろうか

7. 結論

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