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酒と本の日々:『欲望会議』 ~ポリコレに疲れる日常に

千葉雅也 二村ヒトシ 柴田英里 『欲望会議 「超」ポリコレ宣言』(KADOKAWA 2018)

今日はポリコレなことをやったり言ったりしている合間あいまにコレ読んで、ポリコレに走る自分の毒を中和していた。

二村ヒトシはレズものや女装ものを撮ってきたAV監督で、自分とは趣味があわないので数編しか見たことないし、著書も多いけど自分とは文体あわないのであまり読んではいないが、宮台真司と対話した「どうすれば愛し合えるのか」が面白かった人で、自分の欲望と素直に向き合える人と思った。

千葉雅也は今売れている哲学者ということだが、そっちは読んだことなくて、ネットでエビデンスが社会を覆うことを批判していたり禁煙運動を批判していて注目していた。最近ホモセクシュアルであることをカミングアウトして、この本では当事者としてLGBTの運動の盲点をついている。

柴田英里というアーチストは知らなかったが、ガチでラディカルフェミニズムの見当違いを批判していて、ネットは常に大炎上、その炎上が自分の作品(「社会彫刻」)であるという思想的強面なおねぃさんのようだ。

ネットでできる程度の共感やら好き嫌いの感情をポリコレな正義として社会に主張することが行き過ぎて、すべてが抑圧され、その結果最後はコントロールを欠いた大爆発に至るのではないか、おぞましいものをすべて排除することで21世紀の人間は葛藤の場である無意識を持てないという深いレベルでの変容をとげてしまったのではないかと三人が語り合う。

で、その個々の内容を紹介したら、がんばってポリコレしているみなさんから、おそらく批判ゴウゴウ、ここもプチ炎上必至なんでやめておく。ごめん。

人間にも社会にも個人の闇のなかでしか触れ得ない悪所が必要という、私が反禁煙やら下ネタやらで時にかすめて通ることがやっとであるような反時代的、反社会的主張を、堂々と刺激的にやらかしてくれている。

正しさに疲れを、やさしさに疑わしさを感じてしまった時に読む本。

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