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酒と本の日々:なんで今さらインフルなのよ、インフル怖くてコロナが終わるかぃ!

2020年1月11日

風邪ごときで仕事が休めるかい!!と思って60年生きてきた僕が勧めるのも変な話ではあるが、サラリと読めてちょっとおもろい新書。
木村知著「病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ」(角川新書)
著者のことは知らないがネット上ではけっこう知られたプライマリケア、在宅医らしい。
帯にある「健康増進法という健康自己責任法」「「自助」を強いられる不寛容社会で命を守るために私たちができること」という惹句で、まっとうな内容であることが推測されるが、中味も日本の皆保険制度のよさと必要性を説き、それを守るためにどうすれば「医療費抑制政策」に巻き込まれることなく医療を改革できるか、「困ったときはお互い様と言える社会」でなければいけないと、しごく当然なことが書かれている。細かい議論にはこだわらずさらりと読んでおいて損はなさそう(てか、細かいところは読んでない)。
医療費抑制政策が過剰医療を誘発することが、おそらく日常的に多くの病院でやられていることを実例にわかりやすく説かれている。
あ、おもしれぇと思った話をひとつ。インフルエンザの早期発見、治療が叫ばれるようになってから、かえってインフルエンザが流行するという話。まず風邪と同じような初期症状で病院に行くと、病院にはインフルエンザの患者がどこよりも多いので、インフルエンザではないのにうつされてしまって、そのまま会社や学校に行くことになる。さらに困ったことに、インフルエンザの検査は早期には反応しないし、反応する時期になってもインフルエンザを見逃す率が高い粗雑な検査なので、検査が陰性だったからと本当はインフルエンザに感染している人がインフルエンザではないとの折り紙付きを得て会社や学校に行く。だから早期発見と言えば言うほど、感染が広がり悪循環になる。インフルエンザであろうとなかろうと、風邪みたいな症状が出れば会社や学校を休めるようにならない限り、インフルエンザの流行は防げない。
うん、ごもっともだ。
(僕はどれだけインフルエンザウィルスを周囲にばらまいて生きてきたことか・・・インフルエンザの星に行ったら表彰されるな)
専門家には言われてみれば当たり前のことばかりで、普段自分が忘れている当たり前を指摘されて面白がれるM体質の医療者(あ、僕のことだ)には良書。
専門家でない方々には、重要な社会問題がやさしく書かれていることでお勧め。



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