有馬記念予想 過去の有馬②

 WINSあたりで、長年馬券を買ってきた玄人が連れの競馬初心者に言う。

「この馬とこの馬は一緒にこねーよ!」

 イメージは細身体型にフィットしたシャツを着ていて、パーマをあてている。目を細めて煙草を美味そうに吸う。そんな感じの男である。あなたはどんな馬券か気になり、覗き見しようとする。そんな経験はありませんでしたか。わたしはあります。でも、いったいぜんたいどうして!この馬とこの馬は一緒にこないのか?あのとき、わたしはわからなかった。

 数年前にキタサンブラックがG1をたくさん勝っていた。そのときに、わたしはその問いの答えを知った気がした。キタサンブラックが本格化して、勝ったJC、有馬記念。先行馬は潰れてしまっているのだ。キタサンブラックをマークした先行馬はみな捕まえようとキタサンブラックが直線で動き出したときに同じように追い出す。しかし、キタサンブラックと差は広がるばかりで、差し馬が台頭する。これは武豊騎手とキタサンブラックの作る緻密なラップに秘訣がある。スローだと捲る馬、突く馬。もしくは瞬発力勝負になる。ハイペースにしてしまうとキタサンブラック自身が潰れてしまう。しかし、キタサンブラック&武豊のコンビはそのどちらでもなく後続の馬には嫌なペースで逃げるのだ。スタミナが必要になる。その流れが大好物なのがシュヴァルグラン。キタサンブラックとG1で一緒に馬券内の回数は5/9回。

この馬とこの馬は一緒にこない

ことがあるならば

キタサンブラックとシュヴァルグランは一緒にくる、ということになる。キタサンブラックが逃げや先行でペースを作ればスタミナあるシュヴァルグランは最後に差してくるのである(逆に福永騎手騎乗のシュヴァルグランが逃げた宝塚記念はキタサンブラックも大敗しました...)。前回の記事で2019年の有馬記念はリスグラシューが強すぎて2.3着は差し馬だったと書いた。これと似てゴールドシップが捲り勝ちをするならば2.3着馬は差し馬だとも書いた。そして、このキタサンブラックがキタサンブラックのレースをしたら2.3着馬は差し馬なのである。この馬(キタサンブラック)とこの馬(先行馬)は一緒にこないのである。

 2008年有馬記念。わたしの本命はスクリーンヒーロー!JCでも本命だ。対抗はダイワスカーレット。他には前年覇者マツリダゴッホ、ダービー馬メイショウサムソン。ドリームジャーニー、アルナスラインも買っていた。直線、逃げたダイワスカーレットをはやめにスクリーンヒーローが捕まえにいく。他の馬もダイワスカーレットに襲いかかるが、苦しくなり、脚がとまる。そして2着はなんと14番人気のアドマイヤモナーク。最後方にいた馬である。強い馬が勝つ、しかし、2着は決してその次に強い馬ではない。それをはじめて知ったレースである。競馬には展開があるのだ。だから、この馬とこの馬が一緒にこない、と予想できるのかもしれない。

 ではキタサンブラックが勝った2017年有馬記念。1枠2番キタサンブラック先頭。7番シャケトラ2番手、1番ヤマカツエースは内の3番手。団子隊列。1000m通過は1分01秒6。やはり外枠の馬は後方。3コーナー通過、あまりペースは上がらない。しかしキタサンブラックのすぐ後ろにシャトラ、ピンク帽のカレンミロティック(天皇賞春鼻差ニ着)。この2017は内をしっかり回る。直線スワーヴリチャードの斜行などあるが、中団の内をロスなく回った3番ルメールが二着。先行馬は4コーナーからキタサンブラックを捕まえにいき負かされる。差して3着はいつものシュヴァルグラン。まずキタサンブラックはキタサンブラックのタイトで自分の競馬。それは他馬には一番嫌な競馬。スタミナが問われる。その流れはやはりスタミナ持ちのシュヴァル。クイーズリングは力というよりはルメールが内をロスなくうまく乗った。

 では、前後するがブラストワンピースが勝利した2018年有馬記念。出遅れ気味にでたミッキースワローを横山騎手はさげました。先行争いは激しい。2回目のコーナーを回ったところでキセキが先頭。逃げキセキ、内に1番オジュウチョウサン、外に11番ミッキーロケット。ブラストワンピース(1着)、レイデオロ(2着)は中団。やはりこの年もポジションをとりずらい外枠は後方。1000通過1:00:08。稍重。すこし速めだろうか。わたしにはタイトなきつい流れだと思った。向正面でキセキが後続を離す、馬群は2列。絶妙の仕掛けのタイミングのブラストワンピース。やはりここまですべて騎乗してきた池添騎手だからだろう。4コーナーから追い上げるのはブラスト、レイデオロ、シュヴァルグラン。この順番で追い上げてそのままの着順。このレースもなるべく内を回して、差し馬も内から3頭分程度のところを走る。

 2016有馬記念。1着サトノダイヤモンド。2着キタサンブラック。3着ゴールドアクター。キタサンブラックが本格化した年。前年はゴールドアクターが勝ち。キタサンブラックは3着。しかし、2016年は三歳馬のサトノダイヤモンドが菊花賞に続きG1を二勝目。レースは7番マルターズアポジーが逃げる。1番キタサンブラック番手、2番ゴールドアクター3番手(前年の有馬記念も3番手)。ゴールドアクターから3馬身ほど後ろの外にサトノダイヤモンド。1000m通過が61.0。マルターズアポジーが5馬身ほど離した逃げでこのタイムだから、後続の馬にはあまりキツくない、先行馬有利の流れか。向正面でサトノダイヤモンドが動く。キタサンブラック、ゴールドアクターの間にサトノダイヤモンドが位置をとる。一度はキタサンブラックをつつくような素振り。この三頭が競り合いゴール。先行馬有利の流れ。三歳菊花賞馬、四歳菊花賞馬、五歳前年の有馬記念馬の順で決着。スタミナ持ちの実績馬が内をロスなくしっかり回れば自ずと結果も堅い内容。

 2015年有馬記念。スタートして、ゴールドシップ最後方(1番人気)。ゴールドアクタースタートよく先頭。そこから3歳馬の11番キタサンブラック(菊1着)、12番リアファル(菊3着)ゴールドアクターの順の隊列。二つ目のコーナーで落ち着く。7番ゴールドアクターの外に並んだ9番サウンズオブアース、その外に16番マリアライト。1000m通過は62.4。リアファルは途中で故障のため離脱。前に行った馬4頭が直線叩き合い1着ゴールドアクター、2着サウンズオブアース、3着キタサンブラック、4着マリアライト(翌年宝塚記念、エリザベス女王杯を制覇)。ちなみにゴールドアクターは昨年菊3着、サウンズは同級で菊2着。2015、2016年の総括はスタミナ馬の実績先行馬がスローでそのままゴール。ゴールドシップは1番人気も4.4倍。能力の翳りを心配がオッズに表れていた。2番人気は鳴尾記念、宝塚記念、京都大賞典、天皇賞秋4連勝、JC3着のラブリーデイ。脂は乗っていたがやはり中距離で結果を出してきた馬が有馬記念で結果がだせないことはよくあることだ(キングカメハメハ産駒はそういうタイプが多いのか、いつかキングカメハメハ産駒の距離適性を調べたいた思う。)。

2014 有馬記念。まずタイムから2:35:3。このタイムは馬場改修して6年間の有馬記念で1番遅いタイム(リスグラシューの年は2:30:5)。そして、ディープインパクト産駒が有馬記念を初勝利。勝ち馬ジェンティルドンナ(4番)は3番手を追走、2着のトゥザワールド(6番)は7番手。内目の枠の二頭ともインベタ。1番人気ゴールドシップはスローのレースのため捲りきれず良さが出せず3着。3番人気ジャスタウェイも上がり最速で追い込むも4着。この福永騎手の騎乗に怒りを露わにしているコメントをいまだに見かける。しかし、それまでの有馬記念は上がり最速を使う馬はほとんど勝ち負けであった(連対はほとんどしている)。それが福永騎手のレースプランにあったと思う。それが逃げ馬不在がドスローになり、先行有利な流れになってしまった。もう一つ、この翌年の2015年からルメール騎手、デムーロ騎手がJRA騎手となる。2015〜18の4回連続でどちらかが有馬記念で連対をしている。人気薄でもしっかりロスなく周り結果をだしてきた二人。外人買っておけば当たるという文言は嫌いだが実のところ有馬記念を上手く乗るのは彼らかもしれない。昨年も外国人ジョッキーのワンツーである。

 ここまで馬場改修後の有馬記念を振り返った。内枠、先行馬、スタミナのある実績馬がこう結果いうことがわかる。そして、中山適正。三歳馬もこの条件が重なれば実力問わず抑えたいところである。あと内を走る、外を走る違いでも台頭する脚質が変わってくるので有馬記念までの芝のレースで勝ち馬や上位の馬がどこを走るかチェックしておきたい。

 前回の記事でルメール騎手が差す競馬を示唆して、それにわたしは危険だと言った。ルメール騎手騎乗フィエールマンはスタミナはあるが外枠の差し馬。スローの流れになり過去の傾向から上がり最速を使ってもまた4着になってしまうかもしれない。ジャスタウェイのように。スタミナある差し馬シュヴァルグランでもやらなかった捲る競馬をするなら1着はあるかもしれない。しかし、捲りは諸刃の刃。わたしはフィエールマンを本命にしないが、ルメール騎手がどう乗るか楽しみである。捲りが成功するならば先行馬は潰れる。わたしの本命は先行馬である。有馬記念が楽しみだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?