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母ちゃんが日本に帰ってくるなって言われてさ。

大学3年の夏休みにタイでバックパッカーとして、
ゲストハウスに滞在していた頃。
エントランスで受付の人に怒鳴っている日本人がいた。

同じ部屋の人とクーラーの使い方について
トラブルになり、
日本語で受付の人に怒っていた。
受付のタイ人はただ呆然としていた。

話しかけてみると、今度は私に怒鳴ってきた。
ただ感情的になっていても話が出来ないと思い、落ち着かせるように話を聞く。

その人は段々と気持ちも落ち着いて、
私に興味を持った。

時間が経つにつれて、過去の話をするようになった。

「俺が君の歳くらいの時は暴走族やって、そのまま暴力団に入ったんだけど、自分がついていけなくなって辞めたんだよね。そこから仕事とかしたけど、どれも上手くいかなくて。」

さっきまでの表情は無くなり、
どこか寂しげな表情だった。

タイにいつからいるんですか?と聞くと

「東南アジアをボランティアしながら生計立ててる。もう8年くらいいるのかな。。」



「母ちゃんが日本に帰ってくるなって言われてさ。」


その後何話したか覚えてないけど、

ただただ、居場所のない時間だけが過ぎ去った。

その人がどんな人生を過ごしたのか、
夢と現実の間にどんな葛藤があったのか、
この私でも想像できない。
ただ、自分が消えないように生きている。

そんな気がした。


私もそうだった。


私にも家族が居ない。




家族がいなかったら友達を作ればいい。






友達は自分で選べる唯一の家族なんだから。





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