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Vol.12 絵本さんぽ「本屋イトマイ」

こんにちは!
淑徳大学 杉原ゼミの豊岡です。

今回私が取材させていただいたのは、ボローニャ絵本さんぽに昨年から参加されている本屋イトマイさんです。

7月29日(金)~8月11日(木)まで開催されていた「たけうちちひろ原画展」について、そして、お店についてのお話を店主の鈴木さんに伺いました。
(※「たけうちちひろ原画展」は現在終了しています。)

本屋イトマイ


本屋イトマイは東武東上線ときわ台駅北口から徒歩1分のビル2階にある、ときわ台唯一の新刊書店です。店内は非常に落ち着いていて、ノスタルジックなオシャレな空間が魅力的です。多彩なジャンルの本がぎっしりつまった本棚にもついワクワクしてしまいます。

メインコーナー

また、本屋イトマイは書店だけではなく、ドリンクやフードが食べられる「喫茶」の側面を持っています。クリームソーダやスパイスカレーといった店主・鈴木さん自ら作るメニューも非常におススメです。

『本屋イトマイ』
本屋イトマイは、「書店」と「喫茶」の両方からなるお店です。
例えば、小さいながらも多様なジャンルを揃えた書店で本を吟味し、気に入ったものを購入してから、静かでゆったりとした空間の喫茶で珈琲と軽食を楽しみながら本を読む。
そのような使い方ができます。
また、そのような使い方でなくとも、各々の「暇(イトマ)う」、「暇(イトマ)い」方があると思います。ぜひ自分流の過ごし方を見つけてみてください。
営業時間は公式TwitterとInstagramでお知らせします。

https://www.booksitomai.com/

「たけうちちひろ原画展」

本屋イトマイさんでは、板橋区立美術館松岡館長からお誘いを受けたことをきっかけに昨年からボローニャ絵本さんぽに参加されています。今年は切り絵・絵本作家であるたけうちちひろさんの原画展が行われました。
(ボローニャ絵本さんぽの詳細はこちらから)

今回展示された原画は、たけうちちひろさん作の切り絵絵本「おおきい ちいさい」です。

『おおきい ちいさい』
作:たけうちちひろ
おおきいゾウとちいさいネズミ。シンプルな切り絵の赤ちゃん絵本。おおきい ちいさい、と、くらべながらページをめくると、前のページではおおきかったものが次のページではちいさくなって、つながっていることに気づきます。
ちいさいけれど、おおきい、おおきいけれど、ちいさい。まだちいさいあかちゃんだけど、(こんなにおおきくなったね)と思いをこめてつくった絵本。
「おおきい」「ちいさい」と声にだして、あかちゃんといっしょにたのしめる絵本です。

https://www.chihirotakeuchi.com/books/

1~2歳向けに制作されたこの絵本は、明るい色味にシンプルながらも温かさを感じる、とっても愛らしい一冊となっています。近くで原画を見てみると、切り絵ならではの紙の凹凸や、はさみによる切り込みの跡など、手作業の細かさやぬくもりを感じました。

『おおきい ちいさい』の原画

また、細部まで切り絵で表現されていることに驚き、感動しました。

左の原画の赤ちゃんとケーキも……


切り絵で表現されています!

店内には原画だけでなく、たけうちさんの作品をモチーフにしたグッズもたくさん売られていました。

なんと複製画も!

たけうちちひろ
大阪府出身・在住 枚方市PR大使
武蔵野美術大学短期大学部グラフィックデザイン科卒業
こども造形絵画教室おえかきひろば代表
地域新聞社にて編集・デザインを担当。2007年退社後、こども造形絵画教室おえかきひろばを大阪・京都中心に開講。その他、企業や幼稚園、小学校、障害者福祉事業所等の工作指導・ワークショップ企画、工作本の監修など手がける傍ら、自らの作家活動にも励む。2015年、2016年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選後、国内外で絵本を出版。現在出版した絵本は10ヶ国語にのぼる。2018年3月8日「国際女性デー」には世界12人の女性アーティストに選出され「Google anniversary Logo」を制作。

https://www.chihirotakeuchi.com/about-1/

店主・鈴木さんへインタビュー

今回、本屋イトマイの店主である鈴木永一さんへお話を伺いました。
 

―絵本さんぽに参加されたきっかけは何ですか?

鈴木さん「板橋区立美術館の松岡館長にお誘いいただいたことがきっかけですね。『絵本のまち板橋』のアピールに協力できれば、と思い昨年から参加しています。」

―絵本さんぽ参加にあたって、たけうちちひろさんの作品を扱うことになった経緯を教えてください。

鈴木さん「美術館側からの提案でたけうちさんの原画展を行うことになりました。実は、お話を伺うまでたけうちさんの作品を読んだことはなかったのですが、今回のご縁をきっかけにたけうちさんの作品を知りました。」

―鈴木さんの思う『おおきい ちいさい』の魅力は何ですか?

鈴木さん「たけうちさんは元々みんなのいちにちのような非常に細かい、技術的な絵本を多く出していたんです。けれど、今回初めて1~2歳向けの本を描かれて、他に見ない大胆な構成や、色のコントラストが魅力だと思います。」
 


2019年にオープンし、今年の3月で3周年を迎えた『本屋イトマイ』。
そんな本屋イトマイについてもお話を伺いました。

―本屋イトマイには会話を控えていただく代わりとして筆談ができる、という珍しいきまりがありますが、開業当初からこのきまりはあったのですか?

鈴木さん「はじめから紙とペンを置いて筆談ができるようにしたり、会話はなるべく控えてもらっていましたが、きまりにはしていませんでした。しかし、コロナ禍に入って完全に会話を控えてもらった方がいいと思い、筆談のきまりを作りました。なので、きまりが先にあったわけではないですね。」

―「コロナ禍」というワードがありましたが、コロナ禍以前と以後で他に何か変化はありましたか?

鈴木さん「ワーク・ライフ・バランスが大きく変わりました。コロナが流行る前は週6日、長い時間営業していたんですが、以後は営業時間を短縮して家のことをやったり、息子と遊ぶ時間を増やすようになりました。」

―お店をやっていてやりがいを感じる瞬間はどのような時ですか?

鈴木さん「このお店はメニューの提案や仕込み、本の発注、全部自分一人でやっているので、どれでも売れた時は嬉しいですね。」

―本の発注をする際、何かこだわりはありますか?

鈴木さん「こだわりすぎないことがこだわりです。個人書店は割とこだわる所が多いと思うのですが、イトマイはときわ台唯一の新刊書店なので、幅広くオールジャンル仕入れるようにしています。」

―今後の展望はありますか?

鈴木さん「イベントなどをやりたいですね。作家さんを呼んだり、展示をしたり、人が集まるイベントができたらな、と思っています。また、利用率の低い高校生、大学生といった若い人や年配の方にもっと訪れてもらえるようにしたいです。」

―話が戻ってしまい申し訳ないのですが、息子さんがいらっしゃるということで、鈴木さんは息子さんにどのような絵本を読ませてあげたいですか?

鈴木さん「そうですね、ためになる本を読ませたいですけども、基本的には読みたい本を読ませていますし、それでいいと思っています。ただ、やっぱり読ませたい本を選んでしまうときもあります(笑)」

―たけうちさんの作品でだれのほね?という動物の骨をテーマにした珍しい作品がありますが、鈴木さんの思うこの作品の魅力は何ですか?

鈴木さん「子どもは動物や恐竜の見た目だけではなく、博物館に展示されているような骨みたいなものにも興味があるので、“裏”の部分が見えるところが魅力だと思います。かわいい、かっこいい、だけじゃないところも魅力だと思います。」

―切り絵は手間も時間も非常にかかる作業だと思うのですが、たけうちさんが切り絵にこだわる理由を鈴木さんはどのように考えていますか?

鈴木さん「たけうちさんではないので正確にはわからないのですが、私個人の考えとしては難しい方がおもしろいからじゃないかなと思います。岡本太郎さんの言葉で“難しい道と易しい道だったら難しい道を選びなさい”というような言葉があるのですが、私もその通りだと思っていて、難しい方がいいと思うんです。正直、この店も1人で経営するのは難しいし、しんどいときもあります。でも、難しい方がやっていておもしろいし、楽しいし、それだけ価値があると思っています。ですので、たけうちさんにとっての切り絵も同じなんじゃないかな、と勝手ながら思っています。」


インタビュー後、鈴木さんに今おススメの本を数冊教えていただいたので、紹介いたします。

今おススメの一冊

『父と子の絆』
著:島田潤一郎
「日曜日の昼に、生後七日後の赤ん坊がぼくの家にやってきた。
それから、人生がガラリと変わった」
――ひとり出版社・夏葉社を吉祥寺で営み、
『古くてあたらしい仕事』『本屋さんしか行きたいとこがない』などの
著作にもファンの多い島田潤一郎が、
幼きものに寄せるあたたかな眼差しと言葉たち。

https://artespublishing.com/shop/books/86559-228-3/


若い人におススメの一冊

『日記に棲む日々 本と家族と書くことと』
著:鍋島讃
表紙:鈴木永一(本屋イトマイ)
2019年11月〜2021年11月の日記。
特別なことは起こらない、けれども日常すべてがドラマチックになった日々の生活の記録です。著者である鍋島さんはイトマイの常連ということで、作品中にイトマイが何度も登場するそうです。

https://fuurinshobo.stores.jp/items/62650f9ec9883d60b5d2ec88


鈴木さんの思い出の二冊

『ダロウェイ夫人』
著:ヴァージニア・ウルフ
訳:丹治愛
現在と過去を自在に行き来し、青春時代を回想する「意識の流れ」の文体で、クラリッサ・ダロウェイの1923年6月、第一次大戦の傷跡残るロンドンのある一日を描く。モダニズムの代表作。

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-760535-8

『波』
著:ヴァージニア・ウルフ
訳:森山恵
作家みずから劇=詩(プレイポエム)と呼び、小説の純粋性を追求した作品であり、後世に多大な影響を与えた、ウルフ文学の到達点。
詩情豊かな訳文による、45年ぶりの新訳。

https://www.hayakawabooks.com/n/n3c473a889eb5

最後に

たけうちちひろさんの切り絵は技術もさることながら、どの作品も読み手への愛情にあふれていると感じました。読んでいると自然と笑顔になる、そのあたたかさがたけうちさんの絵本の魅力なのだと思います。
たけうちさんの原画をイトマイさんで鑑賞できてとても幸せでした!

お客様と本への愛で溢れる本屋イトマイ。穏やかな時間が流れるこの空間は、安らぎと癒やしを与えてくれます。ぜひ、イトマイにて「自分の時間」を楽しんでみてはいかがでしょうか?


イトマイさんでは11月1日(火)~11月26日(土)にかけて、石井ゆかり著『星栞 2023年の星占い』の表紙イラスト展が開催されます。砂糖ゆきさんが描いた12星座分のスイーツイラストの原画が展示されますので、ぜひ訪れてみてください!


ここまでお読みいただきありがとうございました。
以上、淑徳大学杉原ゼミ、豊岡が担当しました。


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