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Vol.8「みなとダイバーシティフェスティバル2022」
はじめに
こんにちは!淑徳大学杉原ゼミの豊岡です。
突然ですが、みなさんは近年よく耳にする「ダイバーシティ」が何を意味しているか知っていますか?言葉は知っていても意味を知らないという方も多いのではないでしょうか。
ダイバーシティとは、直訳すると「多様性」という意味であり、様々な違いを持った人々のことを指します。
今回はそんなダイバーシティをテーマにしたイベント、「みなとダイバーシティフェスティバル2022」に参加し、関係者の方々へ取材をさせていただきました。
みなとダイバーシティフェスティバル2022
「みなとダイバーシティフェスティバル2022」は外国人居住者が多く、また、多様な特性・価値観を有した人々が住まう港区が赤坂で開催したイベントです。相互理解の促進を目的として6月11日、12日の2日間にわたって開催され、多くの人が来場しました。
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このイベントは大きくステージコーナーとブースコーナーに分けられており、ステージコーナーでは女性政治家である小池百合子氏やLGBTQの方が登壇し、講演やディスカッションが行われました。また、ブースコーナーではブラインドサッカー体験やSDGsをテーマにしたアート制作のワークショップ等、様々な企画も行われました。私たちは2日目のお昼から参加したのですが、非常に学びのある濃い時間を過ごすことができました。
「Touch&Feel 布絵本を作ろう!」
様々なブースが並ぶ中、私たちは株式会社マイティブックさんが主催する「Touch&Feel 布絵本を作ろう!」というブースを主に取材させていただきました。
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「Touch&Feel 布絵本を作ろう!」は、ショールームに飾られ役目を終えたカーテンサンプルを使用した、視覚障がい者のための布絵本の製作をするSDGsにも配慮した体験型ブースです。園児・小学生を対象として、1日4回ワークショップが開催されました。
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ワークショップは各回定員8名で行い、全体の説明がされた後、1人の子どもに1人のスタッフが説明・サポートをする構成で進んでいきます。マイティブックさんだけではなく、聖徳大学の先生と学生さんも特別活動として参加されていました。全体の説明では、布絵本が赤ちゃんや視覚に障害をもつ子どものために作られたものであることや、今回のワークショップで理解してほしいことをお話しします。また、今回使用するシーナ・タノさん作の『ちいさなたまごはなんになる?』の読み聞かせを子ども文庫主催の神保和子さんによって行われました。その後、実際に布絵本作りがスタートします!
まず初めに行うのは布絵本の核となる土台選びです。色・柄・手触りの違う土台が複数用意されており、子どもたちは悩みながらも自分のお気に入りの1枚を見つけていきます。土台が決まったら次はパーツ選びです。今回使用するパーツは、いもむし、葉っぱ、木、さなぎ、ちょうちょです。葉っぱはたまごのついたもの、少しむしに食われてしまったもの、そして何もついていない3種類がストーリーに合わせて用意されました。子どもたちは質感の違うパーツを楽しみながらひとつずつ選んでいきます。
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選んだパーツは裏に両面テープが貼ってあるため、子どもでも簡単に布絵本に貼ることができます。どこに置くのか自分なりに考えながらぺたぺたとパーツを貼っていくと、なかにはページからパーツがはみ出している子も!しかし、それもその子のオリジナリティとなり、唯一無二の布絵本になっていました。
パーツを貼り終えた後、スタッフの松井さんの手によって仕上げが行われたら布絵本の完成です!完成した布絵本はすぐに読むのではなく、全員が完成した後に目隠しをしながら読み聞かせを行います。子どもは目が隠されているため、耳でストーリーを聞き、手と指先で触りながら絵を想像します。この読み聞かせを行うことで、子どもに「視覚に障害がある人の環境を理解してもらう」というワークショップの目的を体験してもらいます。そして、最後に日常にある点字の役割についての説明を交えた、視覚に障害を持つ人々に関わる話をしてワークショップ自体は終了となります。
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ワークショップ体験終了後の子どもにインタビューを行うと、「楽しかった!」「目の見えない子の気持ちがわかった!」といった感想をもらいました。
また、1歳の子どもと参加されたお母さんからは「初めは子どもが布絵本を作れるか不安だったけど、手で触りながらパーツを選んでいて一緒に楽しむことができました。家でもやってみたいです」という感想をいただきました。
ワークショップは大盛況で、2日目の最後の回では急遽イスを追加した9名で布絵本作りが行われました。日本人だけではなく、中国人の子どもやモンゴル人の子どもも参加し、国を越えたダイバーシティな取り組みを肌で感じました。
ワークショップ開催の経緯
この「Touch&Feel 布絵本を作ろう!」は、博報堂が設立した創造性を研究・開発・社会実装する研究機関「UNIVERSITY of CREATIVITY」(UoC)が2022年に開催した、創造性で社会を変えることを目指す『CREATIVITY FUTURE FORUM 2021』をきっかけに生まれました。
『CREATIVITY FUTURE FORUM 2021』のプログラムのひとつとして、廃材やリサイクル素材の有効活用の可能性から、SDGsや社会に貢献できるアイデアの募集が行われました。そのうちのカーテン・カーペットサンプルの再利用部門で松井さんの「バリアフリー布絵本」が最優秀賞を受賞したことを受け、マイティブックさん、スポンサーである東北新社さん、その関連会社でカーテンなどを取り扱うナショナル物産さんが協力し合うことで、ブースの開催へと至りました。
布絵本企画発案・松井紀美子さん、聖徳大学・学生さんインタビュー
今回、ブースを主催した株式会社マイティブックの代表であり、布絵本の企画発案者である松井紀美子さんへインタビューをさせていただきました。
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松井紀美子さん(左)
松井さんは、友人のFacebookでのシェアから『CREATIVITY FUTURE FORUM 2021』の存在を知り、本来であれば高価な布を無料で使えることや、場所も人もある環境を魅力に思い、参加することを決めました。
「バリアフリー布絵本」のアイデアについてはすぐに思いついたが、アイデアの提出期限まで時間がなく、1週間という短い期間で企画を練り上げた、と語る松井さん。アイデアの発表会でも周りがPC等を使って発表する中、松井さんは手書きの企画書を持参しました。しかし、「出すことが大事」という信念のもと行った発表は、SDGsだけでなく障害者にも配慮した企画が高く評価され見事、最優秀賞を受賞されました。
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ブース開催にあたって大変だったことを聞くと、「組織同士の連携が大変だった」と話す松井さん。今回のイベントの主催であるTBSさんやブーススポンサーである東北新社さん、ナショナル物産さんに聖徳大学さん。多くの人々が関わっているため、連絡の一つをとるにも非常に時間がかかったと教えてくれました。
最後にやってみての感想を伺うと、「子どもよりも、親の理解が深まったと思う」と話してくれました。子どもだけでなく、子どもを通して親世代の認識が変わっていくことで、SDGsや障害者に理解ある社会が作られていくのだと、私自身も強く感じることができました。
また、聖徳大学の学生さんへもインタビューをさせていただきました。
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聖徳大学・児童学科の学生さん(右)
図書館系のゼミに所属していた学生さんはゼミを通じてこの活動を知り、図書館の児童サービスにも通ずると思い参加することを決めた、と教えてくれました。
主な作業はパーツ作りで、約2~3週間の間、休み時間や空きコマを使いながら制作したと言います。「廃材を使っているのでほつれやすかったり、もとから変な形に切られていたので、普通の布を使うよりも手間がかかりました」と大変だったことも教えてくれました。
イベント当日の感想を伺うと、「生で子どもと触れ合う機会がなかったので不安でしたが、スムーズに進めることができてよかったです。また、今までいい素材を使っておもちゃを作っていたんですけど、今回使用した素材は色がばらばらで、肌触りもざらざら(いつもはいい手触り)だったのが新鮮でした。でも、それをオリジナリティに変えられたのでよかったです」と笑顔で話してくれました。
ブーススポンサー・武井希望さん(東北新社)インタビュー
映像事業を取り扱う大手・東北新社の社員であり、UoCの一員でもある武井希望さん。東北新社では20~30名程の有志で構成されたSDGsサークルにも所属し、SDGs活動に精力的に取り組んでおられます。そんな武井さんへインタビューをさせていただきました。
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武井希望さん(左)
まず、今回ブーススポンサーになった経緯について伺うと、「まだよくわからないと思うので、UoCの説明からさせてもらいますね」と前置きをしたうえで経緯についてお話してくださいました。
元々繋がりのあった広告会社・博報堂さんのゼミに2年間所属していた武井さんは、サスティナビリティについて勉強していくうちにUoCの存在を知り、所属に至りました。UoCは「世の中の人は皆クリエイティブだ」という考えを持ち、クリエイターだけでなく、一般の人々のクリエイティブセンスを引き出すにはどうしたらよいか考え、どう発信するかを研究しています。また、「廃棄物も資源」と捉え、人間が地球を壊している現状で、物を捨てないようにするためにはどうすればよいか、についての研究も行っています。
東北新社のグループ会社・ナショナル物産では海外のカーテン・カーペットを販売しているのですが、ショールームに飾られたサンプルは役目を終えると使い道がなく、そのまま廃棄されていました。「半年に1回、2トントラック1台分、多いときには4トン分のサンプルが20万円ほどかけて捨てられていました。素材はとても良いのに捨てられるのはもったいない、と思いました」と語る武井さん。SDGsサークルのメンバーもお金をかけて廃棄していることに疑問を持ち、武井さんがCCL(UoCの中のプロジェクトのひとつ)に提案し、一般の方から再利用方法のアイデアを募集することになりました。
そして、昨年の12月に一般の企業が持っている廃棄物を集め、再利用方法のアイデアを募集するアイデアハッカソンが行われました。カーテン・カーペット部門には10案弱のアイデアが集まり、その中で松井さんの「バリアフリー布絵本」が最優秀賞を受賞されました。
しかし、まだこのときはブースを開催することは決まっていなかったといいます。「実行できたのは松井さんの力が大きいです。松井さんの行動力と人脈があってこそ開催ができました。また、UoCにTBSさんの関係者がいたことも大きかったですね」と武井さんは話してくれました。
武井さんは通常の業務の合間を縫ってSDGsサークルやUoCの活動に参加されています。プライベートの時間はほとんどなく、イベントの前日も遅くまで仕事をしていたといいます。そんな武井さんにSDGsについてどのような考えを持っているのか伺うと、「SDGsは長期的な見方が必要」と答えてくれました。日本人はサスティナビリティの意識が低く、なかなかサスティナブルの考えが浸透しない。そのため、世の中ごとにするには政治家と巨大な企業がタッグを持つといったソーシャルインパクトや、システム化することが必要だと話します。
また、今は「種をまく」ことが重要だと話してくれました。今すぐに世間の考えや状況を変えるのは難しいが、今回の布絵本のように若い世代に向けて種をまくことで将来的にSDGsの考えが浸透すると思う、と語る武井さん。UoCはそのための「種づくり」として、SDGsに関する話し合いや多様なイベントを開催しているといいます。
「色々な人や環境に配慮した仕事のやり方をしていかなくてはいけない」と話す武井さん。今回の布絵本やSDGsサークルでの活動はほぼ利益が出ない採算度外視の取り組みだといいます。けれど、武井さんは人と地球に優しい仕事のやり方を模索し、日々現状を変えるために活動されています。その姿はとてもかっこよく、強い憧れを抱きました。
今は飢餓の問題に興味がある、と話す武井さん。廃棄食材を使ったレストランや、ホームレスの方へのフードバンクなど、懸念事項はたくさんあるが実現してみたい、というアイデアを話してくれました。
武井さんはSDGsの問題について知識が深く、真剣に向き合っている姿が印象的でした。私ももっとSDGsについて考えなくてはいけない、と強く思わされました。
最後に
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「みなとダイバーシティフェスティバル2022」に参加したことで、SDGsやダイバーシティを身近に感じるようになりました。参加するまではSDGsやダイバーシティの問題はどこか遠い、他人事のような存在でしたが、実際は自分のすぐ隣にある問題なのだと気づくことができました。
この問題はどちらもすぐには解決できる問題ではありません。けれど、一人一人が問題意識を持ち、理解しようとすれば少しずつ良い方向に変わっていくと思います。私も知識を深めたうえで自分にできることを探し、誰にとっても住みやすい社会を作る手助けをしていきたいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
以上、淑徳大学杉原ゼミ、豊岡が担当しました。
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