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モビリティ大変革期における世界のユニコーン(前編)

皆さんこんにちは、ジェネシア・ベンチャーズの祝です。最近自身のツイッターでEVやモビリティに関するツイートをアクティブにしてますので、ご興味がある方是非フォローしてください。
20世紀に始まった個人所有の自動車による交通の時代から、今ではシェアリングエコノミー、電動化、そして自動運転といった新たな概念が交通の常識を塗り替えつつあります。しかもこれらは孤立して存在しているわけではなく、相互に連携しながら複合的な変化を生み出しています。
本稿では、このような革新の渦中に、モビリティ・トランスポテーションの領域でユニコーンになった会社を幾つかピックアップしてご紹介したいと思います。
※中国で多数出てきている新興EVメーカーは数が多く淘汰のスピードが速いため、今回は対象外としています

ユニコーン企業一覧

2023年6月時点

1.Nuro(US/2016年)

Nuroは、自動運転車を活用した商品配送を専門とするアメリカのスタートアップ企業で、特に"last one mile"の配送に焦点を当てています。同社は2016年に元Googleの自動運転車プロジェクト(現在のWaymo)のエンジニアであるDave FergusonとJiajun Zhuによって設立されました。
Nuroは、完全自動運転の小型電気デリバリーロボットを開発しており、実証用のプリウスベースのP1、P2、オリジナルモデルのR1、R2に次ぐ最新モデル「Nuro」が2022年に発表されました。住宅地域内で低速で運行することを前提に設計されており、ローカルのレストランや小売業者から顧客の家までの配送を効率的に行うことができます。宅配用のロボットであれば、人間を乗せるよりクリアすべき規制のハードルが低く、早期に収益化が図れるという目論見がありました。
米当局の規制をクリアし、トヨタ、Uber、BYD、セブンイレブン等と着実にパートナーの輪を広げてサービスの実用化に着手するなど、目覚ましい躍進を遂げているスタートアップです。
累計調達額:$2.1B(約 2,400億円)

2. FlixBus (Germany/2011年)

FlixBusは、長距離バスの旅行と移動を格安で提供可能にするヨーロッパ拠点のモビリティスタートアップです。2013年にドイツで設立されたFlixBusは、短期間で急速に拡大し、現在ではヨーロッパ全域、そしてアメリカの一部にもサービスを提供しています。
FlixBusは自社でバスを所有せず、ローカルのバス会社と提携してサービスを提供しています。これにより、オペレーションを効率化し、バスの旅をよりアクセシブルで便利なものにしています。5ユーロから乗車可能という低価格さだけでなく、アプリで簡単に予約可能、ヨーロッパ全土を網羅する路線数の多さ、無料Wi-Fi・全車両トイレ完備などから多くの観光客に人気の移動手段になってます。
FlixBusのミッションは、「スマートで緑色の移動体験をすべての人に提供する」ことであり、持続可能性とデジタルイノベーションを通じて、ヨーロッパの長距離移動のパラダイムを変えることを目指しています。
累計調達額:$1.2b(約1,600億円)

3. 曹操出行 Caocao Zhuanche(China/2015年)

曹操出行(Caocao Zhuanche)は、中国の大手自動車製造会社である吉利控股グループによって2015年に設立されたライドシェアリングサービスです。曹操出行は、主に電気自動車を使用したグリーンでエコフレンドリーな交通サービスを提供しています。
吉利控股グループは、自動車製造から車両の販売、運転手の雇用、ライドシェアリングプラットフォームの運営まで、一連の業務を垂直統合することで、曹操出行は車両の品質管理、サービスの安定性、顧客体験の向上に大きな利点をもたらしています。
同社のサービスは主に中国で展開されており、北京、上海、杭州など、国内の主要都市をカバー。さらには、その他の一般的なライドシェアリングサービスとは異なり、プライベートカーのドライバーではなく、専門的な訓練を受けたプロフェッショナルドライバーを雇用しています。これにより、安全性とサービス品質が担保され、ビジネス用途でも幅広く使われるようになりました。
累計調達額:48億元(約960億円)

4. Banma Network Technologies(China/2015年)

Banma Network Technologiesは、オープンなスマートモビリティプラットフォームを提供しています。同社は中国の最大の自動車メーカーであるSAICモーターと、中国のAlibaba Groupの合弁企業として2015年に設立されました。
Banmaの主力製品は、AliOS for Carsと呼ばれる自動車向けオペレーティングシステムです。このOSは、自動車がインターネットに接続され、さまざまなオンラインサービスやアプリケーションにアクセスできるように設計されてており、自動車は単なる移動手段から、エンターテイメント、コミュニケーション、ナビゲーションといった機能を一体化したコネクテッドデバイスへと進化させることが可能です。
Banma Network Technologiesは、中国の自動車業界の中で急速に進化する「インターネット・オブ・ヴィークルズ」の分野で、先駆者的な存在であり。現在MG、荣威、シトロエンの一部車種に搭載されています。
累計調達額:$700m(約 900億円)

5. Einride(Sweden/2016年)

Einrideは、スウェーデンを拠点とする物流テクノロジー企業で、電動で自律走行可能なトラック(Pods)を開発しています。
EinrideのPodは、運転席や窓がない、非常に未来的なデザインの電動トラックで、完全自律走行を目指していますが、現時点では、自動運転システムが対処できない特定の状況や緊急時には、遠隔操作センターのオペレーターがPodを人間が運転するように遠隔制御することができ、これも業界初の取り組みでした。
このPodは、一度の充電で最大200kmの航続距離を実現し、運送業界における二酸化炭素排出量を大幅に削減することが出来、人間のドライバーが不要であるため、長距離輸送や夜間運転など、人間のドライバーには困難な作業も可能になります。
さらに、Einrideは自律走行トラックだけでなく、データやAIを活用する輸送インテリジェンスシステムの「Einride Saga」も開発しています。このシステムは、Podの動作を監視し、最適化し、必要に応じて人間が介入できるようにするものです。2022年からは米国でも公道の実証実験を開始しました。
累計調達額:$652m(約 880億円)

6. BlaBlaCar(France/2006年)

BlaBlaCarは、フランスを拠点とする長距離相乗りサービスのプラットフォームです。同社は2006年に設立され、ヨーロッパを中心に急速に成長しました。
様々なライドシェアサービスが立ち上がっていますが、BlaBlaCarの、それらとの差別化ポイントは”長距離移動”であることです。フランスをはじめ、ヨーロッパ各国は安さに加えて陸続きという好条件が重なり、車で長距離を移動するのがスタンダードです。そこで長距離Busより安い価格を実現したことにより、一気に普及しました。
BlaBlaCarは既に35以上の国で利用できるようになり、全世界で7千万以上のユーザーを有しています。また、長距離バスサービスや通勤用の相乗りサービスなど、新たなサービスの提供を開始しており、持続可能なモビリティの推進に貢献しています。
累計調達額:$578m(約780億円)

7. Cambridge Mobile Telematics(US/2010年)

Cambridge Mobile Telematics(CMT)は、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く自動車テクノロジー企業です。CMTは、モバイルセンサー技術とデータ解析を組み合わせたイノベーティブなソリューションを提供し、ドライバーの安全性を向上させることを目指しています。
CMTの製品とサービスは自動車保険業界におけるUBI(Usage Based Insurance:使用基準保険)の導入に寄与しています。このタイプの保険は、ドライバーの運転行動とリスクプロファイルに基づいて保険料を計算しますが、CMTの技術は、スマートフォンや車両に装着されたセンサーから得られるデータを解析し、ドライバーの運転行動を評価することが可能です。
これらのデータは、運転中の速度、ブレーキ、携帯電話の使用など、ドライバーの安全性に影響を与える多くの要素に関する情報を提供し、この情報を利用して、保険会社は個々のドライバーに対するリスクをより正確に評価し、それに基づいて保険料を調整することができます。
累計調達額:$500m(約670億円)

8. Divergent 3D(US/2013年)

Divergent 3Dは、自動車製造業界における製造プロセスを再定義することを目指すアメリカのテクノロジー企業です。同社は3Dプリント技術と車両設計ソフトウェアを組み合わせた新たな製造アプローチを開発しています。Divergent 3Dの技術は、車両のフレームと主要部品を製造するための3Dプリンターと、それらの部品を効率的に組み立てるためのソフトウェアツールを使用し、自動車メーカーの伝統的な製造プロセスと比べて、製品の設計とプロトタイプの製造をより速く、コスト効率よく、そして持続可能な方法で行うことが可能となります。
特に、Divergent 3Dのアプローチは、自動車のフレームとボディー部分を製造する際に一般的に使用される伝統的な鋳造やスタンピングプロセスと比べて、材料の使用を大幅に削減することができます。これにより、製造に伴う環境負荷が低減し、製造コストも削減されます。
また、車両の設計と製造プロセスを自動化することで、よりカスタマイズされた車両の製造を可能にします。現在はハイエンドのスポーツカーの製造中心に活用されています。
累計調達額:$428m(約580億円)

9. InDrive(Russia/2012年)

InDriveは、ユーザーが乗車料金を直接提案し、運転手がその料金を受け入れるか拒否するかを選べるという「価格交渉」を取り入れたライドシェアリングサービスです。初期のサービスは、特に寒冷な地域でのタクシーサービスの高価格に対する抗議の一部として始まりました。
InDriveは2012年にロシアのヤクーツクで設立され、そのサービスはすぐに他の都市と国に拡大しました。
ユーザーはInDriveアプリを使用して行先をリクエストし、その際に自分で料金を設定します。その後、運転手はその料金を受け入れるか、またはそれに対して自分の提案をすることができます。両者が合意に達したら、サービスが成立します。ライドシェアリング市場における価格透明性とフェアネスを強調しており、一部のユーザーにとっては他のライドシェアリングオプションよりも魅力的な選択肢となっています。今では、ライドシェア以外に貨物のデリバリーサービスも提供し、多角化を図っています。
累計調達額:$387m(約 520億円)

10. Applied Intuition(US/2017年)

Applied Intuitionは、自動車メーカー向けのシミュレーションと分析ツールを提供するアメリカのテクノロジースタートアップです。同社は2017年にカリフォルニア州で設立され、主に自動運転車の開発とテストに関するソフトウェアツールを提供しています。
Applied Intuitionの主な製品は、自動運転車の動作を仮想環境でテストするためのシミュレーションソフトウェアで、自動運転システムが様々な交通状況や緊急事態に対応できるかどうかを確認するのに役立ちます。これにより、実際の道路でテストを行う前に、自動運転車の性能を事前に評価し、問題を特定して修正することが可能になります。
また、Applied Intuitionは自動運転車の安全性評価や性能チューニングに関するツールも提供しており、これらのツールは、自動運転車の開発プロセスを高速化し、製品の市場投入を早めるのに貢献しています。2019年に日本進出し、トヨタをはじめ大手自動車メーカーが導入しています。
累計調達額:$351m(約470億円)

後編につづく

まだ紹介しきれない会社が沢山あるので、また後編につづきご紹介出来ればと思います。
Busの最適化を図るサービスや、自動車生産の工程を効率化するサービス、特定されたルートの中で配送を自動化するサービス等、日本でも参考になりそうな事業が幾つかありました。この領域で起業を考えている方、モビリティの未来に関して熱く語りたい方、是非カジュアルにお話させて下さい。
Twitter:@Shuku_Genesia


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