見出し画像

『ここはとても速い川』

仕事で新刊本を読んで、プレゼンしなければいけないんです。
それがほんとに苦手で、でもその場で知ったかけがえない本がある。
だから私もいつか、ためらいなく「よかった」っていえる本を見つけられればいいなとおもっていたのですが、はじめてそんな本がありました。

それが『ここはとても速い川』です。

短編が二つ入っていて、
私は表題作の
『ここはとても速い川』が好きでした。
主人公の集は児童養護施設で暮らす小5なのですが
こういう紹介の仕方が野暮なくらい自然に集の視点で始まります。
びっくりするくらい改行がない文章。
なのに水のように読める、読みやすい。
目や心のカメラを長回ししているみたいです。

私はその場で「嬉しい」「悲しい」「怖い」が分からないです。
1人になってからじわじわと(時には数年後)
「あの時嬉しかったんだ」「悲しかったんだ」「怖かったんだ」と気づく。

でも、「気持ちのかけら」は
すでにその場で目の端には見えてるんですよね。
集もきっとそういうところがある、
だから集の目に見える「気持ちのかけら」が
しっかり文章に映っていて切なかったです。

集の頭の中が文章になっているので、
全ての顛末だったり事実は
説明し尽くされていません。
たんたんとした今の集の目線で生きてる。

全くお涙ちょうだいではないです。
ただ、かばうところのある子どもは、
こういう気持ちで生きているということを、
改めて見せてもらいました。

大人になってもほんと変わらないなと思います。
自分が小さいころ「守る」って心細くも1人で思ってた気持ちと、今の生きてる感じ、ほんと大差ないです。

でも、そんな中で一歩一歩生きていくしかないんですよね。
不安で分からないことはいっぱいあっても、
次の一歩の踏み出し先を選ぶことができる。
それが、小さくても大きなことだって
そうお守りのように思っています。

集が口にしないこと、
言葉でスローガンにしないこと、
でもたしかにずっともってるものが
すごくよく分かった。ありがとう。
きっとずっと遠くで応援しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?