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【私が出会ったモンスターな人々】"フェア"を重んじる法務担当

スタートアップには、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まってきます。
私が某社で出会った「法務担当」も、そんな方の一人でした・・。

その方は、一番長いキャリアが県警の警察官という異色の方でした。
大学が法学部だったのと、警察官で学んだ法務の知識を事業会社で活かしたいという素晴らしいモチベーションの方です。

私はまだその会社には入社前だったのですが既に業務委託として関わっており、その方の面接も担当しました。
私も警察官の方を面接するのは初めてだったのですが、(私が言うのもおこがましいですが・・)ややいかつい顔立ち以外はいたって普通の方でした。

「顔がイカつい法務のルーキー。育成枠でなら採用可」、それが私のその方の評価でした。
私も入社した後に契約書のレビュー、稟議書のチェック、取締役会や株主総会などの会議体の運営や議事録作成など、総務・法務系の業務が増えることが予想されていたので、その方の採用に反対しませんでした。

それから少し時を経て、私が正式に入社したときに、その方も同時期に入社してきました。

面接官だった私が、実は同時期に入社することその方は戸惑っていました。それ以上にその方が戸惑ったのは、同じ時期に入社した私とその方の「待遇の違い」でした。

その方は警察官として長く勤め、何回も表彰されていたそうです。
しかし、事業会社での経験は浅く、その会社では「法務担当のメンバー」として入社しています。

それに対して私は、年齢がちょっと上ということもありますが、既に複数の企業でIPOを果たしたり、管理部門の管理職も長く勤めてきました。
会社側もこれらを考慮してくれ、私は「管理部門の統括」として入社することになりました。

私は転職するたびに一兵卒から始めるつもりなのですが、仕事もやりやすくいので高い評価と大きな権限を最初から頂けることには遠慮しません(笑)。

ところがこの方は憮然としています。
あとで理由を聞いたら、警察学校では年齢やキャリアを問わず、同じ日に入校したら「同期」で同じ待遇だそうです。
「事業会社は警察学校じゃないので・・」と思いましたが、歳も近いですし、同じバックオフィス、同じ系統の怖い顔で待遇が違うのは納得できるものではなったのだと思います・・。

そして私たちが入社して数ヶ月後、会社はストック・オプション(新株予約権。一定期間内に行使することにより、その株式会社の株式を一定の価格で交付される権利)を発行することになりました。
対象は「現在活躍している社員」と「今後活躍する見込みがある社員」です。

私も入社間もないですし、付与対象者や付与数については意見を求められませんでしたし、要望もありません。

ストック・オプションは、通常の給与に追加でもらうボーナスみたいなものだと思っていますし、会社が上場しなければそもそも利益になりません。
「実績やポテンシャルを見込んで頂きありがとうございます!」とは思いますが・・。

私は入社間もなかったですが、ありがたいことに「今後活躍する見込みがある社員」区分として、また前職から給与を下げて入社していることなども考慮され付与対象者となりました。

ところがこの法務担当の方は事業会社の法務担当としては”新人”なので付与対象者とはなりませんでした。

この方は付与対象者を決める決議をする取締役会の招集通知等を作成していたので、機密事項である付与対象者を見ていました。
そして私に付与されたのに自分が付与されないことに納得がいきません。

私から説明するのも野暮なので察してくれよ・・と思いましたが、この方は社内で「同時期に入社した伊藤は役職者で自分は一般社員。今回も自分はストック・オプションには付与されないのに伊藤はされている!フェアじゃない!!」と文句を言い始めました・・。

以降、私とは一切話さず、少し経ったのち退職しました。
退職までの間も、「この会社は同期入社を平等に扱わない会社だ」、「ガバナンスが効いていない」といったことを言ったり、私に対しても「伊藤は有名と言われているけど県警では誰も知らない!」と言っていたそうです。
私はその県に住んだこともなければ、犯罪者でもないので当然その県では”無名”だと思いますが・・(笑)

短い期間ではありましたが、私はこの方と働くことでいくつかの学びがありました。

一つ目の学びは、「バックグラウンドが違う方から認めてもらうには、短期間に納得してもらえるだけの実績を出す必要があった」ことです。
入社後は監査対応だったり、組織設計だったりと、法務・総務業務は任せてしまっていました。
同じ会社の人であれば、一緒に仕事をすることでお互いのことを分かりあえると思うので、この方にも認めらえる実績を出せなかったことは申し訳なかったと思います。

二つ目の学びは、人数が少ないスタートアップでは「ネガティブ発言は無視せず、正しいメッセージを発信する」です。
残念ながらこの方の言っていることを信じてしまった従業員が数名いました。
私からすると「そんなこと信じるやつはいないでしょう・・」と思いましたが、「元警察官の人が言っているだから間違いない・・」と思ってしまったようです。

このときに、自分がどのような役割を果たすために入社したのか、実績が出たらわかりやすく伝える、ストック・オプションであればその背景や会社の想いなどを伝えるべきだったと思います。

イギリスのことわざに「A straight stick appears crooked in the water(まっすぐな棒も、水の中じゃ曲がって見える)」というのがあります。
水の中に棒を沈めると、まっすぐなはずなのに曲がって見えることから、同じものや同じ人でも環境次第で違って見える、というものです。

マネジメントメンバーは、話せる範囲でとはなりますが、業績についてはもちろん、経営方針などを伝えなければみんなが不安になります。
また、表にでない仕事が多い管理部門も、どのような仕事をしているのか、地味な変革の積み重ねがどれだけ大きな業務改善に繋がっているかを発信しないと、社内でリスペクトは得られません。
全社集会のようなリアルな場、非同期でいつでも見てもらえるslackやチャットワークなどのツール、noteやXなどSNS・・。
会社のカルチャーや規模によって最適な方法はあると思いますが、私も常に試行錯誤の日々です・・。

【私が出会ったモンスターな人々】
〇〇ハラな先輩
"フェア"を重んじる法務担当

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