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キャズムを超えるEVスタートアップ同士の争い

キャズムを越えようとするEVスタートアップ達

キャズム理論とは、イノベーター理論における初期市場(イノベーターとアーリーアダプター)とメインストリーム市場の間に深い溝(キャズム)が存在し、スタートアップにとって大衆市場を開拓するためにはこの溝を越える必要があります。

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中国では、2012年末頃からNEVの月間シェアが安定的に30%を超えており、発展フェーズとして既にキャズムを超えていると思われるかもしれません。しかし、実際にはセグメントによって大きく偏っており、A00市場(長さ3.9m以下)はEVのシェアが100%に近く、A0市場(4.4m以下)も高いシェア率を獲得しています。一方で、主要なAセグメント以上の市場に関しては、まだエンジン車が主流であり、EVに関しては、まさに2023年のQ1~Q2の今が、このキャズムにぶち当たって越えようとするタイミングです。

キャズムが生まれる原因は、イノベーター、アーリーアダプター、そしてマジョリティ層の間にある大きな価値観や認知の違いです。スタートアップがメジャー市場を開拓するためには、マジョリティ層のニーズに合った商品を提供することと、マジョリティ層の認知を変えていくことが重要です。

2022年後半から2023年Q1にかけて、EVシフトは加速し続け、マーケティングのトレンドとして、マジョリティ層のユーザーがシフトする傾向が顕著になっています。この重要な転換期を狙って、理想汽車(Li-Auto)は、今年のQ1からQ2にかけて、綿密な情報戦を展開しています。この戦略は、マジョリティ層のユーザーの認知度を理想汽車に有利な方向に誘導することを狙っていると思われます。

本記事でこの作戦の背景、経過、結果そして今後について分析したいと思います。

新興御三家

中国の多くのEV新興メーカーの中で、蔚来(NIO)、理想(Li-Auto)、小鹏(Xpeng)は代表格として新興御三家と呼ばれています。ほぼ同じ時期に立ち上げてから驚異的な成長を果たし、共にNYSEに上場しています。独自な競争路線で突き進み、他社との差別化をきちんと実現し、独自の得意分野で市場をリードする地位を固め、多くのファンを獲得しています。

以下、この3つの特徴について簡単にまとめておきます。すでに理解されている方はこの部分を飛ばして問題ありません。

蔚来(NIO)

  • EV高級車専門メーカー

  • 世界唯一のバッテリー交換方式を採用

  • 中国国内に1600箇所以上のバッテリー交換ステーションを設置済み

  • バッテリーサブスクリプションサービスも提供している

  • 充電、バッテリー交換、用途によってダイナミックで異なる容量のバッテリーに交換可能

  • ユーザーカンパニーというコアな企業理念を掲げ、ユーザーに手厚いサービスを提供する

  • オンライン、オフラインのユーザーコミュニティの建設と運営に力を入れ、熱烈なファンが多い

  • 価格は30万元から60万元の中、大型車を含めた8種類のEVを提供中

  • プラットフォームNT1.0から2.0にアップグレードし、23年Q1~Q2に主力商品を順次切り替える予定。景気後退への懸念が高まる中、販売台数は低迷している。

理想汽車(Li-Auto)

  • EREV専業メーカー(※23年Q4に初のEV(ミニバン)を発表する予定)

  • 移動の家を提供するという製品設計の理念

  • ターゲットユーザーは子育て世帯

  • ユーザーニーズを徹底的に調査し、最大限にニーズを満たした上でコストを抑える設計

  • SKUは少なく、共通部品は多く、コストを低減し、部品調達を容易にし、高い利益率を実現

  • 22年Q4からL9、L8、L7の3車種の大型SUVを順次提供し始め、今月間3万台の販売実績で三者の中で最も販売台数が多い

  • 最も重要な競争力は、ユーザーのニーズを正確に把握した製品設計力であり、真似しやすいと指摘されている

小鹏(Xpeng)

  • EV専業メーカー。

  • 自動運転システムの能力は飛び抜けて高い。

  • 今年で高精度地図に依存しない市内道路の運転補助システムは大規模展開する。

  • 販売台数を拡大するため、コストパフォーマンスに注力し、一時期月間2万台の販売実績で三者の中で1位となった。

  • バッテリーの価格の高騰や、見込み商品の販売不振のため、打撃を受けている。

  • 自動運転とコストパフォーマンスに注力した反面、デザインや内装面についての評判は芳しくない。

EREVを選んだ理想汽車

言うまでもなく、中国の多数のEV新興メーカーはテスラに多大な影響を受けています。RoadstarやModel S/Xの誕生は、EVの可能性を示し、実現の可能性を証明し、アプローチの仕方も公開されました。当然の結果、皆がEVは未来だと信じてEVに一辺倒しました。EREVを選んだ理想汽車は、その中の異端児の存在となっていました。

理想汽車のCEO、李想はバッテリー技術のレベルや産業の成熟度に基づいて、製造コスト、開発難易度、ユーザーの利便性と心理的受け入れやすさなど、さまざまな要素を総合的に考慮した結果、現時点ではEVよりもEREVが最適な選択肢であると判断しています。

また、この判断は理想汽車の「移動可能な家」という製品コンセプトとも非常に適合しています。家の要素(冷蔵庫、ソファ、テレビ)を車内に持ち込むためには、広い車内スペースが必要です。EVとすると、重量や空力性能、航続距離の制約が生じ、大容量バッテリーの搭載による改善しても車両価格や充電時間の課題を引き起こします。一方、エンジンの搭載により、バッテリー容量を比較的小さく抑えることができ、コストを削減し、航続距離に対する不安も解決されます。また、大型車のボディサイズにより、エンジンとタンクの搭載も比較的容易に実現できます。

さらに、ICE(内燃機関車)とEVの中間に位置するPHVと比較して、EREVは技術的ハードルが低いとされています。同じ考え方を持つBYDもエンジン開発の経験を長く持っており、PHVの路線を選択しましたが、エンジンの開発経験がほぼ皆無だった理想汽車にとっては、EREVがリスクを最小限に抑えつつ、最速で製品を実現するための最適な技術路線となります。

こうして、理想汽車はEVパラダイムシフトに関する戦略的な判断、製品のコンセプト、自身の技術力、他社との差別化といったすべての要素が同じ方向に収束し、一致した結果、理想汽車の製品設計における特徴を強調する徹底性と、組織の高度な一体感と執行力高さの根底になると思います。

理想L9

今、理想汽車が展開しているLシリーズの車種の製品力とその人気を見ると、当初描いたビジョンがほぼ現実化していることがわかります。当時、テスラの影響でEVに一辺倒のトレンドが広がっている中、IT業界出身の自動車OEMとして新規参入したスタートアップとして、誰も見込まない道を選んでしまい。多くの懐疑と批判が寄せられました。有名な例では、VWの中国CEOがEREVは時代遅れの技術だとして、理想汽車を非難しました。しかし、そうした状況にもかかわらず、動揺することなく独自の道を突き進む姿勢には、先見の明と高い執行力があると賞賛せずにはいられません。

EREV(PHV) vs EV vs ICE

理想汽車は実に創業当初でEVを設計して発売しようと試みしました。その後EREV路線を選んだが、EVを出すタイミングについて明確な技術条件を設けてタイミングを見図ています。

この図は創業当時の理想汽車が考えた製品の構成を示しています。右側の中大型SUVは家族が中長距離のお出かけ用、一方で左側の2人乗りの超小型EVは市内での短距離移動に適していることを想定しています。このコンビで、ほとんどの人々のお出かけシナリオに対応できるという構想でした。

理想SEV

しかしながら、SEVは設計が完了し、量産する条件も整っていましたが、中国ではこのサイズの車は自動車として登録することができないため、コンプライアンスの問題により量産が断念され、開発リソースはEREVの中大型SUVに集中され、2019年12月に理想Oneの量産が達成されました。


理想One

CEOの李想はその後、いつEVを作るかについて、バッテリー技術が充電速度が400kWに到達した際にと述べました。本人からこれ以上詳しく説明されていませんでしたが、この400kWの充電速度の条件に関する技術要素を分解すると、480kWの充電器、800Vのシステム、4Cのバッテリーが前提条件となります。言い換えれば、李想はこれらの技術を搭載するEVとそれに対応するインフラが整備されれば、EREVと同等またはそれ以上の製品力を実現できると判断しているでしょう。

明言はされていませんが、おそらく理想汽車および李想のプランは、EVが最終的なゴールである一方、EREVは過渡的な技術であると位置づけており、バッテリー技術が成熟するまでの期間において、EREV技術に機会の窓(window of opportunity)が開いています。技術ハードルの低さを生かして迅速に製品化し、シェア獲得とブランドイメージの確立を一気に進め、バッテリー技術が成熟すれば、EVを一気に投入する計画であると考えられます。こうしてEVシフトの転換期を2段階に分け、いずれの段階においても自社が有利な条件で競争し、利益を最大化する狙いがあると思われます。

完璧に見えるプラン。そして現在の理想汽車の月間販売台数と株価が御三家の中で際立っている状態から見れば、見事に実現されていることを認めざるを得ません。ただし、一つ懸念もあります。EREVに与えられた機会の窓は、競合他社の動きの速さによって開かれたり閉じられたりする可能性があります。

Xpengは昨年発売したG9と先月発売したG6の両方が800Vシステムを搭載しており、またXpeng、NIO、Huawei、Geelyは400kW以上の超急速充電器を大規模に建設し始めました。さらに、CATLをはじめとする4Cバッテリーも今年から搭載を開始しました。李想は設定したEVを作り始まる前提条件は23年の今は既に実現されづつであります。その発展のスピードは李想の想定より超えているのかはわかりませんが、理想汽車の本音はEREVでもっと長く稼ぎたいでしょう。しかし現実に直面して対応せざるを得ないため、理想汽車もようやく今年の年末に初のEVを公開することにしました。

それだけではありません。技術の進化とインフラの整備により、EVの利用体験はますます向上しており、この進歩は逆にEREVの弱点が浮き彫りになっています。NIOの場合、中国全域に1600箇所以上のバッテリースワップステーションを設置し、用途に応じて容量の異なるバッテリー交換サービスを提供しています。多くのNIOユーザーにとって、航続距離への不安は既に過去の話となっています。

NIOバッテリースワップステーション

XpengもG6やG9は素晴らしい電気自動車(EV)としての性能を実現し、充電をフルに行った状態で600km以上の実用的な航続距離を達成しており、4Cや3Cのバッテリーが搭載され、5分間で200km、10分間で300kmの充電速度が実現されています。今後、超高速充電設備がさらに整備されれば、エネルギー補給の体験はもはや内燃機関車とあまり変わらなくなるでしょう。

5分間の充電で200km航続距離が足される

一方で、EREVを購入し、一定期間使用してきたユーザーの中で、製品の不足点に気づく人が増えています。確かにEREVは宣伝通り、近距離ではEVとして利用し、長距離ではガソリンでエネルギーを補給できるため、どのようなシーンでも安心して利用できるように思えます。しかし、実際にEVの乗り心地を経験した人々は、できるだけEVで走行したいという傾向が強いです。長距離の移動でも、ついつい充電しながら進む人が多いです。この結果、EREVのバッテリーは小さいため頻繁に充電が必要であり、手間や時間をかけてしまい、充電速度もEVと比べて遅いため、頻繁な充放電が行われ、通常のEVよりもバッテリーの劣化が早いという懸念が表面化しています。また、費用面でも、EREVはEVに比べて電気の効率が悪い、エンジン車に比べて燃費が悪いと揶揄される声も多く聞かれます。

エンジン車からEVに移行する際の人々の不安に対して、EREVはエンジンを搭載することで未知の要素に対する不安を解消してくれるという側面がありますが、実際に使用を始めると、視点が変わり、欠点が浮き彫りになることもあるようです。

しかしながら、マジョリティのユーザーの中には相対的にEVに対する理解が不足しているため、不安をより強く感じる人が多いです。理想汽車はこの不安をうまく利用し、"EVはまだ未熟であり、EREVは現在の最善の選択"という世論を形成させることに成功すれば、ICEから乗り換えるユーザーの中に相当数の人々をEREV陣営に引き寄せることができるでしょう。

この点を理解した上で、理想汽車の視点から、EVおよびICEとの競争関係をどのように見ているかがようやく明らかになります。これまで理想汽車は、他のEV新興メーカーたちと同様に、製品紹介の場でエンジン車と比較し、エンジン車の代替としての姿勢を示してきました。しかし、実際に意識して対策を練っている競争相手は、同じ陣営に属するNIOやXpengであったことが理解できます。理想汽車の観点から見ると、ICEは自社にとって真の競争相手とはなり得ず、テーブルに置かれたケーキのような存在です。むしろ自分と同じテーブルに座ってケーキを奪い合うNIOやXpengが本当のライバルとなります。

仲間に銃口を向けた理想汽車

この競争関係を先に見抜いた理想汽車は、かつての仲間に向けて行動を起こしました。その手法は単純で、Weiboなどの影響力のあるSNSプラットフォームでNIOやXpengの評判を落とす情報を広め、自社が市場で最も成功していると認識されるイメージを築いて強化することです。

一方、EV新興メーカーたちは、去年のバッテリー原材料の高騰と市場競争の激化という二重の困難に直面しています。さらにXpengは高い期待を受けていたP5とG9が連続して失敗し、組織改革を強いられ、全ての期待を新たに開発中のG6にかけました。NIOはそれほど存亡の危機を面しているではないが、今年に入って、旧NT1.0プラットフォームの車種をNT2.0に世代交代させる計画がありました。最初はフラッグシップのES8から始まる予定でしたが、急に高まってきた経済の冷え込みへの懸念から、急いで価格的にアクセスしやすいES6へ変更し、予定より遅れが生じています。その結果、XpengもNIOも今年の第1四半期において納車台数が大幅に落ち込み、四半期ごとの経営状況報告会では大幅な損失を公表し、"大丈夫?"という心配の声が広がっています。NIOやXpengの競争力や納車台数の減少の理由を理解する人々にとっては、これほどの変動はあまり気にされないかもしれません。しかし、意図的にこの両者のイメージを悪化させたいと考える人々にとっては、これは絶好の機会です。

昨年末から今年の第1四半期にかけて、理想汽車は先陣を切って、KOL(Key Opinion Leaders)やKOC(Key Opinion Consumers)といった理想汽車に関わる影響力のある人々、さらには理想汽車の一般ユーザーまでを巻き込んで、Weiboを中心に大規模な宣伝キャンペーンを展開しました。

  • Weibo上で、NIOやXpengがそろそろ倒産するという書き込みが急増しました。

  • 突如、理想汽車は独自の基準で選んだ新興メーカーの週間販売台数ランキングを発表し始めました。これによって、理想汽車はその中販売台数が最も多く、最も人気のあるメーカーであること、同時にXpengやNIOの販売台数が低迷しているというイメージを強調しました。

  • 李想本人はWeiboで連日にわたって長文の投稿を行いました。

    • 理想汽車は成功した要因を分析して自慢したり

    • キャズム理論について言及し、理想汽車の加速的な成長の展望を述べたり、

    • 他の新興メーカーたちの不振な状況について言及し、これだけの販売台数で成果を上げているのは意味があると煽る内容もありました。

  • NIO ES6の納車開始前に様々な偽情報を散布し、さらに納車後自社のL7に有利なポイントをピックアップしてES6 とのベンチマークの資料を流し、L7の製品力が競合より高い印象を操作をしました。

これらの情報発信に対して、理想汽車を擁護するKOLやKOC、そして一般ユーザーまで巻き込んで、一気に拡散が行われ、一時的にWeibo上で理想汽車を称賛し、NIOやXpengを叩く投稿が広まりました。このように大規模な世論操作が行われ、影響はネット上だけに留まらず、一時的にNIOやXpengの販売に悪影響が及んだと見られています。

急にシステム的な攻撃に遭い、一時的に混乱やショック、そして怒りに陥るNIOやXpengの陣営のKOLやKOCたちは、やっと理想汽車が背後の黒幕であることを気づき、その狙いを理解した際、ES6やG6の発売と共に大規模な反転攻勢を展開しました。

ES6やG6の同価格帯で無敵な製品力のおかげて発表会や試乗体験などの情報はすぐに拡散され大きく反響を呼んました。更に魅力的な価格が発表され、注文数は爆発的に伸びって、倒産するなどの声は一斉に消えてしまいました。主導権を徐々に握ったNIOやXpengの陣営のKOLやKOC達はさらに理想汽車のLシリーズの製品欠点や、EREVのデメリットにも集中して攻撃し始めました。両陣営の激しい言い合いは1,2ヶ月を続いて、ようやく双方とも疲れているのようになって少し落ち着きになりましたが、対立関係は修復できないほど深刻化になって以前のような関係に戻れないと思います。

新興の御三家について多くの人から見れば、戦友のような関係であり、代表者同士も良好な関係を持っていると思われていたため、今まで各社のファンたちもお互いが仲間同士である意識がありました。しかし、今回の争いのおかげで、競争は激化し、生死の瀬戸際に立たされたスタートアップ達にとって、個人的な友情などのおとぎ話は不要だと多くの人が悟ったでしょう。

右から理想、NIO、XpengのCEO

では、理想汽車が仕掛けたこの世論戦の結果はどうでしょうか。とても奇妙なことですが、この三者全員が勝っているように見えます。理想汽車の方は先手を取って、EREVの正当性とLシリーズの高い製品力をより多くの人に認識してもらい、多くの人の頭の中に、理想汽車はNEV市場においてBYDとテスラの次に成功している自動車メーカーだという認識が固まりました。NIOやXpengも同様にその後で大々的に反転攻勢を行い、自社製品やサービスの強みを多くの人に理解してもらいました。李想本人も、「ポジティブな評価もネガティブな評価もどちらも良く、注目度を集めればありがたいことです」と述べました。

なぜなら、この三社の製品はそれぞれの細分化市場において、ダントツのトップレベルの競争力を持っているからです。悪い風評が広がることに対して、早急に察知し迅速に対処すれば、被害を受けずに済み、むしろ興味や関心を引き起こし、実際に店舗に訪れて確認しようとする人々を増やすことになります。店舗を訪れてもらえれば、我々の勝利ですという自信を示しています。

魅力的な製品と大喧嘩によってもたらされた人気の相乗効果で、Q1からQ2の間にこれらの三社の店に訪れる人数、販売台数、そして株価も大きく伸びました。もちろん、一部の人々はこれによって理想汽車に対して不公平だとか汚いといった悪いイメージを持つかもしれませんが、それらの人々は元々理想汽車の車を購入する予定は低かったと割り切れば、実用主義や実力主義を掲げる理想汽車にはまったく気にしないでしょう。

しかしながら、この争いに敗者はいないわけがありません。少なくともweibo上でNEVに関する注意は完全にこの争いに奪われ、話題性が低いメーカーはさらにユーザーに情報を届けることが難しくなり、ネット上での存在感が薄れてしまうでしょう。

キャズムを超えられるもの

2023年のQ1に、市場シェアをどんどん失ってきたエンジン車メーカーは、ようやく反撃に出て、大幅な値下げを実施して巻き返そうとしましたが、僅か一か月で値下げラッシュは終了し、NEVのシェア率は再び最高値の36%を超えました。

マジョリティ層のユーザーの移行は加速している一方で、NEVに乗り換えるユーザーはどんな車を選ぶかというと、町中で一番多く見かける車を検討候補にする傾向が強く、言わば「マタイ効果」が大きいです。スタートアップにとって、マジョリティ層のユーザーにきちんと情報を届けて自社製品の強みを理解してもらい、検討候補に入れてもらえないと、BYDとテスラという2強に市場の大半のシェアを独占され、キャズムを乗り越えずに日々激化する市場競争において倒れてしまう可能性が高いです。

今回の争いは、BYDやテスラから見れば、茶碗の中の嵐のようなものかもしれませんが、今のところ体力が弱く、知名度もまだ一部のアーリーアダプター層にしか届いていないスタートアップは、数年後に急激にこの2強と肩を並ぶ大物まで成長する可能性が十分にあると考えて、楽しみにしています。

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