【感想】ガールズバンドクライ(第6話「はぐれ者賛歌」)
以下、第六話全編の内容に触れていますのでご注意ください。
<前回の感想>
●冒頭
団地の一室にいる牛丼屋の二人。一人は前回の仁菜たちのライブの映像を見ている。
宅録をしようとしているところのようだ。エアコンを消すのは雑音が入らないようにするため、緩衝材?の入った箱をかぶって歌おうとしているのは防音と、室内の反響を防ぐためだろう。
しかし救急車?のサイレンの音が入ってしまい「何なの!?」とキレる少女。なんかこの時点で仁菜とシナジーありそうですね・・・
「ボカロでメロディー作ると、無駄に歌が難しくなるのよね」
「このメロディーラインは智ちゃんのいいところだと思うから、これを歌えるボーカルを探した方がいいかもしれません」
曲とボーカルについて話している二人。ボーカルは智ちゃんと呼ばれた少女が担当しているようだが、自分たちでもしっくりきていないのかもしれない。しかし智ちゃんはボーカル探しには乗らず、提案した少女も引き下がる。
「ゴミ、捨てて来ますね」
二人は同せ・・・ルームシェアしているらしい。
「ルパは・・・やってみたいの?」
智ちゃんの問いにルパと呼ばれた少女はスマホを差し出す。「beni-shouga」は第三話でもバンド名刺が登場していたが、彼女たちのバンドだろう。SNSのホーム画面、フォロワー数は2万オーバー・・・けっこういってますね???
「もし、本気で目指すのであれば・・・」
二人の目線の先には「目標!!武道館!!」と書かれた彼女たちの写真。もう二人写っているが、元々はこの四人でのバンドだったのだろうか・・・二人の顔がシールで隠されていることから考えると、あまり円満な別れではなかったように思える。
「やってみたい」が何を指すかは、この後明らかになってくる。
●Aパート
サブタイトル
第六話のサブタイトルはフラワーカンパニーズの「はぐれ者賛歌」
今回でついに(バンド的な意味で)揃った5人は、みんな世間一般の基準で言えば「はぐれ者」なのかもしれない。この曲の「歌うしかない」というフレーズは、しかし彼女たちへの最大のエールにも思える。
風呂回だあああああ!
銭湯に来ている仁菜たち。前回のライブのあとで、仁菜はまた喉を嗄らしてしまったようだ。湯船につかる仁菜とすばるをサウナに呼ぶ桃香。「喉にいいから」だそうで・・・サウナってそうなんですか?
すばるも足が筋肉痛のようだが、「ライブの実感」として享受しているらしい。
前回のライブを振り返る桃香とすばる。(仁菜は茹だっていて会話には参加していない)桃香は「めちゃくちゃなライブだった」との感想。
「楽しかったけどね。ニーナはハジけまくってたし」
「おまえもたいがいだったけどな・・・」
すばるはライブでは「プレア」と名乗っているようだ。これは「すばる」が「プレアデス星団」の和名というところから来ているのだろう。
仁菜は限界の様子で先に出てしまい、残った二人が言葉を交わす。
「しっかし、すっかり夢中だな」
「ニーナ?」
「うん」
「嫌なの?」
「そういうわけじゃないけど」
風呂を出た3人。仁菜が前回のライブのネット上での反応を桃香に聞かせる。
「やっぱりダイダスは桃香だよな」
「今のダイダスよりはロックだったことは確か」
しかし桃香はあくび混じりでどうでもよさそう。
「とにかく、お客さんみんな前のダイダスの方が好きなんですよ」
さすがに主語がデカい話だと思うが、仁菜は我が意を得たりといった感じで嬉しそうだ。
しかし桃香の反応はやはり淡白だ。
「ネットに書き込むか?今のダイダスはまがい物です。私たちこそが正しいから、応援してください・・・って」
「嫌なんですか!?」
おいおい、やる気だったのか? 仁菜・・・
と思ったかどうかはわからないが、桃香は冷めたテンションでダイダスと新川崎(仮)のSNSのフォロワー数を指摘する。
「2万・・・増えてる」
「うちらは何人だ?」
「500人・・・」
「そういうこと」
仁菜は「じゃあどうしろっていうんですか」と桃香に食ってかかるが、これにも桃香は「別に」とすげない。
「今まで通り、たまに集まって練習して、曲作って、ライブやって・・・」
「そしてどうするんですか?」「私たちのバンドの目標って何なんですか?」
「大学行くんだろ・・・」
「桃香さんの目標を聞いてるんです!」
これを受けても桃香は「めんどくさいな・・・」と話を切ろうとするが、すばるが「でも、私もちょっと聞きたいかな」と(文字通り)間に入る。
「桃香さん、一応プロだったわけでしょ?そんな人がさ、私らみたいな素人とバンドやってるって、ちょっと不思議なんだよね。何か、狙いがあるのかなーって」
「別に。特にないよ」
「じゃあ、目標も無いわけだ」
「ああ、無い」
桃香の「責任」
ここのやりとりについてだが、仁菜の問いかけは普通に考えれば正当な疑問であり質問だろう。
仁菜をバンドに誘ったのは桃香だ。もちろん活動を選んだのは仁菜本人の意思だとしても、バンドの目標を示す、ないしはメンバーで協力して設定していくことに参加するのは、仁菜をバンドに引き入れた桃香の道義的責任ではないだろうか。
桃香のように面倒見が良くて筋を通すタイプの人間がそこをわかっていないはずはないだろう。にも関わらず、この話題について正面から回答しないというのはいささか不誠実な態度に見える。
ではなぜ桃香がこのような態度をとるのかだが、これは後のシーンからだんだん見えてくる部分があると思う。
バンドの目標
いつもの牛丼屋に来ている仁菜とすばる。仁菜は桃香の態度にご立腹で牛丼をかきこんでいる。
「何なの!?人が真剣に話してるのにいつもいつもいつも・・・」
「ニーナがつっかかりすぎなの。闘牛場の牛か、って感じだもん」
「ぎゅう・・・」
「ああ言われて本心話すわけないって」
「じゃあ、どうしろって言うの!?」
「そりゃ、一旦心開くような状況作って、そろりそろりと・・・」
狂言?すばるはすばるで、仁菜とは違う方向で祖母の影響を受けてたりするんだろうか・・・それはさておき仁菜の反応はというと。
「嘘つき」
「それは嘘つきじゃない!」
筆者にもだんだんわかってきたような気がするのだが、どうも仁菜は自分の本心を明らかにせず寝技を駆使するような対人コミュニケーションを良く思っておらず、その嫌悪感を「嘘つき」という言葉で表現しているのではないだろうか・・・やはりあまりにもまっすぐすぎるとは思うのだが、それはそれでこの現代日本社会において稀有な心性ではないかとも思う。むしろそこが仁菜の美徳なのかもしれない。
「ダイヤモンドダストに勝ちたい?」
「うん・・・」
「そりゃハードル高いわ・・・」
そんな二人の会話を聞いているいつもの店員二人。
「どうします?」
「・・・」
帰宅してベッドに倒れ込む仁菜。ネットで「バンド 目標」「バンド プロ なりかた」といった情報を検索する。
場面変わって。
身近でバンドのことに詳しい人物を頼ろうという考えに至ったのか、前回登場したライブハウスのオーナーを訪ねる仁菜。オーナーは「欲出てきちゃった?」などとからかいつつも仁菜に色々と教えてくれる。現在はやはり「ネットで人気がある」ということが大事なようだ。
「ま、まずはインディーズの頃のダイダスを目指すことだね」
当時のダイダスは地元にいた頃でフォロワー常時1万近く、それで事務所の目にも留まったということらしい。
「結局、数ってことですか」
「そりゃあそうだ。フォロワーにライブの集客力、それが強ければ話は勝手に舞いこんでくる」
そこで新川崎(仮)のSNSを確認する仁菜。
「減ってる・・・?」
たぶん500台だったフォロワーが微減しているのだろう。銭湯のシーンでダイダスのフォロワー数を見たときの「2万・・・増えてる」というセリフとの対比が効いている。
そしてこの事実は仁菜に危機意識をもたらしたかもしれない。なにせオーナーの話から「数が重要」という認識を新たにしたばかりなのだ。その点において容赦のない「現実」の一端が、まずは目に見える形で仁菜にも認識された、というシーンだろう。
それはそれとして、フォロワーが減ってるのはインターネットが上手いはずがない仁菜がいらんツイートやリプをしたせいでないことを祈りたい。
beni-shougaの思惑
牛丼屋の二人の部屋。智ちゃんはまた新川崎(仮)のライブ映像を流している。それだけでなく、今度は曲に合わせてキーボードを弾いている。仁菜たちをかなり意識しているようだ。
そこへ声をかけるルパ。
「損するくらいなら、今のままでいい。辛い思いするくらいなら、今のままでいい。それは決して、悪い考えではないと思います」「ただ、それならあれは剥がしてください・・・滑稽です」
二人の視線の先には、「目標!!武道館!!」のチェキ。
ルパが言っているのは「変化を望まないのであれば、目標達成は遠い」あるいは「不可能」だということだろう。フォロワーは2万以上もいるが、おそらく二人のバンドは(少なくとも二人の基準では)「伸び悩んでいる」のだ。
「ルパは・・・うまくいくと思う?」
「そんなのわかるわけないです。どんなに仲が良くてもケンカ別れはしますし、相性最悪でも不思議と続くこともある」「ただ、私はあの3人は智ちゃんには合ってると思います」
「どこが?」
「勘です」
ここまでの会話と、冒頭から何度も「数字」の問題が表現されていることから考えれば、二人が達成したい目標に対して数字的に伸び悩んでおり、その現状を打破するために仁菜たちと組みたいと思っているのだろうということが推察できる。
それからこの場面、二人の位置関係について考えてみるのも面白いと思う。ルパは話の途中から西日の指すリビングに移動したが、智ちゃんは奥の部屋・・・夢を形作る場所ではあるはずだが、窓もカーテンも閉じ、照明も消された薄暗い部屋にいる。
そう見ると、バンドの新たな可能性に積極的らしいルパと、いま一歩踏み出せず躊躇している智ちゃんの対比になっているようにも思える。
ぶつかる二人
一方、スタジオ練習をしていた仁菜たち。
練習も終わりというところで、仁菜はバンドに関する提案を切り出す。次のライブの衣装をもう少しかわいくしてみることと、すばるの写真をSNSに上げたいということだったが・・・
すばる的には祖母にバレる危険性を鑑みてNGということだったが、「集客力は大事」という仁菜。
それに対し桃香は「みんなで高校生の制服でも着てやってみるか」と皮肉っぽく告げる。
「新川崎女学院で~すとか言って」
「ちゅっ♡」
ミ゛ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ(断末魔)
おい!!!!!
学校法人ではない、なんらかの「新川崎女学院」が実在したらどうするんだよ!!!!
しかし仁菜は真剣に検討している様子で、桃香もやや面食らう。
「それって今のダイヤモンドダストと同じなんじゃないの?」
「わかってる。でも、あそこまで売れるにはプロにならなきゃやっぱり難しくて、それにはお客さんがたくさんついてなきゃダメで・・・」
「いつからそんな話になってんだ」
「だって、そうでもしないとダイヤモンドダストには勝てません!」
「だから、いつ勝つって話になった?」
いつの間にか仁菜の中では、このバンドで「ダイヤモンドダストに勝つ」という目標が定まっていたのだということがここでわかる・・・ゾクゾクするなあ・・・この闘争心!
「言ってるだろ。別に私はダイダスのことを恨んでもいないし・・・」
「私が!負けたくないんです」
自分の話を遮って告げられたその言葉に、桃香は背を向けてしまう。
ここで、銭湯のシーンでは二人の間に入ったすばるが一息ついて椅子に座ったのは興味深い。
物事の筋で言えば、ここでは桃香の方が正論を言っているだろう。現状「ダイヤモンドダストに勝つ」という目標について3人で合意を形成したわけではないはずだからだ。
しかし、ここで仁菜は明確に「私が!負けたくないんです」と自分の意志を表明した。
桃香は銭湯のシーンで「目標はない」ということを明言してしまっているのだから、仁菜が表明した「目標」に対しては「同意」か「反対」かを表明すべきだろう。たとえ「そういう明確な目標は定めないないまま活動を継続したい」みたいな考えであったとしても、それならそうと言うべきなのだ。
おそらく、すばるもそのように考えたからこそ、ここでは二人をとりなさなかったのではないだろうか。
しかし、桃香の反応は「沈黙」であり、この件について回答を避けているのは銭湯のシーンから一貫している。
その理由は、やはりもう少し後で見えてくるだろう。
桃香はバイトだろうか、二人で牛丼屋に来ている仁菜とすばる。智ちゃんが二人に気づき、ルパが対応する。
仁菜とすばるは、スタジオから引き続き「目標」の話をしているようだ。
「プロになったからってうまくいくとは思ってないよ。ダイヤモンドダストに勝てるとも思ってない。でも、最初から負けたって諦めるのはイヤなんだよ。だって私たちは間違ってないもん」
その言葉を聞いた智ちゃんは・・・
厨房からやって来た智ちゃんは、ついにバンド名刺を二人に差し出す。
ここでAパート終了。
●Bパート
カフェにやって来た四人。牛丼屋の二人の自己紹介で、改めて名前がわかる。ルパと海老塚智の二人は顔出しせず活動している音楽ユニットだったようだ。
二人から話があるということでこの場に至ったらしく、仁奈とすばるは用件を探っていく。
さすがに智が口を挟む。
「勘が鈍いわね。スカウトよ、スカウト」
「強さが数字でわかr・・・」
「違います」
それはスカウター・・・仁菜、世代でもないと思うのだが・・・再放送とか見てた?
二人は仁菜たち三人と組みたいという意向らしい。前回のライブも観たと言うが、仁菜は「ウソ~・・・」とたじろいでしまう。
店を出て、二人の部屋を訪れる仁菜とすばる。道中、仁菜は自分たちの「数字」を気にするが、ルパは「それは私たちも一緒です」と言う。そうかなあ・・・?
それでもいくつか事務所からの話があったというルパ。やっぱ一緒ではない・・・よね・・・
だが、それらも話を進めると「自分たちの思い描いていたものとは違う形に」なってしまったらしい。
「結局、今売れてるものにしがみつくしかないのよ、あいつらは」
「それは言い過ぎですけどね・・・まあ、智ちゃんと合わなかったのは確かですね」
してみると、こだわりが強いのは智の方ということになるだろうか。
何にしても、売れればなんでもいいというスタンスではなさそうで、そんなところはダイダスを抜けた桃香とも印象が重なる。
そんな経緯のあった二人が仁菜たちに声をかけた理由も明らかになる。
「この人たち、好きなことしか歌ってない。ちゃんと意見ぶつけられそうだ、って」
「本当に・・・?」
「違いました?」
「ううん、そう思って歌ってました」
「ニーナはぶつかり星から来たしなw」
そういえば第一話でも桃香から「どの星から来た?」(牛丼屋のシーン)とか言われてたな・・・バンドメンバー二人に別の星から来たと思われてる仁菜って・・・
部屋に入るなり、すばるはいきなり奥の部屋のコルクボードを発見して言う。「で、目標は武道館ってわけか」
「何よ!別に悪いことじゃないでしょ!」
「全然悪くなんかないよ。むしろ、すごいなって・・・私、そんなこと考えたことも無かった」
仁菜は二人の制作部屋を見て、感心した様子。
「ところで、武道館って大きいの?」
「なんだ、知らないの?」
「聞いたことはあるし、テレビで見たことも・・・あるけど!」
「田舎もん」
「智ちゃんも仙台ですけどね~」
「えっ、川内市?私、熊本!」
「はぁ?宮城の仙台!」
「なんだあ・・・」
ちなみに鹿児島県の川内市は合併前の名称で現在は薩摩川内市になっているようだ。(仁菜みたいに、地元の人は今も旧名称で呼んでいたりするんだろうか?)
そんなやりとりを見守っていたルパから提案が。
「せっかくだから、行ってみましょうか?今から」
「「「えっ?」」」
で、やって来たのが武道館。
ちょうど誰かのライブが行われているらしく、館内から歓声が響いてくる。
「ここで歌えたら・・・」
「ここで歌えたら、間違ってなかった、って思えるよね。ダイヤモンドダストに負けてない、って言えるよね・・・きっと」
「目指せ、武道かーーーーーん!!」
あまりにまっすぐで眩しいくらいに思うが、もうこれで仁菜の目標は「ダイダスに勝つ/負けてないと言えるようになる」ために「武道館でライブをすること」と定まってしまったらしい。
単純で短絡的かもしれないが、あえて言いたい。仁菜は、現時点での実現可能性はともかくとして、目標をこれと決めたら最短で最速でそこを目指すことができる・・・いわば夢を見る力を持っているのではないだろうか。そしてそれはおそらく、この物語を駆動させる原動力となっていくだろう。
すばるの作戦
二人と別れた帰り道の仁菜とすばる。
「で、どうすんの?」
「すぐ桃香さんに連絡しよう!」
「オマエはバカか~っ!?」
「桃香さん、ベースとキーボード欲しいって行ってたでしょ!」
ベースはともかくキーボードに言及したシーンはこれまでなかったと思いますが、そうだったんですね・・・
「でも、夢は武道館・・・それはプロになりたいってことでしょ。桃香さんがいいよって言うと思う?」
「じゃあどうしたらいいの?」
「さあね」
「私、やっぱり話してみる」
だが、すばるには何か考えがあるようだ。仁菜に「嘘つきと言わない」ことを念押ししたうえで、方法を教えるという。
別の日、桃香の部屋に集まっている仁菜たち。桃香にbeni-shougaの二人の音楽を聴かせている。桃香の評価は悪くないようだ。
「でしょ?しかも本職はベースとキーボード。一曲くらい一緒にやってみるにはちょうどいいかなって」
ちなみにここで言う「本職」は「主な担当楽器」くらいの意味。
「向こうはなんて言ってるの?」
「ぜひ・・・っていうかそれ以上っていうか・・・」
割って入るすばる。とりあえず一度音合わせをしようという話に着地させ、決まったら連絡するということに。
同日、ルパ智の部屋。
「だから作戦!」
「どっち?」
「まあ、賛成っちゃ賛成。反対っちゃ反対」
「何なのそれ!?」
智の疑問ももっともだが、すばるは続けて桃香についての見解を語る。
「あくまで私が見た感じだけどさ、たぶん、桃香さんは二人いるんだよ。音楽やってるときは、真剣で、全力で、少しでもいいものを作りたい。自分の曲が通用するか、挑戦してみたい。でも・・・音楽から離れると、我に返る。自分は脱退して勝負から降りたんだ、って・・・本気でやる意味あるのかー、とか、考えてるんじゃないかなあって」
光と影。すばるの言う、桃香の内心の相反する部分(コントラスト)を表現しているようでもあるし、キリスト教圏的な発想かもしれない(したがって真に受けないでほしい)が、十字の形は彼女の「罪の意識」みたいなものも彷彿とさせる。(前回のダイダス脱退にまつわる会話での「私が悪いんだ」というセリフを思い出す。)
追記:どちらかと言うと、桃香の目の部分に影がかかっていることの方が気になってきた。何か象徴的な意味があるとすれば、彼女が未来や進むべき道を見失っている、と言って言い過ぎならば見通しの悪い状態にあることの表現、といったところだろうか。
すばるのセリフだが、かなり重要な指摘だと思う。これまでの桃香の態度や言動から考えれば、かなり正鵠を射ているだろう。
また、桃香が「バンドの目標」について口を濁す理由もここにあるはずだ。つまり彼女自身が音楽について相反する心情を抱えており、これは前回で明らかになったが、元の仲間に対する罪の意識も抱えていれば、現在の仲間(仁菜とすばる)に対する責任もある程度引き受けなければならない立場にいる・・・そんな中で彼女はある意味、身動きがとれなくなっているのだろう。
話を聞いて、ルパはともかく智は桃香の細かい事情には興味なさそうだ。
「そうですか」
「そんなのはどうでもいい。で、一緒にできるの?」
「わからない・・・けど、いい音やバンドとかになりそうになったら、逆らえないような気がするんだよね。あの人、根っからのミュージシャンだもん」
このやりとりから、すばるの「作戦」もなんとなく見えてくる気がする。
「なるほど・・・理解しました」
「今から準備?面倒ね」
「えっ・・・どういうこと?」
「いいから私の言う通りにしとけ」
ルパと智の以心伝心ぶりがすごい。さすが同せ・・・四六時中一緒にいるだけのことはある。
五人での音合わせ
数日後・・・スタジオに集まっている四人。全員での音合わせの日になったようだが、桃香はまだ来ていない。
機材の準備中、智がすばるのスマホの待ち受け画面に気づく。
「オババ・・・!」
智はすばるの祖母のドラマ「探偵オババの事件簿」シリーズのファンらしい。毎回3回は見てラストで泣くということがルパから暴露される。
「安和天童」と「安和すばる」の共通点に気づいてすばるに迫る智。
そんな中、桃香が到着する。五人の初顔合わせ・・・ではなくて牛丼屋で会っていたことに桃香も気づく。
「あれ、牛丼の・・・」
「いつもご来店ありがとうございます」
「たまには並とビール意外も頼みなさいよ」
文句言いつつ頭を下げる智。しかし、それってもっと単価の高いもの頼め、ってコト・・・? 意識高いなあ。
「で、何やるの?」
「この前のライブの曲でいいですか?」
「いいけど・・・二人はできるのか?」
「はい、桃香さんが来るまでちょっと聴いて、練習してましたから」
「多少、アレンジするけどね」
ここでルパが仁菜、すばると顔を見合わせているところに注目したい。
後述するが、「ちょっと聴いて・・・」というのはウソで、小芝居を打っているのだと思う。
「なら、いきなりやってみますかね」
「わかりました」
すばるとルパが話している間に桃香も準備完了。すばるのカウントから演奏が始まった。
「すごい・・・何これ、すご・・・!」
演奏が止んだところで、仁菜は意を決した表情で桃香に切り出す。
「実は・・・二人にはこれから一緒にやっていかないか、って言われてるんです」
「私・・・やってみたいんです。桃香さんは間違ってない、桃香さんの歌は間違ってないって、証明したいんです!」
すばるの「作戦」というのは、桃香をとにかく「音で納得させる」ということだったのだろう。ルパと智に新川崎(仮)の曲を練習してもらって、音合わせでバッチリ聴かせ、驚かせる。(だから桃香には内緒にしていた。その方が、「合うじゃん!」「いいじゃん!」となったときにその効果は大きいはずだ。)
これはルパ智の部屋で話していた「いい音やバンドとかになりそうになったら、逆らえないような気がするんだよね。あの人、根っからのミュージシャンだもん」という見解から導いた戦略なのだろう。
よって智が「今から準備?面倒ね」と言っていたのは、音合わせの日までに新川崎(仮)の曲を練習して桃香が納得するレベルまで仕上げるということを指していたと思われる。
そしてこの作戦は功を奏したと言えるだろう。「桃香さんの歌は間違ってないって、証明したいんです!」と言われて桃香がわずかにギターを鳴らすところは、彼女の心が動いた・・・これはあまりに文字通りすぎるかもしれないが、琴線に触れたことを表現した演出のように思える。
ダイヤの原石
スタジオを出て、ルパ智の部屋に集合している五人。アマチュアのチャレンジ枠が設けられているという音楽フェスの話題になっている。
「フェスって、音楽関係者の見本市でもあるから、みんな探しには来てるんだね・・・いわゆるダイヤの原石ってやつ」
フェスの出演アーティストを仁菜に見せるすばる。そこにはダイヤモンドダストの名前があった。
ベランダを見ると、そこには物憂げな表情の桃香。
風とともに紫色のエフェクトが部屋に流れ込む演出から、EDへ。
この紫色のエフェクトだが、桃香の心情を表現している演出のように思える。
本作ではメンバーそれぞれのイメージカラーみたいなものがあり、それはOPやEDでは「糸」などの色で、第三話のライブシーンでは絵の具のような奔流として随所で表現されている。仁菜は「赤」で桃香は「青」だ。で、紫というのはこの二色の混色である。
桃香の物憂げな表情から、彼女がまだ迷いの中にいることは確かだろうと思う。しかし、彼女の心は動き始めている。スタジオでの音合わせで何も感じていなかったのなら、彼女はここにはいないはずだ。
つまり「ダイダスに勝つ≒桃香は間違ってないと証明する」ために武道館を目指したい仁菜の前進しようとするベクトルと、音楽にためらいを感じている桃香の停滞ないし逆行しようとするベクトル、その両方のせめぎ合いが混色の紫で表現されているのではないかと筆者は思う。
●全体的な感想
いよいよメンバー5人が揃い、ダイヤモンドダストとの対面も予想される展開となってきた今回。盛 り 上 が っ て 参 り ま し たという気持ちで見ていた。
そして物語も(12~3話1クールと考えると)半ばに至って、桃香の複雑な心情というのが段々と浮き彫りになってきた。彼女が内心の葛藤とどのように向き合っていくのか、というところが後半の主軸になるであろうことは間違いなく、どのような着地に至るのか目が離せない。
デビューしたばかりではあるが、メジャーアーティストとしてすでに輝きを放っているダイヤモンドダストに対抗して、仁菜たちはダイヤの原石としての輝きを放つことができるのか・・・
●ショートPV
今回の感想を書いている途中で、公式がとんでもないものをお出ししてきた。ABEMAでの一挙配信&YouTubeでの生オーディオコメンタリーに先駆けて制作された、第1話~6話の映像を使用したダイジェストPVである。
こ、言葉にならねえ・・・
とにかく見てください。
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