「物理学レクチャーコース 物理数学」はお勧めしたいなと思った

最近「物理学レクチャーコース 物理数学」という本を読んでよい本だなと思ったので、感想を書いてみたいと思います。

(アフィリエイトでも何でもないので、書店や好きなサイトで一部内容をみてもらって、面白そうだったら買ってみてください。)
理系の大学1・2年生や学びなおしの方にはお勧めの本です。
以下、お勧めの点です。

1)時間をかけすぎず物理数学の全般を見通せる

掲載している分野は以下の通りです。

0.数学の基本事項
1.微分法と級数展開
2.座標変換と多変数関数の微分積分
3.微分方程式の解法
4.ベクトルと行列
5.ベクトル解析
6.複素関数の基礎
7.積分変換の基礎ーデルタ関数・フーリエ変換・ラプラス変換
8.確率の基本

Exercise、証明部分や説明部分を手を動かすことで全般をかなり効率的に学習することができると思います。
勿論もう少し踏み込みたい部分も出てくるとは思いますが、大学1・2年の理系の方の場合ほとんどをカバーしていると思います。

自分は大学で化学専攻だったのですが、量子化学などの分野では微分方程式や線形代数の知識を使うので、物理数学の一部の分野を学んでいました。
この本があればもう少し学びやすかったなと感じる点もあります。

また数学科の人でも参考になると思います。数学は大学に入ると急に哲学になるので、面食らうと思います。
物理数学で具体的な計算例等を見ることで、自分が何をしようとしているのか迷子になることを防いでくれる面もあるかと思います。

2)はまらないように割り切るところも記載がある

大学数学の怖いところが変にはまってしまうことがある点です。わからないところで数日間、下手をすると数か月はまってしまいます。
高校数学までは理解ができたので、その考え方のまま取り組んでしまうことがあります。
なんでこの考え方を思いついたんだろうということを考えすぎないで、偶々うまくいったんだろうなくらいの割り切りも必要だなと感じていましたが、この本にはそういったはまりすぎをうまく回避するような記述が散見されます。
これは非常に助かるだろうなと思います。

3)難しすぎない問題、丁寧すぎない解説

難しすぎる問題はExerciseの中にはなかったです。初見で解けなくても何度か解けば解けるようになると思います。
問題が解けるようになることで理解できるという現象はよくあることなので、問題のセレクトは良いと思いました。

また解説が丁寧過ぎない部分もよい点だと思います。大学数学からは行間を自分で埋めて理解していくということが必要になります。他の書籍ほど行間が空いておらず、高校数学の参考書ほど丁寧でもない、非常によい塩梅だと思います。

4)おまけ

非常に良い本だなと思い、読み進めているといくつか気になる記載があり、編集部にメールさせてもらいました。
すると著者の方に確認いただき、今後正誤表などに追加いただけるとのことでした。
こういった書籍なのに早い対応でびっくりしました。
内容が難しいので、確認も難しい点はあると思いますが、こういった対応が早いのはすごく良いなと思いました。
学生の方は、大学レベルの本は正誤表をまず確認したほうがよいのと、少々の誤りがあるのは当然なので、どうしても違うと思った場合は一旦スルーするして読み進めることをお勧めします。
(数学の本で誤記にはまって、数学科で上手くいかなくなった外国の方もいたというのをYoutubeで観たことがあります。)

「ちなみに指摘箇所」
1)p236 [Exercise 5・7]
(2)の解説:同様にしてP2→P3ではA・dr=8vdv について

A・dr=8μdv ではないでしょうか。「計算結果はおなじ」
まず r=(2-2μ-2v)(ex)+2μ(ey)+4v(ez) = 2(1-v) (ey)+4v(ez) [μ+v=1より]
A=4v(ex)+2(1-v)(ez)
dr=(dr/dv)dv=-2dv(ey)+4dv(ez)
A・dr=8(1-v)dv=8μdv

(返信の結果)
この指摘は正しそうです。

2)p281[Exercise 7・1]
(3)の解説:acos bx のフーリエ変換は....a/2√2π{δ(x-b)+δ(x+b)}

δ(b-k)+δ(b+k) になると思います。
答えのF(k)の関数内にkがないことになっています。

(返信の結果)
この指摘も正しいようです。
acos bx のフーリエ変換は$${\sqrt{\frac{π}{2}}a\{δ(k-b)+δ(k+b)\}}$$となり、
F(k)=$${\sqrt{2π}\{δ(k-1)+δ(k+1)+2δ(k-2)+2δ(k+2)\}}$$ となりそうです。

3)p289[Exercise 7・3]
(7)の解説:収束条件はRe(λ-s)>0 かつRe(λ+s)>0 よりRe(s)>|λ|

Re(s-λ)>0 かつRe(s+λ)>0 ではないでしょうか。

(返信の結果)
指摘自体は正しくないですが、誤記ではあったようです。
Re(s-λ)<0 かつRe(s+λ)>0 が正しい記載のようです。

正式な訂正までは上記の内容を参考にしていただき、確実な訂正や修正が入ったら確認するようにしてください。

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