マガジンのカバー画像

メソポタミアのボート三人男/高野秀行

4
新たな脱力系本格派の冒険が始まる!! コンゴで怪獣を探し、ミャンマーでアヘン栽培に潜入し、ソマリアで独立国家を取材した著者が、メソポタミアの河下りを敢行する! 世界中の河を旅した…
運営しているクリエイター

2024年5月の記事一覧

メソポタミアのボート三人男 第一回/高野秀行

プロローグ トリアーナの舟 「俺たちはトリアーナやな」山田隊長が厳かな口調で言った。 「鳥と穴?」  空を飛ぶ鳥も久しからず、おごれる者も穴に落ちるという平家物語以来の諸行無常という意味だろうか。そのわりに私たちは高々と空を飛んでいた記憶はなく、いつも穴に落ちてばかりだったような気がするが。 「ちがうわ。トリはほれ、トリコロールのトリで、三つのことや。三つのアナってことだ」  穴が三つ? 人を呪えば穴二つとかいう諺を聞いたことがあるが、三つ? 「アナクロ、アナログ、アナーキ