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下町やぶさか診療所5

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看護師知子の義母が癌のため死去。故郷島根の海へ散骨してほしいとの遺言を残した。大先生こと麟太郎が知子夫妻に同行すると知った居候の高校生麻世は……。ユーモア&人情小説。
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2024年6月の記事一覧

下町やぶさか診療所 5 第二章 居場所がない・後/池永陽

【前回】  午後の患者もあと数人というところで、耳打ちをするように八重子が話しかけてきた。 「大先生、あの娘、ちゃんときてますよ」 「あの娘って、吉沢明菜さんのことか――そうか、ちゃんときてくれたのか」  独り言のようにいう麟太郎に、 「待合室の隅に座っているのをちらっと見かけたので、受付の知子さんに訊いてきたら、一番あとで診てもらいたいということでしたよ」  得意げな顔で八重子はいう。 「ということは、今日は腹を括って話をするつもりってことか」 「そのようですね――おまけ