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ビストロ⭐︎シュウ14/バッファローウイング
水曜の午後,町まで買い物の帰り道でドレミが疲れ気味の様子である。ちょうどコンサートの練習で忙しいところにボクの絵本の販売に奔走していた。
「あたし,これで週末の過密スケジュールをこなせるかしら。」
13日(木)練習
14日(金)中央道で上京する→高円寺にあるシュウの絵本の出版社に挨拶→笹塚で銀行を3つ回り,カルディで紅茶を買う→東京の家の掃除→世界堂で画材と楽譜のバインダーを買う→シュウが早稲田の眼医者に行っている間に新宿で夏物衣料品のセールを回る→二人でチェロとバイオリンのレッスン(本郷)→新宿のカレー屋さんに寄る。
15日(土) 庭の掃除,害虫駆除→町田の実家で掃除,料理の手伝い→ホームパーティ→深夜の中央道を走って帰宅
16日(日)朝からゲネプロ
17日(月)音楽祭本番
…とまあ,これが体力不足が懸念される週末のスケジュールである。
「よし,今夜はステーキを焼いて精をつけよう。」
「…」
どうやらそこまでの食欲はないようだ。
「じゃあ,チリペッパーを効かせたバッファローウイングを作ってやろうか。」
「うん♪」
妻を励ましたいときにボクは天才クッカーである。クッカーとは造語で,なぜコックではないのかと言えば,味音痴の妻以外にはテイストする人間がいないからだ。天才と断定するにはいささか客観的評価に欠けている。
バッファローウイングは渋谷のアメリカンレストランで必ず注文するお気に入りのメニューだ。レシピがなくても味を再現できるのがボクの特技である。ところが村のJAの肉売場で手羽先を買おうとしたときのことである。ドレミの顔が一瞬曇ったのをボクは見逃さなかった。JAは地産重視で輸入肉を扱わないのでお肉が高いのだ。妻は手羽先の値段を見て今月のやりくりを思ったに違いない。
「ただのバッファローウイングじゃオリジナリティに欠けるから,手羽元で作ろうかな。」
「え?」
「!名付けてバッファローウイングベース!」
「うん!」
天才にとってそれはとても容易いことである。
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セロリが売り切れていたので代わりに散らしたのはシュウ☆ハーブ園で暗くなってから収穫したイタリアンパセリである。
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