#066 読書メモ 逆説のスタートアップ 馬田隆明
馬田隆明さんの「逆説のスタートアップ」を読んだらとても学びが多かったので読書メモとして共有します。
スタートアップの方法論は通常の事業創造とは異なる
中でもトップエリートほど「自分たちの責務としてスタートアップを興し、社会をよりよくしていくべき」と考える風潮が生まれているようです。たとえば理系のトップ校のMIT(マサチューセッツ工科大学)では、卒業後5年以内に起業する人が全体の 12% を超えるようになってい
しかし、スタートアップに初めて関わる人たちの目に、スタートアップという事業はおそらく少し異質なものとして映るはずです。実際、急成長を目標にするスタートアップの世界では、普通のビジネスの考え方や起業の方法論がうまくはまらないことが多くあります。 その最も特徴的なところは「 スタートアップは反直観的である」という点にあります。本書もそうした反直観的な事実があることを伝えたいので『逆説』という掲題を付けてい
不確実性をレバレッジするのがスタートアップ
スタートアップは世界の不確実性をよい方向に利用して、短期間での急成長を狙う
スタートアップとスモールビジネスは違う
繰り返しとなりますが、スタートアップは短期間で急成長を目指す一時的な組織体のことです。
新興企業であっても、短期間での急成長を目指さないのであれば、それはスタートアップではありません。着実な成長を目指すものはスモールビジネスと呼ばれます(図1)。
ベンチャーキャピタルから資金調達をしていることや、先端的なテクノロジに関わっていることなどは関係なく、あくまで急成長を目指す組織体でない限りスタートアップとは言えません。逆に新興企業でなくても、今から短期間での急成長を目指すのであればスタートアップ的な組織体であると言え
アクセラレーターは一種の学校になっている
なぜアクセラレーターがこれほど人気を集めるのでしょうか。一つの理由としては、アクセラレーターが、今やある種のビジネススクールとしての機能を果たしつつあるからではないか、という説があります。つまりお金を払ってMBAを取得して「プロの管理職」になるより、起業して「新しい事業を興す経験」をしたほうが役立つキャリアになる、と考える人が増えているよう
起業は最強の失業対策になる
こうしたテクノロジ失業についていち早く指摘したMITのエリック・ブリニョルフソン教授らが記した『機械との競争』(村井章子訳、日経BP社)では、失業対策として「起業」を勧めています。それもそのはずで、起業やスタートアップのような、創造性を求められる領域への挑戦こそ、人工知能などに向いていないと目されているから
民主主義とスタートアップ
それでは新しい価値と富を作り出し、経済成長を牽引し、そしてパイを広げる機能を持つ現象とは一体何でしょうか。 それこそがイノベーションです。 これまで多くのイノベーションは、スタートアップのように小さな企業によって成し遂げられてきました。 イノベーションを起こして新しい価値と富を生み出し、その富を適切に分配し、健全な社会と民主主義を築いていくための、現時点での最も効果的な手法が「スタートアップ」であると筆者は信じてい
誰の目から見ても優れたアイデアであればそのアイデアは優れてない
そしてこれが最も重要なのですが、スタートアップとしての優れたアイデアは、一見そうには見えません。 誰の目から見てもよく思われるアイデアでスタートアップを始めれば、多くの場合、急成長を遂げられません。
これは誰もが最初間違う、スタートアップのアイデアの反直観性であり、逆説的なポイント
たとえばAirbnbは、自分の家の一部を他人が泊まるために貸し出すサービスとして始まりました。これは多くの人が「まさか」と思う、一見悪いように見えるアイデアです。 実際その創業初期、多くの有名な投資家が投資を見送ったと言われています。しかしそんなAirbnbも、創業からわずか8年ほどで評価額が3兆円を超える企業となりまし
過去に失敗したからといってダメなアイデアではない。「Why Now?」という質問に答えられるか?
ここでさらに判断を難しくするのは、過去に失敗した悪いアイデアだからといって、今失敗するとは限らない、という事実です。
たとえば動画投稿サービスは2000年前後から挑戦が試みられていましたが、ネットワークの進歩やブロードバンドの普及、人々の行動の変化などがあったため、2005年に創業したYouTubeが成功を収めました。過去に悪かったアイデアだからといって、今も悪いとは限りません。
そのため、アイデアそのものの良し悪しではなく、「なぜ今」このアイデアは悪いように見えて実はよいのかを説明できる必要があります。この「Why Now?」の問いは、シリコンバレーで最も尊敬されるベンチャーキャピタルの一つ、セコイア・キャピタルがしばしば行う質問だとされてい
「難しい課題」の方がリソースを集めやすい
なぜ難しい課題のほうが簡単になるのでしょうか。その理由は主に、 ・周囲からの支援が受けやすくなる ・優秀な人材採用につながる ・競合がいないマーケットに進出できる といった点にあります。
まず社会的意義のある事業やミッションのある事業は、まわりの協力を取り付けることを簡単にしてくれます。重要な社会的意義や魅力的なストーリー、ロマンのためならば、進んで協力をしてくれる人は想像以上にたくさんいます。昨今の副業の解禁や、プロの技術を用いたボランティア、いわゆるプロボノの推奨といった社会的な動きがあり、社会的意義を重視する協力者を見つけることはより容易になりつつあり
優秀なエンジニアはリソース集めの鍵
そして優れた技術者は優れた技術者のまわりに集まる傾向にあります。優れた技術者が一人スタートアップに入った瞬間、その人に憧れる技術者の入社応募が一気に増えるケースが散見されます。
たとえばこうした技術的課題に取り組んだスタートアップの事例として、自動運転のキットを開発するCruise Automationがあります。この会社は創業から3年ほどで、ゼネラル・モーターズに約1130億円以上で買収されました。
その会社のCEOは最初、同じ技術を使ってビデオストリーミングのアプリを作るか、もしくはその技術をもともと興味のあった自動運転に応用するかで迷っていたそうです。ビデオストリーミングの会社をやるなら実現可能性は高いものの、多くの競合がいます。そこで技術的に難しく、社会的に意義のある自動運転をスタートアップのテーマとして選ぶことで、結果的にまだ競合がほとんどいない領域に進出することになりました。そして、テーマの難しさに熱意を持つ優れた技術者たちが集まり、いち早く短期間で急激な成長を遂げることができ、高い評価額で買収されるに至りまし
テクノフィランソロピストの増加も「難しい課題ほど良い」の後押しになっている
近年、実現すれば社会的に大きな影響を与えられて、かつ技術的に実現が難しい課題に取り組む人達に対する支援も増加傾向にあります。背景には「テクノフィランソロピスト」と呼ばれる、それまでに技術で築いた私財を使い、技術でさらに世界をよくしていこうというフィランソロピスト(篤志家)の存在が増しています。 たとえばMicrosoftのビル・ゲイツ、Dysonのジェームズ・ダイソン、Googleの元CEOであるエリック・シュミット、Tesla Motorsのイーロン・マスクらは自らの私財を拠出し、難題を解決しようとする人たちを、研究補助やエンジェル投資、コンテストの協賛などを通じ、支援しています。 彼らの重視するポイントは「ソーシャルインパクト」、つまり社会問題の解決や世界によい影響を与えるかどうかです。
逆に「Better」を目指しても才能は集められない
そうした潮流を見るにつれて次第に明らかになりつつあるのは、平凡な企業、つまり既存のアイデアをコピーしてほんの少しの新しい何かを加えたような企業に優秀な人は集まらなくなってきているということです。 ミッションのない企業は人々を興奮させず、また成功するためのハードな… エクスポートの制限に達したため、一部のハイライトが非表示になっているか、省略されています。
この「難しい課題のほうがスタートアップは簡単になる」という正に反直観的な事実は、最初、理解を得ることがとても難しいものです。 しかし一度理解すれば、強力な武器となる考え方でもあり
面倒な仕事に取り組むとスタートアップは簡単になる
そして「難しい課題に取り組むとスタートアップは簡単になる」と同類の反直観的なものとして、「面倒な仕事に取り組むとスタートアップは簡単になる」という事実が挙げられ
またFlexportという貨物の輸送を可視化できるサービスを提供したスタートアップは、世界中の運送業者のデータベースを用意し、それを無料のソフトウェアとして提供することで、運送をより効率化する土台を整えました。
彼らはこれまでメールやFAX、紙で行われていた積荷目録を一つひとつデータ化していき、「規制機関から認可が下りるまでに2年かかる」という面倒な作業を乗り越え、現在、世界の物流を効率化するサービスとして注目を集めるようになっています。彼らの取り組んだ課題は、業界内で課題として認識されていたものの、面倒だし、退屈で、誰もが無視していた課題です。それに取り組んだ結果、大きな成長を遂げることができまし
スタートアップで「面倒な仕事」を避けようとしてはいけない
そしてもう一つ重要で、多くの創業者が勘違いしていることとして「面倒な仕事は避けられない」ということが挙げられます。 スタートアップを志望する人たちの一部は、自分たちが楽をして稼げるような、綺麗な計画を作る傾向にあり
もしあなたが単なる何の実績もない人で、仮にどこかとパートナーシップが組めて、面倒な仕事が避けられるのであるとしたら、他の人にできない理由はないはずです。だとしたら、そのアイデアがまだ誰もやらずに手付かずに残っているのは一体何故でしょう
「Y Combinatorで行うたくさんのことのうちの一つは、面倒な仕事は避けられないというのを教えることだ。そう、コードを書くだけでスタートアップを始めることはできないんだ。(中略)面倒な仕事は避けられないだけじゃない。面倒な仕事こそがビジネスの多くの部分を構成しているんだ。企業は、その企業が引き受ける面倒な仕事によって定義さ
良いアイデアは説明しにくい
「説明しにくいアイデア」を選ぶ よいスタートアップのアイデアを考えるうえで、さらにもう一つ、大事な反直観的な考え方があります。 それは「よいアイデアは人に説明しにくい」という点
こうした状況を見てか、ピーター・ティールもこのように述べています。 「本当に成功している企業というのは、既存のカテゴリーにはまらない、事業内容を説明しにくい企業なの
も登場初期、まだ適切なカテゴリのなかった製品分野そのものを代表する製品でした。日本でも据え置きのゲーム機はみな「ファミコン」と呼ばれていた時期がありました。カテゴリを開拓するような新しい製品は、そのカテゴリそのものの名前になります。 よいアイデアは最初理解されづらく、適切に当てはまるカテゴリもありません。しかしこれまで顧客すら気付いていなかった、しかし本当に求めていた新たなカテゴリが見つかれば、そのアイデアは急成長することができます。 よりよいものではなく「異なるもの」を そうした新しいカテゴリの製品は、これまでに比べて「よりよいもの」ではなく、既存のものと「異なっているもの」であることが多いのが特徴です。 スタートアップの製品は従来のものに比べて、性能で 10 倍、もしくはコストやかかる時間で 10 分の1を実現する必要があると言われます。それぐらいの差がなければ、スタートアップという信用のない会社の製品を使ってもらえませ
「インター・ディシプリナリー」よりも「アンチ・ディシプリナリー」
ピーター・ティールは「秘密を探すべき最良の場所は、ほかに誰も見ていない場所だ」と述べています。
MIT Media Lab所長の伊藤穰一の言葉を借りれば、こうしたほかに誰も見ていない領域のことを「反専門性(アンチ・ディシプリナリー)」と呼べるのかもしれません。彼はこのことについて、自身のブログで以下のように説明しています。 「インター・ディシプリナリーな研究とは、さまざまな分野の人々が共同で研究を行うことを指します。しかし、アンチ・ディシプリナリーはそれとは大きく異なるものです。その目的は、既存のどの学問領域にも単純には当てはまらない場所で研究を行うこと──独自の言語や枠組み、手法を持つ独自の研究分野
一つ目に、まだはっきりとした領域ではないため、市場規模は測定できず、計画性を重視する大企業は参入しづらいという点。そして二つ目には、課題がまだ解決されず残されているため、解決策はおもちゃのようなものでも十分に効果を発揮する、という点
流行を追いかけない
多くの人たちは一時的な流行を追いがちです。それはベンチャーキャピタルのような投資家も同じです。
Facebookの大成功の兆しが見えていた 08 年ごろは、皆がこぞってSNSを立ち上げ、「次のFacebook」を狙った投資家もたくさんの投資をしました。
しかしその頃に登場し、本当に成長したスタートアップは、UberやAirbnbといったシェアリングエコノミーに類するスタートアップでし
そして彼らの成功が目に見え始めた 12 年前後には「◯◯版Uber」といったシェアリング系サービスが続々と出ましたが、 17 年の今からそれを振り返れば、そうした後続サービスのほとんどは急成長できていませ
Y Combinatorの社長を務めるサム・アルトマンは、自身の投資経験を振り返って、「流行のアイデアを基にしたスタートアップへの投資は一つの例外を除いてうまくいかず、逆に他の投資家が断ったようなスタートアップへの投資のほうがよい成果を出している」と告白してい
アイデアは「考え出す」のではなく「見出す」
ポール・グレアムはスタートアップのアイデアは「考え出す」のではなく「気付く」ものだと言っています。それはつまりスタートアップとは、無理やりひねり出すアイデアから始めるのではなく、自分の経験から有機的に生まれてくるものから始めるべき、ということです。これも反直観的ですが、非常に重要な指摘でしょ
似たような話として、「飛びぬけて頭のよい人が週末にやっていることが、 10 年後の普通になる」と言われ
まとめてみると反直観的ではありますが、急成長するスタートアップのアイデアは考えようとしてはいけない、ということ
成長する市場を選ぶ・・・とは言うが、これは難しい
と思います。 スタートアップの成功を左右する要因に、「急成長する市場を選ぶ」というものがあります。しかし急成長する市場の選択は非常に難しい判断が求められます。 なぜなら急激な変化とは徐々に始まるものであり、数字にはなかなか現れにくいものだから
こうした非線形的な変化や指数関数的な変化は、最初ゆっくり、そして後から振り返ってみれば、急激な変化のように感じられます。
「Why Now?」に答えられるか?
初期のスタートアップが投資家へプレゼンテーション、つまりピッチする際には「Why This?」「Why You?」、そして「Why Now?」という問いに答えられるようにしておくべき、と言われ
数々の優良なスタートアップに投資してきたベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルは「2年前でもなく2年後でもなく、なぜ今なのか」という質問をすることで有名です。これはつまり「Why Now?」です。またインキュベーターであるIdealabが様々な製品を分析した結果、その成功にもっとも重要な要因はタイミングであると結論づけてい
スタートアップが着目するべきなのは、単に最新のテクノロジというだけでなく、急激に変わりつつあるテクノロジとなります。 特に、 【1】性能 【2】コスト 【3】サイクルタイム の三つの面に注目するべきだと、Y Combinatorのサム・アルトマンは指摘してい
ここ数年ではバイオテクノロジを使ったスタートアップが注目を集めています。その背景の一つにあるのは遺伝子情報解析のコストの劇的な低下です。そのコストはこの 10 年で「ムーアの法則」を超える勢いで下がってい
同様に各国政府のクリーンエネルギー推進の方針も相俟って、太陽光発電のコストが年々安く、効率がよくなっており、クリーンエネルギーの分野のスタートアップも改めて注目を集めてい
しかし多くの場合、テクノロジの進歩だけでスタートアップが成功できるわけではありません。 スタートアップとして成功するには、進歩したテクノロジで解決できる大きな課題と、そのビジネスを維持できる優れたビジネスモデルも必要
レーザーは最初、特定の目的のために作られましたが、今やその原理はCD、視力の矯正、顕微鏡手術といった様々なところに応用されています。レーザーの原理を発見したとされるチャールズ・タウンズは、その発見の半世紀後のインタビューで、「レーザーがこれほどまでに使われることを想像していたか」と訊ねられたところ、「私は単に光線を分割するためだけにやっていただけだ」と答えたそう
ベンチャー投資のほとんどは失敗する
2012年にピーター・ティールが投資したFacebookが上場しましたが、彼はこの企業への投資で実に1000倍以上のリターンを生み出しています。 そして驚くべきことにFaceook一社の上場によって生まれた利益とは、その年のベンチャーキャピタル業界全体の利益の 35% に相当するほど大きいものでし
そもそも年間のベンチャーキャピタル業界全体の利益のほとんどは、わずか十数社がもたらすと言われます。 スタートアップの成功は基本的には外れ値であり、異常値です。ベンチャーキャピタルが優れた投資リターンを得るためには、そうした外れ値を叩き出すスタートアップを見つけ出さなくてはなりません。特にスタートアップの初期のステージに投資をするようなベンチャーキャピタルの人たちほど、「外れ値」を狙う傾向が強いと言っていいでしょう。 つまり、ベンチャーキャピタルはヒットを狙うビジネスではなく、ホームランを狙うビジネスなの
Twitterに投資したことで知られるユニオン・スクエア・ベンチャーズは、自社のファンドで 21 の投資をしたうち、9個の投資が失敗しており、その投資した分のお金をほぼ失ったというデータを開示してい
ただし成功した残り 12 の投資では、上から順に115倍、 82 倍、 68 倍、 30 倍、 21 倍のリターンを得ています。それぐらい途轍もない大きさのリターンが発生するときには、失敗率はどうでもよくなり
ホームランを狙う意義がもう一つあるとすれば、そのほうがよい投資家から支援を得られるから、ということ
悪い投資家ほど「そこそこに当たりそう」な案件へ投資する
よい投資家であればあるほど、スタートアップへの投資における反直観性を理解しているため、最終的に大きく跳ねそうな対象にしか投資をしませ
逆に悪い投資家ほど、スタートアップの反直観性を理解していないため、そこそこ当たりそうな、ヒット狙いの対象へ投資しがち
投資家選びは大事
よい投資家に投資してもらうことはスタートアップの成功確率を上げますが、悪い投資家に当たったときは経営をかき乱され、悲惨なことになりかねませ
起業家は否定されてなんぼ・・・理解されないこと、孤独であることを楽しむ
ある側面から考えれば、「起業家は孤独であれ」ということになるでしょう。あるいは「正しく孤独を楽しめ」ということになるかもしれません。 繰り返しますが、スタートアップとしてよいアイデアは、数多くの否定を受けることになります。だからこそ、まわりから何を言われようと、自分が続けられるようなアイデアであるかどうか、そしてそこにどうしても達成したいビジョンやミッションがあるかどうかといった拠り所が、スタートアップを手がける人に必要になってき
電気自動車のTesla Motorsは2003年に設立されましたが、その当時、電気自動車や自動運転に関して真面目に語っている人がいたら、多くの人がバカにしていたはずです。しかし他人からバカにされることを引き受けて、その後、十数年粘り続けることができたからこそ、今の成功があり
スタートアップで言えば、Googleは初めての資金調達を行うまでに350回のピッチ(投資家へのプレゼン)を行いました。つまり、それまではずっと断られ続けていました。同様に、オンラインコミュニケーションツールのSkypeは 40 回、コンピュータネットワーク機器を作るCiscoは 76 回、オンラインラジオのPandoraは200回、それぞれ最初の調達までにピッチを繰り返し、ずっと失敗していました。しかし彼らは諦めなかったからこそ、投資家からお金を預かり、そしてその後事業を大きく成長させることができまし
「Relentlessly Resourceful」であること
ポール・グレアムは起業家の重要な資質として「Relentlessly Resourceful(粘り強く、臨機応変であること)」を挙げています。スタートアップでは必ず悪いことが起こります。しかもスタートアップを経営していると、ジェットコースターのように目まぐるしく状況が変わります。そんな状況に対して柔軟かつ臨機応変に対応しながら、基盤となる信念をぶらさずに解決策を探し続けるような資質が起業家には必要とされ
諦めは大事だが、あまりに早く諦めてしまう人が多い
もちろん単に悪いアイデアからは早く撤退するべきです。しかし多くの起業家は「あまりにも早く諦めてしまう」とサム・アルトマンも指摘してい
スタートアップは不合理なアイデアのほうが合理的です。悪いように見えて実はよいアイデアを探す必要があります。ただし悪いように見えるアイデア、そのほとんどが単に悪いアイデアであることには注意して
難しい課題や面倒な課題のほうがまわりから支援が受けられたり、競合がいなかったりするので、結果的には簡単になります。だからこそ社会的にインパクトの大きい課題を選ぶことをお勧めし
事業アイデアの逆説的なチェックポイント
【1】悪いように見えて、実はよいアイデアですか(サム・アルトマン)
【2】賛成する人のほとんどいない、自分だけが知っている大切な真実を前提としたアイデアですか(ピーター・ティール)
【3】自分しか知らない秘密を使ったアイデアですか(クリス・ディクソン)
【4】週末に頭のよい人達がやっているようなアイデアですか(クリス・ディクソン)
【5】「私はどんな問題を解決すべきなのか」を考える代わりに、「誰かが解決してくれるなら、どんな問題を片付けて欲しい?」と考えてみましたか(ポール・グレアム)
【6】誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業でしょうか?(
「競争」を避けて「独占」する
スタートアップの戦略を考える上で重要なキーワードが「独占」です。 これも反直観的な事実かもしれませんが、スタートアップが狙うべきなのは勝つことでなく、「競争」を避けて「独占」すること
独占の話に関連した、もう一つの反直観的な事実を紹介します。それはスタートアップにおいては、中ぐらいの利益率を出す企業がほとんど存在しないという点です。 想像するよりも多くの会社が、途方もない利益を上げているか、もしくは薄い利益率の中で生き残っているか、その両極端に位置することになります。 つまり、過当競争が発生するか、もしくは独占するかで、競争環境は二極化しがちなの
独占のための鍵がスピード
独占のための戦略では、まず何より「素早さ」が重要になります。 素早さが必要なのは、他社が参入してくる前に、一気に独占をしなければ、やはり競争に巻き込まれてしまうからです。そして素早く独占するためには、以下のような条件を満たす必要があることをピーター・ティールは挙げています。 【1】小さな市場を選ぶこと 【2】少数の特定の顧客が集中していること 【3】ライバルがほとんどいないこと 【4】顧客に刺さり続ける仕組み(stickiness)がある
市場の選択は非常に重要
現実として、どこを市場に選ぶかが、スタートアップそのものの成否をほぼ決定すると指摘されています。古くからスタートアップへの投資を手がけるIronstone Groupによると、スタートアップの成功要因の約 80% が市場の選択による、という分析もあるそう
未来は予測できない・・・キーマンが何を話題にしているか?が重要
ポール・グレアムですら、「未来は予期しないところからやってくるので、予想するのは不可能であり、自分は予測しないことにしている」と明言してい
ポール・グレアムは未来を予想するにはアイデアより人に着目すること、そして新しいアイデアを持つ人達となるべく交流することをすすめており、アイデアと同様で、市場が伸びるかどうかには「気付く」ことが必要なのでしょう。
たとえばYouTubeへの投資を決めたベンチャーキャピタリストは、全く関係のないほかのスタートアップのミーティングに行くたびに皆がYouTubeを見ていることを聞いて、その価値に気付いたからこそ、「投資することに迷いはなかった」という言葉を残してい
長期の独占のための条件
ピーター・ティールは、長期の独占状態を作るためには、以下の四つの要素のいずれかが必要だと指摘しています。
【1】プロプライエタリテクノロジ(専売的な技術)
【2】ネットワーク効果
【3】規模の経済
【4】ブランド
さらにピーター・ティールは別の講演で、『ゼロ・トゥ・ワン』には書かなかった独占のための追加要素として「ディストリビューション」「政府」「複雑な組み合わせと調整」の三つを挙げてい
最後の複雑な組み合わせと調整というのは、既存のものを特殊な方法で組み合わせて新しい価値を生むことであり、彼いわく、シリコンバレーで過小評価されている要素だそう
たとえば、初期のスマートフォンに組み込まれた技術の中で、目新しいものはそれほどありませんでした。逆に言えば、スマートフォンは適切に既存の部品やサービスを複雑に組み合わせて調整し、新しい価値を生んだ例と言えます。Tesla MotorsやSpaceXもこの種類の会社であるというのがピーター・ティールの弁
競争してる時点で負け犬
こうした状況をみて、ピーター・ティールは「競争は負け犬のためのもの」「競争はイデオロギーである」と喝破し
彼はスタートアップやその他の一部の領域において、「負け犬とは競争に負けた人のことではなく、競争している人こそが負け犬だ」と指摘し
ここから先は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?