京大ロー 令和3年度(2021年度) 民事訴訟法

1.Aは、第2回口頭弁論期日において「これまでのYの訴訟行為を追認するが、第1回口頭弁論期日におけるYの『Xが主張する貸金契約があったことは認める』との陳述は追認せず、同貸金契約があったことを認めない」という陳述(以下「本件陳述」という)をしている。本件陳述は、訴訟無能力者である成年被後見人(民訴法31条本文)Yの法定代理人である後見人(民訴法28条、民法859条1項)Aが Yのした訴訟行為の一部のみの追認及び残部の追認拒絶(民訴法34条2項)を主張するものである。訴訟無能力者のした訴訟行為は無効であるが、法定代理人等の追認があった場合には当該訴訟行為は遡及的に有効となる(民訴法34条2項)ところ、訴訟無能力者のした訴訟行為の一部のみを追認し、残部の追認を拒絶することができるか。
(1)訴訟無能力者に有利なもののみを追認し、不利なものの追認を拒むことを許すと、追認権者の恣意的な判断によって相手方当事者の地位を害することとなり妥当ではない。
そこで、追認はそれまでの手続を不可分一体なものとしてしなければならず、一部のみの追認及び残部の追認拒絶がなされた場合には 全部について追認拒絶がなされたとみなされると解する。
(2)したがって、Aは 第1回口頭弁論期日におけるYの「Xが主張する貸金契約があったことは認める」との陳述以外のみの追認をすることはできず、本件陳述は XがYを被告として提起した訴えにかかる訴訟手続全体についての追認拒絶とみなされる。
2.よって、本件陳述により XがYを被告として提起した訴えにかかる訴訟手続は確定的に無効となるから、裁判所は、Aに対する訴状の送達(民訴法138条1項、102条1項)から手続をやり直さなければならない。

以上

P.S.
本件陳述により、Yの裁判上の自白も無効となるから、自白の撤回等の論点について書く必要はない(出題趣旨参照)。
仮に書いてしまった場合、予備校仕込みの論点主義答案とみなされて心証は悪くなりそう。知っている論点を披露するよりも、現場思考で問いに正面から向き合う姿勢を見せたい。


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