京大ロー 令和2年度(2020年度) 民事訴訟法

問1
1.Aの尋問を行うべき証拠調べの手続
Aは、原告XがYを被告として提起した訴え(以下「本件訴え」という)の当事者ではない。
そのため、本件訴えにおいてAの尋問を行うためには、証人尋問(民訴法190条以下)の手続によらなければならない。
2.Bの尋問を行うべき証拠調べの手続
Bは、Yの代表者ではあるが、法人であるYとは別人格であるから、本件訴えの当事者ではない。
もっとも、当事者尋問に関する規定は法定代理人について準用され(民訴法211条)、また、民事訴訟法中、法定代理人に関する規定は、法人の代表者について準用される(民訴法37条)。
そのため、本件訴えにおいてBの尋問を行うためには、当事者尋問(民訴法207条以下)の手続によらなければならない。

問2
1.当事者の法定代理人が死亡した場合には、訴訟代理人がいる場合を除き(民訴法124条2項)、訴訟手続は中断する(民訴法124条1項3号)。また、民事訴訟法中法定代理人に関する規定は、法人の代表者について準用される(民訴法37条)。そのため、当事者である法人の代表者が死亡した場合には、訴訟代理人がいる場合を除き、訴訟手続は中断する。
本件では、Yの代表者であるBが死亡しており、また、訴訟代理人がいるとの事情はない。
したがって、本件訴えの訴訟手続は中断する。
2.当事者である法人の代表者が死亡した場合には、新たに法人の代表者となった者が訴訟手続を受け継がなければならない(民訴法124条1項3号、37条)。
本件では、Bの急死後、新たにCがYの代表取締役に選任されてその代表者となっている(会社法349条4項)。
したがって、Cは本件訴えの訴訟手続を受け継がなければならない。

問3
1.Aは、Xが提起した後訴は、本件訴えと重複起訴(民訴法142条)の関係に立つので、後訴は不適法な訴えとして却下(民訴法140条)されるべきであると主張している。では、本件訴えと後訴との間に「事件」の同一性が認められるとして、両者が重複起訴の関係に立つといえるか。
(1)民訴法142条の趣旨は、訴訟不経済、判決内容の矛盾抵触のおそれといった弊害を防止・回避する点にある。
そこで、「事件」の同一性は、当事者及び訴訟物の同一性が認められる場合に肯定されると解する。
(2)本件訴えの当事者は原告X及び被告Yである一方、後訴の当事者は原告X及び被告Aであり、当事者の同一性は認められない。
また、本件訴えの訴訟物は XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権である一方、後訴の訴訟物は XのAに対する不法行為に基づく損害賠償請求権であり、訴訟物の同一性も認められない。
(3)したがって、本件訴えと後訴との間に「事件」の同一性は認められないから、本件訴えと後訴とは重複起訴の関係には立たず、上記主張は認められない。
2.よって、後訴事件の受訴裁判所は、以上の理由からAの上記主張は認められない旨を応答すべきである。

以上


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