あとがきで「読者層は医療従事者全員」
鍼灸師が鍼灸以外の書籍で臨床の支えになった書籍を紹介しています。
読んだ書籍③
「極論で語る睡眠医学」 河合 真 著 丸善出版 刊
まず最初に、本書の「あとがき」には、
本音のターゲット読者層は医療従事者全員・・・(中略)・・歯科医師だろうと心理士だろうと、鍼灸師だろうと・・医療に携わっている方であれば、皆さん読んで下さい。
とあります。「鍼灸師」も含まれるんだ、、、少し嬉しく感じますね。
このメッセージを勝手に受け取り、鍼灸臨床における「睡眠」について振り返るきっかけとなりました。
鍼灸院での「睡眠」
私は主訴によらず、初診時、再診時にかかわらず、
「睡眠」「食欲」「運動習慣」「気晴らし」などについてはルーティンで
聞くようにしています。
患者さんの病態を知るにも大切なことですし、生活を尋ねる質問としても
自然で、そこから様々なことを知ることができます。
またこれらががうまく回っている時は、患者さんの状態が概ね安定しているように感じ、一つの指標としています。
さて、鍼灸院では「眠れません」「寝つきが悪くて」「なんだか疲れて」などの訴えはよくあります。
鍼灸にはいわゆる「不眠」のツボとよばれるものもあり、そのツボを
鍼やお灸で刺激すれば、全ての方がすぐに眠れるようになる、、、というほど容易くはありません。(ツボの効果を否定するわけではありません)
もしそうだったら、この本を読まなかったと思います。
患者さんの「睡眠」に問題がありそうな時は、私自身の黄色信号というかアラートのようなものがあり、掘り下げて質問します。
理由は睡眠の問題の背景が多様で、緊急性があったり、
鍼灸よりも他の医療手段が優先的に患者さんの利益になることが多々あるからです。
一人での開業鍼灸師のため時間は比較的あり、下記のような病歴を
詳しく尋ねます。
・「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」、そこから「興味の喪失」
「うつ傾向の有無」
・高齢者の夜間頻尿
・「睡眠時無呼吸症候群」をうかがわせる「日中の疲労感・耐え難い眠気」
「運転中の居眠り」
・悩み事、一時的なものか、環境によるものか、期間限定のものか
など、、
以上のような病歴があったときは適切な科で診てもらうよう促します。
また「子供の夜泣き」「カフェイン摂取過多」「就寝前のスマホ」で眠れなかったといったこともありました。
医療的なものではなくても、「睡眠」を尋ねることで患者さんが生活で抱えていることが見えてきます。
鍼灸師は機器による検査はできず、正確な診断は医師にお任せするしかありません。しかしながら「睡眠」について知らないと、患者さんに効果的に尋ねることができません。結果的に適切な医療を受ける機会の損失につながります。
病歴を聴いて患者さんに呼吸器内科を紹介し、「睡眠時無呼吸症候群」が判明したことは少なくありません。
一方で、鍼灸院を受診される患者さんの中には「病院嫌い」の方が時々おられます。様々な理由や背景があって「病院嫌い」になられています。
ただ、その理由や背景に理解や共感はしたとしても、私が一緒に「病院嫌い」になって同調することは患者さんにメリットがなく、治療の選択肢も減ります。
このようなケースの時、医学書を読んでいたことが役に立っているかもと
感じる時があります。
というのも、医学書に記載されている医学的知識よりも、医師がどのように考えているのか、いわゆる思考過程の一部や医療の構造を垣間見ることで、
私自身の医師に対する印象が大きく変化した経験があります。
「もしかしたら患者さんは誤解しているのでは」「医師はそのような意図で伝えたのではないのでは」と思うことがあります。ちょっとした行き違いは非常にもったいないです。
とはいえ、鍼灸師自身が患者さんに信頼されていないと、単に受診を促してもうまくいきません。
本書を読んで
本書の中でもあるように、
「不眠は複数の問題が同時に存在する」
「不眠とは究極のオーダメイド医療を必要とする」
とても鍼灸師が独力でなんとかできる問題ではないことがよくわかります。
それでも、鍼灸院を受診された患者さんには、睡眠に問題はないかを確認し、
適切な科につなげること。その上で、鍼灸でできることがあれば行うことだと考えます。
最近は患者さんにはしつこいくらい、「もっと寝てください」
「寝ることでしか回復しないこともありますよ」が口癖になっています。
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