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社労士への道/国民年金法の概要についてのまとめ

過去の度重なる法改正によりややこしい制度と化した年金。その中でも全国民が対象となる国民年金について全体像を説明します。

目的条文

国民年金法では下記のように記されています。

(国民年金制度の目的)
第一条 国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
国民年金法第一章総則

ここでいう日本国憲法第25条第2項は以下になります。

第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
日本国憲法第25条

いわゆる生存権のことですね。2項の義務に基づいて各種の社会保障制度が設けられているということです。

国民年金の仕組み

ポイントは以下の3点です。

・全ての国民を対象とした年金制度
・国民全員が共同連帯して支え合う制度
・国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行う

全ての国民を対象とした年金制度

法律で定められた一定の要件に該当する者は、加入が自由な私的年金(任意加入)とは異なり、本人の意思にかかわらず強制的に国民年金の被保険者になります(強制加入)。
つまり、一部の人を除いて20歳になったらもれなく国民年金に加入し、保険料を払わなければならないということです。

国民全員が共同連帯して支え合う制度

現役世代の保険料負担で高齢者世代(受給世代)を支えるという世代間扶養の考え方で運営されています。つまり、自営業者だけでなく、会社員や公務員、専業主婦、学生なども制度への加入を義務付けられています。
そして、「保険給付」とは言わず「給付」と言うのは、保険料を負担していない者にも福祉的に給付をおこなっているためです。
よく勘違いしてしまうこととして、払った保険料で自分の将来の年金が賄われると思ってしまいがちですが、年金の場合は違います。単純に言えば、年金を受ける高齢者の年金原資は、その子や孫の世代が同時進行で払っているというカタチです。世代間扶養とはそういうことです。国家レベルで子供が親に仕送りをしているというイメージですね。

国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行う

若い頃に保険料を支払ってきた人たちが高齢者等になると、今度は年金をもらう側になります。これを給付と言います。
給付の種類は以下の通りです。

  1. 老齢基礎年金
        老齢基礎年金、付加年金

  2. 障害
        障害基礎年金(1級、2級)

  3. 死亡
        遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金

保険者

(管掌)
第三条 国民年金事業は、政府が、管掌する。
2 国民年金事業の事務の一部は、政令の定めるところにより、法律によつて組織された共済組合(以下単に「共済組合」という。)、国家公務員共済組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会又は私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定により私立学校教職員共済制度を管掌することとされた日本私立学校振興・共済事業団(以下「共済組合等」という。)に行わせることができる。
3 国民年金事業の事務の一部は、政令の定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が行うこととすることができる。
国民年金法

国民年金事業は政府が管掌します。

被保険者

強制被保険者

  1. 第1号被保険者
    ・自営業者、学生
    ・日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者
    ・国籍要件なし
    (第2号、第3号被保険者に該当する者を除く)
    <除外すべき特別の理由があるもの>
    ・厚生年金など老後の年金(終身年金)をもらえる者
    ・日本の国籍を持たない者のうち、医療滞在ビザ、観光・保養ビザで来日した者
    ・ただし、障害・遺族給付を受けることができる場合は除外されない

  2. 第2号被保険者
    ・会社員、公務員等(厚生年金保険の被保険者)
    ・国籍、国内居住及び年齢についての要件はなし
    ・(除外)65歳以上の者であって、老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付の受給権を有するもの

  3. 第3号被保険者
    ・第2号被保険者の養配偶者
    ・日本国内に住所を有する者(原則)
    ・20歳以上60歳未満の者
    ・国籍要件なし
    ・外国への留学生など日本国内に生活の基礎があると認められる者で主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの

任意加入被保険者

  1. 65歳未満任意加入被保険者
    ・日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者で、厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることが出来るもの
    ・日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
    ・日本国籍を有する者であって、日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満の者

    つまり、第1号被保険者から適用除外となる者か、老齢給付等を受ける事ができるが低額の者、第一号被保険者となれない者が、任意加入することで年金をもらえるようになる、もしくは増やすことが出来る仕組みです。

  2. 65歳以上70歳未満の特例による任意加入被保険者
    ・昭和40年4月1日以前に生まれたこと
    ・老齢給付等の受給権を有しないこと
    ・以下のいずれかに該当するもの
        ①日本国内に住所を有する65歳以上70歳未満の者
        ②日本国籍を有する者であって、日本国内に住所を有しない65歳以上
            70歳未満の者

    これは、65歳未満任意加入被保険者とは違い、65歳をに達した後でも老後の年金権を有しないものが特例的に任意加入できる仕組みです。

以上、年金の目的と被保険者についての概要を説明しました。
次回以降は、保険料と個別の給付の種類や仕組みについて順次説明していきます。





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