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Magic of love


恋の魔法。




もしも、そんなものがあったとして、


私が使えたとしたら、




きっと、彼のことを

振り向かせることも、できるのかな。




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「よし!今日も頑張るぞっ」



髪型もバッチリ決めて、

先生にバレない程度のメイクをして、



私は教室に入る。




「おはよ!」


声のトーン高めで、彼の目を真っすぐ見つめる。




『お、守屋。おはよう。』



目一杯のあいさつに対して、

彼の返事は、ドライだ。



まぁ、これはいつものこと。



切り替えて、次にいこう。





授業の前、



『あっ』


「どうしたの?」


『生物の教科書、忘れた』



「見せてあげるよ!ね?」


『ありがと。』



さっきもそうだけど、

彼は、私の目を見ようとしない。


きっと、恥ずかしいんだよね?




彼とは隣同士なので、

机をくっつけて、真ん中に教科書を置く。




"はい、じゃあ次のページ開いて〜"


こっちに背を向けて、先生が言う。




「あっ」




教科書をめくろうとして、


私の右手と、

彼の左手が、


少しだけ触れた。



お互い、すぐに手を引っ込めたけど、



彼は声には出さず、目を大きくして、

一瞬だけ、私を見た。



逸らした後の、彼の目が、

少しだけ揺れていたのは、


気のせいじゃ、ないよね?




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放課後。



せっかくだから、帰り、

どこか寄って帰ろうかなぁ。




『じゃあその時間、俺にちょうだい。』



「えっ?」



『あ、いや、思いっ切り喋ってたから』



「うそっ」


『独り言にしては、めっちゃ大きかったけど』



え、恥ずかし。




『でさ、行く?』



「うん!行く行く!」




『じゃあ、マックね』





ポテトとナゲットを買って、

向かい合わせに座る。




あ、そうだ。


せっかく彼が誘ってくれたんだし、

ここは思い切って。




ナゲットを食べるふりして、

ソースを鼻のてっぺんにつけてみる。



彼に目線を送ってみるけど、

気づかない。




仕方ないなぁ。



「あっ、ついちゃったっ」


語尾にハートを付けたみたいに言ってみる。



『いや、絶対その位置には付かないでしょ』



「ひどーい!」



『守屋はあざといなぁ』


彼がハハッ、と笑いながら、そう言った。



「あざとくないってぇ…」





『まぁ、可愛いから、いいんじゃない?』




彼が言った言葉に、思わず固まる。

自分でも、顔が熱くなっているのが

よくわかる。



「ねぇ、今度のさぁ…」



私は恥ずかしくなって、

すぐに話題を切り替えた。




それからは、他愛もない話をして、

時間は、あっという間に過ぎた。







帰り道。


二人並んで歩く。






『もし、守屋がよかったらなんだけどさ』






『また、誘ってもいい?』




「えー!もちろんいいよ!」





『じゃあ、次は何がいい?』






「うーん…」




「お鍋かなー?」




『え、鍋?!』




「えぇ…だめ??」



『いや、ダメじゃないけど…』

『普通の発想として、そうはならないよな、と思って』



「えー?そうかなぁー??」



私がそう言うと、


彼は笑って



『やっぱ、守屋って変わってるよな』






『まぁ、そういうところが』






『好きなんだけどさ』







えっ?



私の聞き間違い、じゃないよね?





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やっと、私は気づいた。




私が魔法をかけていたんじゃない。



彼に、「恋をする」という魔法を

かけられていたんだ。








恋の魔法。




もしも、そんなものがあったとして、


彼が使っているとしたら、



私に、その魔法をかけてほしい。




永遠に。

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