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「逆さ虹」

『痛てて…』


「大丈夫?」

『流石に、ちょっと無理しすぎたかな…』

前には無かった腰の痛みと共に、
ひかると過ごした時の長さを感じる。


「ごめん…」

『いや、別にひかるは悪くないよ』
『久しぶりに旅行できたからさ、つい張り切っちゃっただけで…』


2人で同じ時を過ごすようになってから、
お互いに中々タイミングが合わず、
やっとの思いで叶った旅行。

思い切って、良いホテルを取ったからと
頑張った結果がこれだ。


『ありがとね、気遣ってくれて。』

そう言って、僕はひかるの頭を撫でる。

「優しいね、いっつも。」

『そう?』


内心、嬉しい気持ちを抑えつつ、
僕は車の扉を開ける。


「ねぇ、あれ見て!」

『ん?』

「虹が逆さまになってる!」
よく見ると、
太陽の上に、逆になった虹がある。


『本当だ、珍しいね』

「調べてみよ」

ひかるはスマホを取り出して、調べだした。

僕も気になったので、調べてみた。


『環天頂アーク、って言うんだってー』
「ふーん」

『何か、意味あるのかな?』

またひかるは、スマホを動かす。


「ねぇねぇ!」
「逆さ虹って、幸運の前触れなんだって!!」

『そうなんだ』
『じゃあ僕らにも、良いことが起こるかもね』

他にも意味があるらしいけど、
それはそっと、心の中にしまっておいた。

「ねぇ、早く行こ!」
「良いことあるかもよ!」

『うん』

僕らは、車に乗り込んだ。



この後、ひかると僕の運命を
決定づける出来事が起こることを、

この時の僕たちはまだ、知る由もなかった。

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