「通路側がお気に入り」
新横浜を出て、加速するのぞみ。
学生だけど、麗奈のレベルに合わせて、
頑張って貯金した甲斐あって
今、こうやって旅行を楽しめている。
『ねぇ』
「ん、なにー?」
『指定席で良かったの?』
「え、なんでー?」
『お嬢様って、グリーン車移動が普通なんじゃないの?』
「ねぇー!いじってるでしょ」
笑いながら僕は、窓側のフックにかけた
レジ袋から駅弁を出した。
対する麗奈は、いちごサンド1個。
『麗奈は、いつもより少なめなんだね』
「せっかくなら、大阪で美味しいもの食べたいじゃん?」
『なるほどね』
考えてみれば、麗奈はこういうこだわりが多い。
僕は、前から気になっている疑問をぶつけてみた。
『そういえばさ、麗奈はなんで通路側がいいの?』
「えーと、それはね」
「こうやって」
僕の右手を、ギュッと握りしめると
「左手を繋いても、右手が使えるでしょ?」
『うん…』
『凄く、嬉しいんだけどさ』
「ん、なにー?」
『右手、使えないなー…って』
「あっ」
「じゃあ」
「こうすれば、食べれるよね?」
僕は周りの視線も気にすることなく、
思い切って、彼女に甘えることにした。
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