見出し画像

「願いを込めて」

2人で一緒に、電車に揺られる。


僕らが目指すのは、学問で有名な総本宮。


それ故に、乗り換えた電車の中は、
制服を着た学生と、外国人でいっぱいだ。


すると、突然英語で優月に話しかけてくる人が。
どうやら、行き方を聞きたいらしい。

勉強のできない僕には、さっぱり理解できないが
流暢に話す優月は、流石だな、と思った。


電車を降り、駅を出ると
参道には多くの人が。


はぐれないよう、手を繋いで歩く。

名物の梅が枝餅を筆頭に、
沢山のお店が並んでいる。


『ねぇー、お腹空いたー』
「じゃあ、あそこ行く?」

僕が指したのは、明太子のお店。
有名なのか、人だかりができている。

結構な時間並んで、お茶漬けを手に入れる。
優月は温かいの、僕は冷たいのを選んだ。


わさびの風味と、明太子の辛さがたまらない。

塩気が強いものを食べたら、
甘いものが欲しくなる。

僕が選んだのは、梅が枝餅。
出来立てなのに熱すぎず、食べやすい。
そのままだと甘さは控えめなのに、
サービスで出てくるお茶と合わせると、
より引き立てられる。


「うーん、最高!」
『甘いの大好きだもんね』


お腹を満たした僕らは、
鳥居をくぐって、中へと入る。


本殿は改修中のため仮殿に参拝、との看板が。


「そっか、残念だなぁ」
『でも、仮だからって効果は変わらないでしょ』


こういう、ポジティブなところが、
僕が優月を好きになった理由。


『実はここってさ、文化芸術でも有名なんだって』


「へぇー、知らなかった。」
「じゃあ、今の優月にぴったりだな。」


そう。

優月は夢を叶えるため、
遠くないうちに、ここを発つ。

沢山の人に幸せを与える、そんな存在になりたい
という優月の夢。


僕はこのまま進学する。
そしていつか、優月を支える存在になりたい、
という僕の夢。


一時、僕らは離れることになる。
でもいつか、もう一度繋がれることを信じて。


二礼、二拍手をして、
目の前の神様に願いを捧げる。


横を見ると、
一礼が優月とシンクロしていた。


僕らの思いと願いも、一緒になった気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?