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「ベタカタ、ネギ多め」

美青に連れられて入ったのは、


アーケードの中にある、カウンターだけのお店。


店内は、いかにも地元の人、といった感じの常連と

観光客が入り混じっている。


こういう風なお店は初めて。

知識のない俺が困惑していると


「替え玉は?いる?」


『うーん、今はいいかな』



「じゃ、700円」


美青にお金を渡すと

スムーズな手つきで、券売機を操作する。



"ラーメン"と書かれた食券を美青から渡されると


『麺の硬さは?』


「硬めかな」


『わかった』

そう言って、美青は俺から食券を取り、


空いた席に座ると、


『カタとベタカタ、ネギ多めで』


"はい"



美青から食券を渡された店員さんは

二人の流れ作業で、

スープを濾し、麺を入れ、ネギと刻み肉を載せる。


あっという間に、二杯のラーメンが

俺らの前に置かれた。




ストレート細麺をすすり、スープを飲む。


硬めなので少し芯がある感じがちょうど良く、

スープはあっさりとしていて

豚骨とは感じられないくらいのレベルだ。

でも、鼻に抜ける香りは、しっかりと豚の匂いがして

なんだか不思議な気分。


食べ進めていくと、豚骨特有の感じが出てくるので

青ネギのシャキシャキ感で、感覚をリセットする。


刻み肉を食べた瞬間、塩味が強すぎて

一瞬驚いたけど

スープや麺と合わせると、これがちょうど良くなるし

良いアクセントになっている。



美青や俺も含め、ついつい黙って食べ進める気持ちが

良くわかる。


美青は麵を食べ切ると、

黙ってもう一枚持っていた食券を出す。


店員が麺を入れると、

美青は紅生姜と白ごまを入れて食べ始めた。



俺も美青に倣って、白ごまを入れてみた。

スープの香りが良くなって、あっさり感が増した気がする。


俺は正直、紅生姜があまり得意ではないので、

少しつまんで、レンゲの中に置いてから

スープに浸して、麺と一緒に絡ませて食べる。



牛丼屋とかによくあるような、

強い刺激のやつじゃないので、食べやすい。


あっという間に、食べきってしまった。



なんだろう。

物足りない。



『はい』



美青は俺に、"替え玉"と書かれた食券を渡してきた。



『やっぱり。買っといてよかった。』



地元にいる時の美青には

どう考えても、叶わないらしい。

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