まるで恋物語のような、美少女との出会いとその後の話

 お久しぶりです。
 クソみたいな家族のクソみたいな面倒を2年半ほど見続けてから逃げた者です。全7話よろしければ人生の反面教師にどうぞ。

奇跡的出会い


 逃げるにあたり、引っ越し先を探した私は「もう絶対に猫を飼うんだクソ野郎じゃなくて猫を養うんだアテないけど」という強い意志を持って「ペット可物件契約(猫いないけど)・敷金増額分支払い済み(猫いないけど)・ペット飼う際に契約書に追加する念書もサイン(猫いないけど)」という地盤固めを済ませました。猫だけが足りない。
 さて、あとは猫なのですが、独身社会人が猫を飼うハードルの高さは重々理解していました。保護猫の里親に立候補しても門前払いだよなぁと。でもペットショップで買うというのもな…と気長に頑張ろうと思いながらお盆に引っ越しを済ませ、持っていた実家の鍵を姉の所に放置して前の住処を出て、それから約一週間後の事でした。

 新居の近くをブラブラ歩いていたら、突如「その子」は現れました。

1カメ
2カメ
3カメ

 とても小さい、ちょっと目がショボっているけどとても可愛い三毛ちゃんでした。

衝撃のあまり奇声をツイートするしかできなかった

 なんなの突然なんなのキミかわいいねどこ住み???? と、困惑したまま離れた位置でしゃがんで声をかけていたと思います。この時、三毛ちゃんの近くにはきょうだいと思われる子たちが数匹おり、これは絶対野良猫だよな…と思いました。ここ何年もめったに目にしてなかったのにこんな事ってある??? と思っていました。(あとで知るのですがたまたま目にしていなかっただけで、野良猫というのは普通にとても多かった)

 この日から、この近所に毎日通うようになりました。
 そりゃもう正直に「飼えるなら(あわよくば)飼いたい」という思いからです。
 保護猫の里親になれる可能性の低い(譲渡会とかでも門前払いされんじゃね? と思っていた)私が飼うには、この野良ちゃんと仲良くなって来て頂くのが一番「ありえる話」だという打算は勿論ありました。あとはこの子のきょうだいが本当に多く、これだけ家の近くに野良がいるのに別のところから貰えたとして保護猫を貰うというのも、店で買うというのも何か違うだろうと。私は一匹しか引き取る事が出来ないけど、取得選択をするのもエゴだよなぁとも思うけど、でも一匹は幸せにしてあげられる筈なんだと。とにかくひと目で「縁」のようなものを(勝手に)感じた三毛ちゃんに心を開いてもらえるまで通って、お迎えしたいという目標が出来たのでした。

 という訳で出勤前と帰宅時に近くを通り、会えたら声をかける生活が始まりました。触る事は許されるまでしないというルールを自分に課したので、本当に見ているだけです。ご飯はあげていません、というか前述しましたがきょうだいが本当に多く、三毛ちゃんだけにあげるというのが難しかった。でも「私は」飼う覚悟を持っている子にしかあげたらいけないと思っていたので(地域猫を近所の皆でお世話するというのは否定派じゃないです。実際お世話していた皆さんは掃除含めてしっかりされていたし、ファミリーじゃない野良ちゃんだけど去勢避妊した話を聞いたし、飼えない事情があるけど…という感じの方ばかりだった)
 サイズ的に三毛ちゃんと、もう一匹いた子が最後に生まれた子のようで、しかも三毛ちゃん以外が全員白黒配色オンリーというファミリー遺伝子強いなという状態だったため、一番小さくて唯一三毛だったこの子は会えた時にはとても目立っていました。恐らくこの子達に接していた私以外の人達の印象にも残りやすい子だったと思います。あと左サイドの毛先跳ねボブみたいな柄の入り方がかわいい。

この角度からだと完全ボブヘアー

 このファミリーは、毎朝同じ場所に集結する時間がありました。朝の散歩の人などがご飯をくれるようで、覚えていたみたいでした。
 で、嬉しくない偶然ですが私が当時しぬほど忙しく、朝の5時や6時には家を出ていたためちょうどその時間帯に居合わせる事が出来ました。ので更に30分早く出て、その場所で30分を溶かすのが日課になりました。それがなかったら心が死んでいたと思います。

もっといました。三毛の左隣のが恐らく末っ子仲間(豆大福と呼んでいた)

 あとは情報収集と自己主張をするため、見かけたご近所さんや餌やりの人に声をかけていきました。あの三毛ちゃん飼いたいんです! と伝えたら「いいんじゃない?」「そうしな!」など言って頂けたり、面識が出来たあとは私が三毛ちゃんと会えなかった日に帰ろうとしたら呼び戻されて「三毛来たから」って教えてくれたりする良い人達ばかりでした。正直先に言ったもん勝ち飼えたもん勝ちじゃいとか思っていましたすみません。
 とはいえ仲良くなる作戦はなかなか簡単にはいかず、でも三毛ちゃんはファミリーの中でも物怖じしない方だったので近付いては来てくれて、お触り許可は出るだろうかと指を出してみると爪(まだしまえない)で刺されて終わるという日が続きました。数回血を出した。

 そんな日々の進捗を呟き続けていたら、友人が「恋物語のようだ」といった事を言ってくれた事があり、このタイトルになっています。

 この辺りから新居には猫がいないのに猫のための必需品が届き始めました。キャリーと、評判の良い食器と爪切りと、ケージとトイレ。引っ越し前から考えて実行していたのは、キャットタワーを置くのが難しかったためベッドをミドルのロフトタイプにして「キャットタワー」と名付け、その下に背が高めのケージを入れる場所を確保して、地震が来ても私が守るからな…みたいな作りにした事(割と「地震が来る前提」で準備していたのでケージは日常的に使ってもらうつもりで、キャリーも両手が空くショルダーバッグタイプに。結果的にあとで本当にそれにして良かったと思いました)
 その頃から朝は少し冷え込むようになってきていて、そして三毛ちゃんが毎日くしゃみをしていたので作戦を急がねばと思ったからです。とはいえしぬほどいそがしく、今迎え入れても最初にすべき事がきちんと出来ない状態だったのでもどかしく感じながらも三毛ちゃんの所に通い続けました。その頃にはお母さんがどの子か(推測)を教えて貰えていたので、毎度お母さん(暫定)に「娘さんを下さい」と挨拶を欠かさないようにしていましたが伝わっていたのかは謎です。

2番目に物怖じしなかったお兄ちゃんと比較すると毛玉感すごい

 この辺で遂に初めて「身体を撫でる」事が実現しました。見た目よりもずっとガリガリで小さくて、ご飯はよく食べているようには見えたけど豆大福より成長が遅くて、寒いのかいつも丸く座っていて、早く保護したい多忙呪う。と思っていたある日、9月中旬過ぎあたりでご近所さんから「この辺で猫を保護している人が現れた」という噂を聞きました。
 やばい、連れていかれたら嫌だ、無理矢理決行するしかないのか? と、急いで動物病院を検討し直して、野良猫の捕まえ方を調べて(洗濯ネットも買った)、次の週末に狙いを定めました。

 その週のあたま、祝日の夕方の事。
 何でかよく分かりませんが、家にいた私はふと「ファミリーのとこ行ってこよう」と思い出かけました。朝集まっているところに夕方もよくいたのでそこへ。
 その日は三毛ちゃんはいなかったのですが、しゃがんで皆を眺めていたら後ろから声をかけられました。この辺の野良の事を聞かれたので知っている事を話していたら、その人が噂の「猫を保護している人」だと分かりました。
 内心ですごく色々な事を考えたと思います。でもその人が「あの小さい2匹(※三毛と豆大福)はすぐ保護したほうがいい」と言った瞬間に、喋っていました。

「あの私、あの三毛ちゃん飼いたいってずっと思っていて、仲良くなるために1ヶ月くらい通ってて、部屋もケージやキャリーはもう準備してて連れてく病院考えてて、一番近いA病院は近いんですけどちょっと評判が五分で少し離れてるけど行けなくはないB病院はとてもいい感じだと思っててC病院は通勤ルートにあるけど評判悪いから却下で!!!」

 みたいな感じだったはず。
 ここで保護されてしまったら、もう絶対にあの子に会えなくなってしまうと思ったからです。あんな可愛い子、里親募集したら即決まってしまう。その方が幸せかもしれないけど私だって諦めきれるか。

 と、滅茶苦茶必死だったのですが、想像に反してその人の反応は「じゃあ是非!」でした。聞き間違いかと思った。
 必死だったのと、滅茶苦茶準備をしていたのと、調べるべき事を調べていたのと、そういったもろもろで「信用出来る」と思ってくれたのだそうです。
 とはいえ三毛ちゃんはどうやらひどい猫風邪状態で、あと恐らく虫下しが必要な状態とのことで(だから小さかった)、私がまだあと少し忙しかった事もあり(あとど素人だし)暫くは保護人さんのお知り合いの預かり人さんのところで療養させて、風邪が落ち着いたらお届けします、という話になりました。夕方に思い立ってから、そんな展開になると思わなくて、連絡先を交換して別れたあとも何だか夢のようだなと思いながら意味も無くコンビニでアイスを買って帰ったら、保護人さんから「三毛と豆大福を保護しました」という連絡が入りました。本当に、あそこで話せなかったらもう会えなかった。
 あと脱走防止対策はあらかじめお願いしますねと連絡があったので、すぐさま玄関用ゲートをポチりました。

 約束の日までは有識者友人におすすめのカリカリを教えて貰ったり、玄関に脱走防止ゲートを付けたり、おもちゃを用意したりして、三毛ちゃんの事だけを糧にしぬほどいそがしい時期を乗り越えて、そして遂にその日が来ました。

この子が
このように

 療養を経て、もともと可愛かったのに更にどえらい美少女と化した三毛ちゃんが、我が家にやって来たのでした。

その後

 そこから約半年後が現在です。
 美少女なら体重3倍まで育って俺の膝でゴロゴロ言ってるよ。

(ガチで知人の猫飼い全員からも美少女認定されている)

 いやまぁ色々大変な事もあったんですが(動物病院の会計明細が18枚になってたり)(大病じゃないです野良出身あるある系のほう)、そもそもただ楽しいだけではないというのは覚悟のうえだったのと、そんな苦労もどうでもよくなるくらいに愛しか感じないので。仕事のストレスも吸えば消えるのは本当だった。姉の事ばかり考えて頭を悩ませていた時と比べると、この子の生活環境の事ばかり考えて頭を悩ませているのなんて比べるものですらない。

 知人に部屋を借りた頃の話をしたら本気度がすごいと笑われ驚かれたのですが、あのくらいの勢いがあったからこそNNN様が御縁を繋いでくれたのだと思っています(正直展開が出来すぎていてNNN様の力としか思えない)
 保護主さんもめちゃくちゃ柔軟な考えをしてくれる方で、療養中に付けた仮名を聞いたので「実は付けるならこれって名前(日参中も口にはしなかったけど脳内で勝手に呼んでた)があって…」と伝えたらその日からその名前で呼んでくれて、トライアルも「駄目か駄目じゃないかの判定期間」ではなく「この子とどうやっていくかの試行錯誤期間」という意味合いで。でもそんな方だった事も本当に奇跡だったと思います。

 最後に、まぁほぼ可能性ないですが、当時ちっちゃい毛玉だったこの子と接していた方がこれを見ているとしたら、めっちゃ元気に美少女しているので安心してくださいと言いたいです。狙ってた方がいたら申し訳ない、もううちの子です。大きな病気をせずに長生き出来るようお祈り頂ければ幸いです。かわいいおばあちゃん猫になるに違いない。

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