旅日記・ジパング見聞録2 ~ 安曇野・柳めぐり
江戸時代の臨済宗古月派の禅僧、仙厓(せんがい 1750-1837)の作品に、『堪忍柳画賛(かんにんやなぎがさん)』という墨書・墨画があります。
出典: 出光美術館HP
右に大きな「堪忍」の字。
中央には風になびく柳の絵。
左側には「気に入らぬ 風もあろうに 柳かな」の賛(ことば)。
人間生きていれば、辛いことや苦しいことがあるものです。そして「辛いこと・苦しいこと」とは多くの場合「自分の思い通りにならないこと」でもあります。
そう、生きていれば気に入らない風が吹いて来ることもありますが、そこは風に揺れる柳のように、選り好みすることなく、風が吹くまま、枝葉は揺れるまま、そして、心は堪忍。
人生で辛い時苦しい時に、そっと生きる力を与えてくれる作品です。
さて、わたしも実際に柳を見てみようと思い「安曇野 柳」と検索、いくつか見当をつけ、柳を求めて安曇野を巡ってみました。
初めに訪れたのは穂高柏原の久保田公園。柳の大木があるとのことですが…
北アルプスをバックにした大木で根元には沼もあり景観は良いのですが、枝が全体的に“パッ!”としていて、イメージしていた柳とはちょっと違うような…。
柳というとやはりあのだら~っとして、風にゆらゆら揺れる枝葉・枝葉…
でも、こういう柳もあるのですね。樹齢何年になるのでしょうか。
さて、次に訪れたのはJR大糸線の穂高駅。
ここのロータリーに「銀座の柳二世」といわれる柳があります(何故に二世なの?)。
それは…さかのぼること昭和7年、関東大震災復興記念として安曇野産のしだれ柳が東京に出荷され、その柳で銀座の柳並木が復活したのだそうです。その後再び昭和62年にも安曇野(旧穂高町)から東京都中央区に柳が100本寄贈され、その返礼として贈られた(里帰りした)のが、この柳。それ故「銀座の柳二世」なのだそうです。
見るからに枝がだら~っとしている風情が“柳”。根元には安曇野らしく道祖神もあります。
そして最後に訪れたのは豊科南穂高の安曇野わさび田湧水群公園。
湧き水の豊富なところで、解説によると北アルプスの伏流水が日量70万トンも湧き出ているとのこと(名水百選にも認定)。
公園の大部分は湧き水をたたえる池です。
そして池のほとりには、柳。水辺に柳は絵になります。
橋や東屋もあり、親水公園として整備されています。
カモもいました。
安曇野の柳を巡り、そして、改めて仙厓の賛(ことば)を想います。
気に入らぬ 風もあろうに 柳かな
風に揺れる柳に人生を観る仙厓。多くの画賛を残しましたが、そこには人生の苦楽を見つめる禅僧の眼差しが感じられます。
追伸:堪忍と幸不幸など、相田みつをの言葉や仏典からお話を引用し、人生に思いを巡らす記事はこちらから。
https://note.com/shozankomatsu/n/n3ca43b8820af
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