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株式相場のリズムを読み解く

 株式相場にはリズムがあります。ひとたび株価が上昇し始め数日間持続すると、その勢いが永遠に続くような錯覚に陥り、下落が始まると底が見えない不安に駆られます。しかし、バブルやリセッションのような極端な変動は稀であり、相場は一定のリズムで動いています。

 例えば、AIブームが起きている米国市場ですが、現在のS&P500のPERを見ると21倍と平時の16倍~21倍よりも若干高い状況です。ドットコムバブルバブルと呼ばれた1990年代のPERは1999年、2000年で25倍、ピーク時は48倍となっていた当時と比較すると現在の水準は割高ではありますが、バブルと呼ぶ水準ではないことがわかります。個別株で比較しても、2000年3月にシスコシステムズが131倍を記録していますが、NVIDIA社のPER(株価収益率)はピーク時で40倍であり、まだバブル期の60倍、100倍には程遠い水準です。また、リセッションによる急落も、直近では2020年のコロナショック(暴落率32.8%)や2008年のリーマンショック(暴落率48.1%)などが記憶にありますが、30%以上の下落は数えるほどしか記録されていません。

 しかし、実は高値から5~10%程度の下落は、年間で2~3回程度発生する一般的な現象です。直近の例で挙げると、2024年3月28日~4月19日までに5.91%の下落、2023年7月2日~10月27日に10.92%の下落、2022年8月16日~10月13日に19.28%の下落を記録しています。これらの傾向を見てくると、株式相場にも1年の中でもリズムがあることがわかります。一般に、これはアノマリーとも呼ばれています。

 11月~2月の節分までは株価が上昇しやすい傾向があり、いわゆる「サンタクロースラリー」もこの時期に起こります。一方、3月~4月の中旬は確定申告シーズンと重なり、株価が下落しやすい傾向になります。その後、確定申告が終わり、6月のサマーバケーションシーズンまでは株価は回復しますが、7月頃にピークを迎え、8月頃までは「夏休み相場」として停滞することが多く、9月からはアメリカの新学期になりますが、なぜか大きく下落し10月まで続くことが多々あります。

 このように、株式相場には年間を通してある程度のリズムが存在します。ただし、毎年の気候が異なるように、株式相場もその年のテーマ(大統領選、AI、コロナなど)によって変動します。それでも、カレンダーに沿った大まかなリズムを把握しておくことは、相場の動きを予測する上で一つのよりどころになると思います。

 ここで述べたのはアメリカ株式市場全体のリズムであり、個別株には企業固有の動きがあります。したがって、個別株への投資を検討する際は、企業・セクターごとのリズムも把握したほうがよいと思います。


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