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犬とあるく

犬にはさんぽが必要だ。

バモスと毎日、朝晩2回さんぽをしています。
バモスは基本的に家の中で排泄をしない子になったので(シェルターでは、犬舎内にさんざんやりちらかしていましたが、やっぱり自分の住処が決まるとちゃんとできるみたいです)、寒くても雨でもちょっとだけでも外に連れ出す必要があります。ただ、さんぽは排泄のためだけに行くわけではありません。

バモスの体型は、前足はわりと立派でたくましいのですが、逆に後ろ足はじゃっかん弱め。座った時には後ろ足はちょこんとしていて内股になります。(それはそれでチャームポイントなのですが)バモスのきょうだい犬も股関節など弱い血筋なようで、形成不全や関節炎などの子もいたようです。実際バモスもうちに来てすぐのころ、後ろの右足を時々あげてケンケンするようになり、病院にいったところパテラ(膝蓋骨脱臼)だと診断されました。パテラは小型犬に多い膝の病気で、膝にある膝蓋骨という軟骨がずれてしまい、膝の曲げ伸ばしに支障をきたすというもの。すぐにでも手術を、という風にいわれましたが、そうは言っても、すぐに「はい、お願いします」とは言えず、しばらくバモスの後ろ右足の様子をうかがいながら、さんぽさせていました。ひどいときには少し凸凹した地面を歩いたり、上り坂や段差を乗り越えた時など、日になんども脱臼していた様子でした。おすわりさせて膝を伸ばせば、カクンと元に戻るので、ケンケンしているのを見かけると、落ち着いて座らせて、少し休んでまた歩く、そんな調子で、いつ手術をするべきか考えながら不安を抱える日々でした。だけど、しばらくそんなさんぽをつづけていると、ここ最近ではデコボコの田んぼのあぜ道を歩いても、僕には少ししんどいくらいの山道を歩いても、ほぼ足をあげることがなくなりました。治る病気ではないようなので、完全に安心はできないのですが、できるだけ歩いていたのがよかったのかなと思います。

バモスは保護犬シェルター時代「さんぽのできないワンコ」として、ボランティアさんたちの手を焼かせていました。シェルターの中では元気いっぱいに走り回っているバモスでしたが、さんぽの時間に一歩外に連れ出すと、なんだか外の世界が恐いらしく、少し歩いては止まってあたりをキョロキョロ、さんぽをしているボランティアさんが歩くのを即しても、また少し歩いて止まってしまい、ついには進めなくなってしまうワンコでした。でも、わが家にも慣れ、周りの環境に慣れた今では、さんぽ中時々立ち止まることはあるものの、シェルターにいた頃よりもリラックスして長い間歩けるようになりました。シェルターでは、さんぽに行くことができなくても、シェルター内のドッグランで他の犬たちと走り回る事もできるので、運動不足になることはありません。だけどやっぱり毎日しっかり歩くことで、足を鍛えることができたのかなと思っています。実際、後ろ足の太ももあたりが少し太くなった気がしています。

でも犬のさんぽは「排泄」「運動」といった生理的、身体的な理由だけで必要なわけではありません。「排泄」はトレーニングすれば家の中のトイレですることもできるようになりますし、「運動」だって家の中でも庭でも、遊んだり走らせたりして運動不足の解消は可能です。それでもやっぱり犬を外に連れ出して、さんぽすることが必要なワケ、よく言われることですが、それは、飼い主とのコミュニケーションです。大好きな飼い主さんと二人で、外の世界を一緒に歩く。群れでの狩りに見立てていると言う人もいます。信頼できるリーダーと連れ立って出かけるのは、ワンコにとって、とても誇らしく楽しい時間なのだそうです。つまりバモスといっしょにさんぽをするということは、僕がバモスをパートナーと認め、バモスが僕をリーダーだと認めるための大切な時間だと思っています。

最後に、バモスとの2回のさんぽのうち、夜の散歩は仕事から帰宅後になるので、時間はバラバラで遅め、日が暮れてからということが多いですが、朝はだいたい同じ時間に起きて、同じ時間にでかけ、ほぼ同じ時間に家に帰ってきます。そうすると、さんぽの途中でであう人たちも、みんなだいたい同じ時間に同じところを歩いています。とても良い姿勢でシャキシャキ歩きながら、大きなペットボトルを時には2〜3本持って、近所に湧いている名水を汲みに行っているであろう女性。二人でならんで散歩する老夫婦。この方たちはすれ違いで道の脇に避けて伏せているバモスに、いつも「おりこうね〜」とか「ちゃんと躾をされてますね〜」とか褒めてくださるのですが、ちがうんですバモスがビビって身を伏せているだけなんです。
その他、道の脇の畑で早朝から作物のお手入れをされている方、家と同じようにワンコのさんぽをしている人などなど。その人たちがむこうの方で、いつもと同じ歩いている姿をみかけると、これが僕の住んでいる地域の、いつもの風景だなと感じます。そしてそこで気がつきます。自分とバモスも"朝の風景の一部"になっているということに。

さんぽをするということは、犬にも飼い主にも必要なことなんだと、あらためて感じています。

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