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フワちゃんの虜

休日の前夜はいつだってとびっきりに優雅なモーニングをしようと意気込んで寝るものの、いつもどおり今日も目が覚めると時計は12:00。幸いにも洗濯と食器洗いは昨日のうちに済ませていたので、惰性でテレビをつける。たまたま流れていたのは全日本大学女子駅伝。"菅野的なんとなくつけたらやっていて、かつそのまま見るスポーツランキング”でも指折りの駅伝(ちなみに栄えある1位は女子卓球である)。

惰性で見始めたテレビをなんとなく惰性で見続けていると、この駅伝にはどうやら日本陸上会きってのスーパーヒロインが出走するらしい。そんな彼女は5区を走る「フワセイラ」という拓殖大学の選手で、まだレースは1区が始まったばかりだというのに、中継では度々5区のランナーたちが待機する第4中継所の彼女の様子を映し出す。度重なる彼女の映像の結果、顔は覚えたのだが、繰り返される「フワセイラ」の文字が僕の頭の中ではどうも変換できない。惰性で見始めたのにも関わらず、もやもやするのもなんだか悔しいので「フワセイラ」とスマホで入力し、ぐぐってみると「不破聖衣来」の文字列が跳ね返ってくる。不破聖衣来….僕が生まれてから22年間目にした、耳にした名前の中でぶっちぎりで1番カッコいい….。きっとこの名前に匹敵する名前は『聖闘士星矢』か『刃牙』くらいにしか存在し得ないだろう。

そしてテレビ中継を見続けると、彼女は昨年の同大会で1年生ながら、9.2キロのエース区間を走り、区間記録を1分14秒塗り替えるという、とんでもない偉業を成し遂げたらしい。とともに、10000mのベストタイムも日本歴代3位の記録を保持している。たしかにこれだけ聞くと、圧倒的に大学生離れしたランナーであることが見て(聞いて)取れる。

しかし、そんな彼女も今シーズンはアキレス腱周囲の炎症に加えて股関節痛に貧血症状と不調のシーズンのようだ。競技に復帰したのも9月で、レース前の監督のコメントも「大会1週間前の練習ではムラがありすぎて全くどうなるか読めない」とのこと。ただ中継は「今年は何人抜けるのか」といった具合に注目を集める。これを書いている僕も惰性で見始めたのにも関わらず、いつの間にか注目してしまっているタチだ。

レース開始から約1時間半が経過、ついにエース区間の5区だ。不破聖衣来にたすきが回る。このときの拓殖大学の順位は7位。たしかに彼女の走りは素人目から見てもフォームがずば抜けて美しいことが容易にわかる。だが、そんな美しい走り姿と高まる中継の期待とは裏腹にレース序盤、順位をひとつ下げてしまう。「本当に調子が悪いんだろうな」と思いながら、途中の5キロ地点の通過タイムは5区全体の3番目のタイム。昨年あるいは本来の彼女の実力からはたしかに不調ではあるものの、決して悪いタイムではないことを知る。実況席の高橋尚子の「ここから後半一気にペースを上げると思いますよ」という言葉通り、7キロ地点を通過したあたりからギアチェンジ。ここからは彼女本来の異次元の走りで、終わってみれば区間で唯一30分を切る快走で区間賞。チーム順位も4位まで押し上げた。

惰性で見始めたこの駅伝も気づいたら2時間半見続け、あろうことか、昨年の同大会の不破聖衣来の走りをyoutubeで見て、そこから今年の怪我の詳細を調べ、挙句の果てに今、彼女をテーマにnoteまで書いている。そんな僕の週末。

そう、僕は今、フワちゃんの虜。

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