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みんなにあるはじめての藤井風記念日。 わたしの場合

はじめましては『木綿のハンカチーフ』

2020年10月14日の夜、わたしの左手はスマホをぎゅーっと握りしめていた。
「これは…すごいものに…出会ってしまったんじゃ…」

寝る前のリラックスした一人時間。たしか、youtubeで当時話題になっていた宮本浩次さんのカバー曲を聴いたあとだったと記憶している。おすすめに『木綿のハンカチーフ』というタイトルの動画が出てきた。子どもの頃すでに懐メロだった曲で、テレビ番組で知り、耳に残っていた曲だった。

動画の中で歌っているのは、なにやら彫の深い顔をした細面の男性。年齢は…不詳。最近の若者って感じじゃないな。
でもなんだか、目が離せない。

ピアノの弾き語りか、すごいな、なんかすごい。
え、またおすすめが出てきた、見てみよ。
え、なんか、すごくない?
え、さっきと同じ人?  顔、ちがくない?
え、なんか、なんか、なんか・・・・・・・・

そうこうしているうちに、2時間が経過。寝なくちゃ。あともう1曲。やっぱりあともう少し…。
出会った初日に、もうずぶずぶの沼だった。

翌日、ものすごい勢いで「藤井風」を検索。配信動画がある!と見てみると、高校ジャージで、う☆こ座りで、もじゃもじゃヘアなのにすごい色気がほとばしってる姿で、しゃべるようにピアノ弾いて、歌ってて。
長い手足をきれいに折りたたんで、収まりよくしゃがんで、それで床に置いたピアノに手が届くってどーゆーことよ。
岡山弁と英語のミックスってどーゆーことよ。

なんじゃこりゃーーーーーと、衝撃でカオス。一人じゃ抱えきれなくなって子の元に走り、配信の動画を見せた。

「見て見て、なんか、スゴイ人がいるの !!w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w !!  」
「ほんとだ、天才だね。スゴイのわかるよ」
「え、まだちゃんと見てないでしょ。なんでわかるの?」
「こんな格好って、天才しかしないんだよ。Lもそうじゃん」
「ハッ、そうだ、デスノートのLね。ほんとだ、天才だ」

う☆こ座り=天才、の図式がストンと腑に落ち、藤井風は天才と受け入れられた瞬間だった。(この流れもカオス)

このあと、武道館ライブがあることも知ったのだけれど、時すでに遅し。締め切りが過ぎていて、配信ライブならまだかろうじて申し込める状態。でも「配信ライブって何?いやー、ライブの醍醐味って全身で音にまみれることでしょ」と躊躇。結局申し込んで、めちゃくちゃに心が動いて、このnoteに初めての投稿をすることに繋がった。

あぁ、HEHNの衝撃よ…

すでにデビューを果たしてアルバムが発売されていることを知ったので、即購入したHEHN。この頃はまだ初回盤も手に入ったのでそちらを選択。

アルバムが届く前にyoutubeでも聴けたので、夕飯を作りながら1曲再生してみたのだけれど、これはね、人参や玉ねぎを刻みながらバックグランドミュージックとして聴く代物ではないでしょ。ちゃんと場を整えて、一音一音ちゃんと聴くべき音楽だと、すぐさま画面を閉じた。

CDが届くと、すぐに聴きたい衝動を抑えながら夜を待ち、部屋にこもって電気を消して、イヤホンもして、PLAYボタンを押した。
ウソも装飾もなくそのままに言うと、わたしは口をぽかんと開けたまま、耳に届く音を聴き続けていた。惚けていた。とてもだらしのない顔をしていたと思う。

こんなに心地の良い声が、メロディがあったなんて知らない。きいてない。ひたすら気持ちよくて、衝撃で体が動かない。
開いた口は、ほんとにふさがらない。
動画で見たものとは完成度が違う。本気の音。
ああ、画面の中の人はこんなにも才能にあふれた、素晴らしい歌を歌う人だったんだ。
ああ、なんてこと。
(それに時々聞こえる吐息のような色っぺーやつは何なのよ)

それから毎晩、わたしは明かりを消した部屋でアルバムを聴き続けた。2日目も、3日目も初日と同じように体は動かない。口も閉じられない。
音楽でこんな、ザクっと足元からさらわれるように、全部を持っていかれることなんて初めてだった。

HEHNをBGMとして聴けるようになるのは、それから半年以上あとのことになる。

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