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島の野外フェス

当時、私の住んでいた島の北側の海岸は、

集落から少し離れているが、

陽が傾いたころ耳を澄ますと、

遠くから笛の音が聞こえてくる。

1年でいちばんのお祭りが始まる音。

この日が近づくにつれて、島はどこかソワソワ。

ソーラーとは島の言葉で旧盆を意味する。

日本の各地でお盆のお祭りはあるけれど、

島の盆祭りはひと味違う。

盆踊りというやつを頭に思い浮かべて欲しい。

広いグラウンドみたいなところの真ん中にやぐらが立ち、

その上で太鼓をならす人がいて、

やぐらの周りを人々が音に合わせて踊る。

それを縮小したやつを、島では家ごとに行う。

一軒一軒の庭をまわって踊る。

縁側の戸をぜんぶ外すと真ん中に仏壇が庭から見えるようになっている。

島の家と庭の作りは、この旧盆のために作られていると言ってもいい。

踊る人、三線弾く人、笛を吹く人、歌う人、

揃いの着物を着た15名くらいの楽団をニムチャーと呼び、

一軒につき2、30分ほど。

その家の人がもてなす島酒や料理をつまみながら。

決まった曲で踊った後は、
その家の人が庭に出てお祝いの踊りを踊る。

曲は家によって様々で、

その都度ニムチャーが演奏を変えて合わせてくれる。

それをぜんぶの家をまわり、朝までやる。
ニムチャーは三日三晩眠らない。

もっと細かく色々あるけど、基本これが島のお盆。

ご先祖様おかえりなさい、どうぞゆっくりしていってくださいという儀式のような。

はじめは遠巻きに見学していたのだけど、

知り合いのお姉さんが自分の家の番になったとき誘ってくれて、

私もニムチャーにまじって、踊っている島の小さな子供たちと一緒に踊った。

もちろん子供たちの方がプロ。近くにいる5歳児をお手本に踊る私(笑)。

参加者が多いほど喜ばれるのだ。

ロックフェスでいうサークルみたいな?笑

ラストはカチャーシーでみんな乱れ踊る。

これはモッシュか?

その間にニムチャーは次の家に移動する。

たのしい!

こんな手厚くもてなされたらご先祖様もさぞ嬉しいだろうな。

島という小さなコミュニティだけど、

だからこそしっかりみんながひとつになって伝統を守る。

形だけとか、利益の有無とか損得勘定なんて一切ない伝統行事があるって、

ものすごく魅力的で感動する。

ぜひ旧盆のときに島に来てみてほしい!!

つづく

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