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THE ONE PIECEに高まる期待:なぜ今、再アニメ化なのか?

『ONE PIECE』が、『THE ONE PIECE』として再アニメ化されるとの告知がありました。制作はWIT STUDIO、配信はNetflix「など」だそうです。他のプラットフォームでも配信されるのでしょうか。

ONE PIECEといえば、1997年に連載が開始した長寿漫画。アニメも今年、25周年を迎えます。知らない方から見れば、それだけ人気のあるアニメがなぜ再アニメ化となるのか、疑問に思うようです。

しかし、多くのONE PIECE読者は心のどこかで「アニメ作り直してくれないかな・・・」と思っていたはず。この記事ではなぜ今ONE PIECEが再アニメ化されるのかについて、過去のジャンプ作品や関連作品を振り返りながら解説していきたいと思います。

かつてジャンプアニメの宿命だった「原作追いつき」問題

漫画よりアニメの方が、ずっと展開が早い

ONE PIECEのアニメが始まったのは25年前。その頃も今も、週刊連載で人気を博した漫画がアニメ作品になることは一般的です。アニメは大抵、週に一回30分の作品となることが通例。

しかしジャンプアニメに限らず、週刊連載とアニメを同時に進行していくと、必ずアニメが原作に追いついてしまい、原作のストックがなくなってしまう、という問題が生じていました。週刊連載の漫画は一話がおおよそ17~18ページ程度、普通に読むと3,4分、多めに見積もっても5分程度で読める長さです。一方で30分のアニメはOP、EDとCMを除くと、本編は概ね20分程度。単純な比較でも、アニメの方が4倍は早いスピードで展開が進んでしまうのです。

ONE PIECEのアニメも例外ではありません。アニメが開始したのは連載開始のおよそ2年後の1999年ですが、程なくして原作の展開に追いついてしまいました。

演出による引き伸ばしやオリジナル展開は不評なことが多い

そうなった場合、アニメはどのように対応するのか?一つは、バトル演出などを極端に引き伸ばしたり回想シーンなどを多用することで、一話に収める内容をなるべく少なくすること。もう一つはアニメオリジナルのストーリーを追加することです。

しかし、これらは視聴者からはあまり好まれないことは、残念ながら歴史が証明しています。前者は、作品のテンポを悪くし少年漫画特有のスピード感を失わせてしまいます。後者は、作者の意図に沿わない展開となってしまうことが多々あり、場合によっては作品のクオリティそのものの低下を招いてしまいます。特にアニメオリジナルの展開は、原作の熱心なファンであればあるほど、受け入れられないことが多いといえます。

逆にいうと、これらの不利を負いながらも25年の長きにわたって放映を続けているONE PIECEのアニメは、スタッフの努力に支えられた本当に稀有な作品なのです(この記事も、決して今のアニメを否定する意図で書いたつもりはありません)。

25年の間に生まれた解決策

この問題は長きにわたって、漫画のアニメ化を苦しめてきました。結果的に、人気作品でありながら結末までアニメ化されることがなかった漫画が無数に存在します。

しかし、近年はこの問題は根本的な解決をみています。それはズバリ「追いつく前に中断して、原作が進んだら再びアニメ化する」という方法です。

現在はこの方法が、主に深夜枠でアニメ化されることで成り立っています。深夜アニメは、一クールが概ね13話、二クール連続で26話となっており、これらを一区切りとして一旦終了。そして一年後や二年後、原作のストックが溜まった頃に再びアニメ化をする。

この方法を取ることによって、アニメが原作に追いついてしまうことを防ぐようになりました。結果的に作品のスピード感が守られ、原作準拠の内容となることで、多くのアニメのクオリティが上がる結果となりました。

私が知っている範囲では、単発の深夜アニメを除いて最初にこの手法に辿り着いたのは、2006年に放送開始した『銀魂』が最初であるように思います。銀魂は作品自体がなんでもありの側面を持っていたこともあり、初めてこの問題に真正面から立ち向かい(色んな意味で)、幾度かの中断を挟んでアニメ化が続けられていました。最後には劇場版も作られることで、アニメ作品としての成功が収められています。

また、2006年は後述する『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメが公開された年でもあります。このアニメによって深夜アニメの認知度と地位が大きく向上したことが、ジャンプ人気作品も深夜枠でアニメ化、という選択肢を取るようになった下地となっているのではないでしょうか。

近年のアニメの進化が、ONE PIECEに適用される

この「原作追いつき」問題こそが、ONE PIECEファンがアニメの作り直しを密かに願っていた根本的な要因であることは間違いないでしょう。しかし、それに加えて、この25年で日本のアニメもまた様々な面で進化を遂げています。それらに進化がONE PIECEに適用されることもまた、ファンにとっては嬉しい悲鳴なのです。

アニメ独自の解釈、演出

前述の通り、アニメのオリジナル展開は原作ファンに忌避される傾向があります。一方で、アニメ独自の解釈や、映像作品でしかできない演出は、ハマればむしろ原作ファンにも喜ばれるものになります。例えば、同じジャンプアニメであり現在放送中の『呪術廻戦』は、登場キャラクターの感情の動き精神性を表現するために様々な演出が取り入れられており、数多くの原作ファンを唸らせています。

アニメ独自の解釈や演出にここまで力が入れられるようになったのは、やはり前述した『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場によるところが大きいでしょう。ライトノベルを原作としたこのアニメは、時系列を無視した独自の放映順序、映像でしかできない演出の数々や、文化祭のライブシーンなどを通じて、高い人気を博しました。

この作品は今でも多くのアニメ作品に影響を与えていると言えます。

進化した映像技術

前項が作品の解釈やキャラクターの精神面を反映したものであるのに対し、こちらはキャラクターの「動き」に関する進化です。アニメ化といっても、もはやただキャラクターが動き回るだけではなく、漫画には到底真似できないアクションを取り入れるアニメがここ数年で増えています。

この25年の間にこの「動き」の面で最も成功を納めた作品の一つは、なんといってもWIT STUDIOが製作した2013年放映開始の『進撃の巨人』でしょう。ワイヤーを使って空中を縦横無尽に飛び回る「立体機動装置」の演出は、今もなお映像革新の一つとして語られることが多くあります。

また、2019年に放映開始された『鬼滅の刃』も、高い映像技術を誇る作品です。『進撃の巨人』にも通づることですが、これらの作品は特に連載初期の頃は作画技術が未完成だったこともあり、アニメ化による迫力の映像が漫画の人気を加速させた側面もあります。鬼滅の刃に特有の剣劇、特にダイナミックなカメラアングルの使い方は、視聴者に驚きを与える演出であり、今も続編は高い期待を持たれている作品です。

最新の原作事情、作者の意向の反映

近年、いくつかの作品は、漫画が発表されてしばらくの年月が経ってから、再アニメ化がされています。その間に作中世界や、現実で起こった出来事がアニメに反映されることもあります。

近年の代表例が、先日アニメの一期が完結した『るろうに剣心』です。こちらは原作が完結してから20年以上経ってもファンが存在する人気作であり、今年その再アニメ化がされた作品でもあります(現在は月刊誌でその続編が連載中。こちらも面白いです)。このアニメ化に伴い、後に発表された物語開始の前日譚が合間に挟み込まれて映像化されたり、作者本人が「作り直したい」と語っていた展開が時代を超えてリメイクされていたりと、原作ファンが見ても嬉しい要素が散りばめられることとなりました。

劇場版『呪術廻戦0』も、これに近いものがありました。これは本編の連載前の時間軸の作品の映画化なのですが(正確には、この読み切り作品が人気を得たために、これを下地にした連載がスタートした、という順序です)、本編に登場した必殺技が逆輸入的に劇場版に取り入れられたり、アニメ本編では未登場のキャラクターが劇場版に登場する、といったサプライズ展開も見られています。

例えば、ONE PIECEの冒頭は海賊王ゴールド・ロジャーの処刑(本編開始の20年前)から幕を開けますが、その処刑には後から登場する人気キャラクターが多数立ち会っていたことが後年わかっています。これらのキャラクターの若き日の姿が映像化されるだけでも、多くのファンにとっては嬉しい演出となるのです。

劇場版キャラクターの登場はあるのか?

ONE PIECE独自に期待される演出として、劇場版のキャラクター登場の是非もあげられるでしょう。

ONE PIECEは2009年より、原作者である尾田栄一郎本人が深く製作に関わる劇場版映画(FILMシリーズ)を発表し、人気を博しています。昨年、Adoの楽曲も相まって高い人気を得た『ONE PIECE FILM RED』もこのシリーズの一つ。このシリーズに登場したキャラクターがアニメに登場するのか?という期待も持てそうです。

少なくとも、FILMシリーズの第一作『STRONG WORLD』のヴィランである「金獅子のシキ」は、既に原作にも登場している以上ほぼ確定的でしょう。原作でもその名前や姿は既にたびたび登場しているため、今回のアニメ化に際してなんらかの形で映像化されるはずです。もしかしたら前述のロジャーの処刑の前後に、その姿が描かれるのかもしれません。

また、『RED』で人気キャラとなった「ウタ」登場の可能性もあります。彼女がルフィのオリジンに関わる存在であることは、尾田栄一郎本人も認めるところ。原作一話目の完成度の高さ、その後の展開との矛盾を考えると直接の登場は難しそうですが、、、。ルフィの冒険が始まったのは、ウタが作中世界でライブ配信を始めたのとほぼ同時期です。東の海の航海の合間に彼女の歌が流れる、、、といった演出が挟まる可能性は十分あり得ます。

他にも、ゼット、グラン・テゾーロ、ダグラス・バレットと、尾田栄一郎が生み出した劇場版の人気キャラクターは他にもいます。本編に直接絡むことはなくても、彼らの存在を匂わせるようなクスリとした演出は、ファンにとっても楽しめるものになるのではないでしょうか。

アニメとアニソンの相乗効果

近年のアニメは、その主題歌、いわゆるアニソンとも切っても切れない関係にあります。アニメの人気がアニソンの人気を押し上げる、逆にアニソンの人気がアニメの人気に火をつける。相互の関わりが作品の人気をさらに高めていくことも起こっています。

近年のジャンプアニメを彩るアニソンの数々

近年のジャンプアニメは、その主題歌が人気となるケースが多々あります。特に、作品を深く理解し独自の解釈を楽曲に込めた魅力的な作品が多い印象です。

近年の人気アーティストとジャンプアニメだけでも、、、
米津玄師(ヒロアカ、チェンソーマン)、King Gnu(呪術廻戦)、Official髭男dism(スパイファミリー)、キタニタツヤ(BLEACH、呪術廻戦)、Eve(呪術廻戦、ヒロアカ、チェンソーマン)、YOASOBI(【推しの子】)、LiSA(鬼滅の刃、ヒロアカ)、星野源(スパイファミリー)、Ado(スパイファミリー、ONE PIECE FILM RED)
などでしょうか。WIT STUDIO繋がりだと『進撃の巨人』のLinked Horizonも有名どころでしょう。

現在放映中のONE PIECEのアニメも、OPはSEKAI NO OWARIが手掛ける『最高到達点』という作品です。

『THE ONE PIECE』ズバリ、誰が主題歌を歌う?

25年前のルフィの船出を彩った『ウィーアー!』が再び採用されるのも胸が暑くなる展開なのですが。やはり現代版にアップデートするとなると、今をときめくアーティストが起用される可能性が高いでしょう。

そうなると、このタイミングで必然的に期待されるのは再びAdo、というかウタではないでしょうか。彼女がTHE ONE PIECEの主題歌を彩る可能性です。FILM REDはもちろん、WIT STUDIOが制作を手がける放送中のアニメ『SPYxFAMILY』の二期のオープニングもAdoが歌っています。

原作連載25周年を記念する作品で生まれたウタが、アニメ25周年を記念する作品の主題歌を再び飾る、しかも新曲で、、、という展開はいかがでしょう。これを期待するのは私だけではないはず。

最後に:なぜ今、再アニメ化なのか?

思った以上に長文となってしまいました。最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

最後に、なぜ今ONE PIECEが再びアニメ化されるのか?

それは、この25年で進化した技術、演出を持って、ONE PIECEアニメが製作されることを多くの人が望んでいるからでしょう。

しかし、それだけではありません。昨年の劇場版や、Netflixでの実写化と次シーズン製作決定といった、近年のメディアミックスの成功も要因となっているでしょう。

そして何より、もうアニメが原作に追いつくことはない、すなわち「原作が終わりに近づいている」ことも、大きな要因の一つです。原作が最終章に突入したからこそ、再び原作の第一話から、今度はフルスピードでアニメ化される準備が整ったと言えるのです。そう考えると、嬉しい反面、少し物悲しい気もします。

まあ、原作10巻をアニメ26話に落とし込んで毎年放送したとしても、終わりまで10年はかかる計算になりますが、、、笑。

まだまだルフィの旅は終わらない。

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