そっと、そっと。そのまま (ショートショート王様)

とある若い男は、目の前の景色に困惑している。

若い男のいる場所は全て真っ白で作られている狭い部屋。
扉や窓もなく、電気もないが明るい。

この異様風景を前にこれは夢だろうと思い込み二度寝をかます。

数分経つが一向に寝れる気がしない。

爆音で聞こえる心音に違和感を感じ、目を覚ます。
若い男はようやく現状の危機に気づいてしまった。

人はある程度の雑音が無いと集中力が低下したり、リラックスができなくなる。

若い男はそんな雑学を思い出すと、余計にこの部屋の気色の悪さを実感する。


若い男がようやくこの静けさに慣れた頃、後ろに違和感を感じた。

悪寒が走り、慌てて振り返るともう1人細身の男が静かに立っていた。

細身の男はジェスチャーで、手を前に出し若い男をなだめながら口パクで何かを話している

若い男は相手の口元に集中すると

「ショート、ショート…王様…?」

若い男が口パクを声に出したその刹那。
若い男の真下の床に突然穴が開き、男は姿を消した。


ぐしゃり


穴の空いた床は静かに元の姿に戻った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?