「生前整理」がいかに大切か

 日々様々な方の「現場」を拝見していると、いかに生前整理が重要かを毎回改めて認識しています。それは、そのモノの本当の価値を知っているのは本人だけなので本人以外がその価値を見極めるのは非常に難しく、結果ご遺族の方に不利益になることばかりということです(もちろん本人が気づいていない価値の物も多々ありますが、割合的には圧倒的に少ないです)。またそのことによって親族間で不信感が生まれ、一族の争族に発展したり、かけがえのない絆が失われたりすることもあります。それこそ取り返しのつかない、お金では決して買えない大切なモノを失います。

 そして知識と、適切なタイミングで行動さえすればこれらのリスクはほぼ防ぐことができます。世の中にバラ色な「成功事例」の情報は溢れていますが、それは実は個別の商品やサービスへの誘導でしかなかったりする場合も多くあります。そして知識の無い者がそれを判断することは不可能に近いのが現実です。「失敗事例」を共有することが最も効率的なのですが、なかなか「本当の失敗事例」は共有されません。それはプライバシーの問題や、羞恥心の問題もありますが、本人が本当の問題を理解していない場合もあります。また解決したとしても人生のうちにそんなに起こることでもないためフィードバックされることも少ないのです。

 何をもって「効果的な対策」になるか、というのはその人の考え方や経済状態、親族環境などによって変わってくるため、ある人の場合有効なものが、別の方にとってはリスクが増大するだけの場合も見受けられます。だからこそ、各専門家や士業の知恵を集約して、あらゆる視点から事前にリスクを潰していくことが有効だと考えています。成功パターンは見えづらい(パターン化し辛い)のですが、失敗パターンはある程度見えてきました。ほんの一例ですが、かなりの価値のある骨董を持っていた、とか一部の親族だけが介護の面倒を見ていた、とか高額な価値の不動産があるのに比較して現金が少ない、等々。よくあるこれらの場合、一般的なリスクは事前対策で防げます。
 不動産に比べ動産(骨董や貴金属含む)は、額は小さい場合が多いものの、結果ご遺族に精神的な負担をかけ争いの元になる場合があります。動産も立派な財産ですので相続税の課税対象になります。さらに適正な評価も人により異なるため誤解も多く、感情の差が出やすくなります。結果修正申告となったり税務調査で指摘されたりするとストレスが一気に高まります。理解した上で対応していれば良いのですが、たいていの場合後手後手に回り、労力ばかりかかってしまうのが現実です。

 「遺品」になる前に、適切な「モノ(動産・不動産問わず)の行き先」を決めて次世代に渡していくことが、モノにとっても、ご遺族にとっても負担を軽減し、そしてそれは自分自身に返ってきます。そしてそれらの労力は、生前にしておくことで防げることも多々あります。きちんとした生前整理をするのとしないのでは、想像以上の経済的メリットをもたらすばかりか、かけがえのない家族の絆を壊さない意味でも、非常に大きな意味を持つと考えています。

 元気で聡明な今、まず自分がどのようなモノを持っているのかを改めて再確認しておくことが重要です。何れにしても財産目録として誰かが作成しなければなりませんし、自分自身でも知らないモノの価値を発見できるかもしれません。

【小島】

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