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水は低地で澱みます

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澱んだ街の小学生でした
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【水は低地で澱みます 4】Cちゃんのチマチョゴリ

 「こんにちは」の挨拶に苦々しそうな目線を向けてくる大人。その大人の横で、チマチョゴリを着たCちゃんは少し困った笑顔で小さく手を振ってくれる。

 日曜日になると、大人たちと連れ立って歩くCちゃんに遭遇することがしばしばあった。在日の多い地区ではあったが、チマチョゴリを着てる子供を見かけるのは日曜日のCちゃん一行ぐらいだ。

 小学校1~2年、Cちゃんと同じクラスだった。そのころ私はまだ日本語が下

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【水は低地で澱みます 3】Aくんちの会社

 小学生の当時住んでいた地区で一番の金持ちといえば、Aくんの家だった。3階建ての小さな社屋。なんの業種だったのか当時は知っていたのだろうけど、全く記憶に残っていない。

 ともかくも金持ちの子といえばAくんで、Aくんちには誰も逆らえない、警察でさえも。そんな話であった。今思えば「たかだか十人ちょっとの会社オーナー一族にそんな権力あるかい」と突っ込みたくなるのだが、当時は子供同士のみならず親たちの間

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【水は低地で澱みます 2】鼻の下の思い出

 ワラかイグサか。小学校低学年のとき、同じクラスだったKちゃんの鼻の下には乾燥した植物の短い茎のようなものがたくさん貼りついていた。接着剤となっていたのは鼻水だろう。

 同じクラスの口の悪い男子たちは「K、きっしょ~」とよく罵っていた。当時は「キモい」という言い方はまだなく「きっしょ~」が主流だったのだ。

 不思議なことに、その男子たちですらKちゃんの鼻の下については言及しなかった。

 彼女

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【水は低地で澱みます 1】Oちゃんの思い出

 小学生の4年か5年のころか。人とつるまないで喧嘩ばかりしていた私にも2人ほど仲の良い女の子がいて、その一人がOちゃんだった。
 Oちゃんはデブではないが大人のように身体が大きく、たまに「ジャンボ」「デカ女」と男子にからかわれていたものの、明るいさっぱりした性格だったため特にいじめられることもなく、体積の割には目立たなかった。
 初めてブラジャーをしてきたときにセンセーションを教室内に巻き起こした

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