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あらすじ/アビスの手術(オペ)【ジャンププラス原作大賞応募作品】
ある激しい雨の夜。14歳の少年ハシは、どの医者も匙を投げた病を治せるという、アビスの家の門を叩く。アビスは美しい女性だった。
患者はハシの同級生。アビスの治療は、患者の体を舐めて、憑りついている悪魔を浮かび上がらせ、十字架状のメスで切除するというもの。
アビスの腕前を見たハシは、埋葬された母親を蘇らせてほしいと頼む。死者の蘇生はできないと、アビスは断った。だが、ハシはアビスの家に住み込みねばる。
アビスの手術(オペ)【ジャンププラス原作大賞応募作品】
雨が激しく木や岩を叩きつける。昼でさえ薄暗い森の中、ましてとっくに日は落ちている。数歩先も見通せない暗闇を、ランプを下げて走ってくる者がいた。荒く吐き出された息が白くにごり、ぼんやりした光と混じる。
「ごめんください! ごめんください!」
おとぎ話の魔女の家かと見まがう一軒家の戸を、勢いよく叩く。訪問者は雨除けのコートを着て、フードを目深にかぶっていた。
扉が開く。目線を下げると、幼児のように小柄
たとえば愛【ジャンププラス原作大賞応募作品】あらすじ
山名由香の彼氏、北村宗介は目が見えない。ある日、由香の元に悪魔が現れ「由香の視力を宗介に移すことができる」という。そうすれば宗介は目が見えるようになるが、由香は視力を失う。宗介はつっぱねる。
しかし宗介が、駅のホームから転落して怪我を負う。それをきっかけに由香は結婚して、宗介に視力を渡すことを決意した。
目が見えなくなった由香は、宗介と結婚。しかしある日、宗介の浮気が発覚する。後日、宗介は何者か
たとえば愛【ジャンププラス原作大賞応募作品】
たとえば愛とは、何だと思いますか?
こんな話がある。
あるえらい菩薩様が、ひとりの目の見えない男に会った。男は「何とかして目が見えるようになりたい」と言った。菩薩様は男の願いを叶えるため、自分の目玉をやることにした。それはそれは地獄のような苦しみに耐え、菩薩様は目玉を取り出した。
するとそれを見た男は「何だこんな汚いもの」と言い、目玉を捨ててしまった。菩薩様は怒りを覚えたという。
この話は、大
ツィゴイネルワイゼン 【ジャンププラス原作大賞応募作品】あらすじ
とあるクラシックコンサートの会場。楽団の中から三人が演奏すると、突如会場中の人間が錯乱して、殺し合いを始めた。
音による殺人、「音殺(おんさつ)」事件。
テロとして捜査される中、新人刑事の渚日和(ひより)はドイツから来た女性、晴香・メンデルスゾーンと行動を共にすることに。晴香は、付き添いの女性・響の手話通訳を通して話す。彼女は耳が聞こえなかった。
晴香によれば、事件の背後にはテロ組織「コンツ
ツィゴイネルワイゼン 【ジャンププラス原作大賞応募作品】(第一話)
「 ドイツから来た少女 」
かつて、天才的な演奏で観客を虜にしたヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニ。人間離れした超絶技巧から繰り出される音楽で、失神する者が相次いだという。彼を知る者は、後にこう言った。「悪魔に魂を売った男」と…。
パガニーニがこの世を去って、およそ180年。現代の東京。
とあるコンサートホールで今宵、クラシックの演奏会が開かれている。曲は今まさに、フィナーレを迎えていた。
ツィゴイネルワイゼン 【ジャンププラス原作大賞応募作品】(第二話)
「 マイ・ベートーヴェン(前編) 」
日本初の「音による殺人=音殺」事件が起きてから一週間。新人刑事の渚日和(なぎさ ひより)は、なんとか頼み込んで、警視庁の捜査会議を立ったままだが聴くことができた。徐々にあの日、コンサートホールで起こったことが明らかになってきていた。
ある特殊な方法で楽器を演奏すると、聴いた者の精神を錯乱させ、無差別に人を襲うようにしてしまうという。当時コンサートホールはほ
ツィゴイネルワイゼン 【ジャンププラス原作大賞応募作品】(第三話)
「 マイ・ベートーヴェン(後編) 」
間もなく開演の時間だ。会場には、続々と観客が集まってきている。日和は、新海教授の姿がないか周囲を警戒していた。
すると、響が爪を噛んで不安そうにしているのを発見する。
「堀切川さん、大丈夫ですか?」
「ああ、すみません。平気です」
「気分が悪いようなら、ここは俺にまかせて…」
「いえ、本当に大丈夫です。ただ…」
響はうつむいた。
「この前、ホテルの廊下でテ