対抗形党宣言(1)対抗形党とは何か

第一章 対抗形党とは何か
 対抗形党とは、相手が振り飛車なら居飛車に、居飛車なら振り飛車にしようとする態度をとることを言う。(この立場が単なる相振りが嫌いな振り飛車党といかに異なるかについては過去にツイートで熱弁したのでここでは触れない。)対抗形党にとっての死活問題は、相手の戦法を見極めてから自分の戦法を決めるというポイントであり、いかにこの後出しジャンケンを成功させるかである。したがって、対抗形党の最序盤は、居飛車でも振り飛車でも損にならない手を指して相手に先に形を決めさせる待ちの技術が必要になるのである。本記事及びこれに続く諸記事には、初手から数手目までの最序盤において対抗形に誘導するための手法と考え方について解説する。もっとも、私自身これらの技術については研究中の身であり、これが最善の解説であると確信しているわけではないが…


 ただし、これらの手法を用いても、100%対抗形党に誘導することはできない。こちらが多少の損には目をつむってでも対抗形に誘導しようとしている以上、相手がそれ以上の損に目をつむって縦の将棋に誘導してこようとすればこちらの誘導は失敗するのが道理である。例えば、一度振ってからこちらが居飛車を宣言したのを見て居飛車に振り戻してくるような相手の対策は事実上不可能である。この時に重要になるのは、自分はどれだけの損に目をつむれるのかということであり、棋理に反しない範囲で誘導するということである。もし相手がこの範囲を超えて縦の将棋に誘導しようとしてくる場合、「たとえ縦の将棋になってしまっても、あんなめちゃくちゃな駒組上手くいくはずがない、正しく指せば勝てる」と自信をもって対局に臨めるようにしておく必要がある。精神論のようになってしまったが、どこまで対抗形にこだわるかという線引きなくしてこの誘導は不可能である。いうなればこの記事はどこまで妥協可能かということに関する私の見解でもあるのである。(まれに私の将棋を正統派だと評する人がいるが、ある意味当然である。理外の民を対抗形に誘導することはできない。)


 対抗形党は、振り飛車を指すときに角道を空けるか否か、居飛車を指すときに角道を空けるか否かによって、4種類に分類することができる。どちらの場合も角道を空ける、あるいは閉じる場合には比較的楽であるが、居飛車の場合は開けたいが振り飛車なら閉じたい(あるいはその逆)と望む場合より難易度が高くなる。特に先手番においては厳しいものがあろう。この点も後に紹介する。本記事は六章構成である(予定)。第二章において、後手番での指し方について紹介する。第三章では、先手番における▲7六歩△3四歩に対する有力な3手目についていくつかの候補手を検討する。第4章では、現時点ではそれほど有力であるとは考えられていないが、もしかしたら鉱脈が眠っているかもしれない候補手について検討する。第五章では、▲7六歩以外の初手から対抗形に誘導する方法を紹介する。第六章では、陽動振り飛車、筋違い角、嬉野流など、対抗形党としては対策が必要な奇襲戦法の対策を考えていく。

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