今週の小話#12


フライ返しとは何か

 先日、千切りキャベツを溶き卵と混ぜて焼くだけの手抜きお好み焼きモドキみたいなものを作っていた時のことである。私はたまにこれを作るのだが、工程上途中で「フライパンを振ってモノを宙で半回転させてひっくり返すアレ」を行う。初めは出来なかったのだが、最近では覚束ないながらも失敗することはほぼなくなった。

 ここでふと考える。私はこの「フライパンを振ってモノを宙で半回転させてひっくり返すアレ」のことを「フライ返し」だといつからか認識をしていた。しかし、「フライ返し」と検索すると、調理中の具材を混ぜたりひっくり返したりするための調理器具しか出てこない。思えば確かにフライ返しとはあれのことだ。じゃあ行為としてのフライ返しという言葉はないのだろうか。いくらか調べたが分からなかった。

 結論が出ないまま料理が終わったので、調べるのをやめて食事の準備に移った。そのとき、脳内である楽曲がループしていることに私は気づいた。この曲なんだったっけ…

 な~んか~い変わってーやるってーほら誓ったんだよ♪

 NICO Touches the Walls の「天地ガエシ」じゃねえか!

 脳内で勝手に「〇〇返し」繋がりで音楽をかけていたんだなぁと思うとなんだか不思議な気分になった。

馬鹿について

 先日、あるグループLINEで「小賢しく生きるよりも馬鹿なやつの方が夢は叶う」みたいなメッセージが回ってきた。思わずうっわぁと口につく。きっしょいのう。良い年した大人がよくもまぁ恥ずかしげもなくそんなこと言えるね。とまぁそんな感じに毒づきたくもなるが、彼はそういう言説が好きなだけで別に悪い人ではない。割と世話になっているし、どちらかと言えば好感を持っている。むしろここでの問題は、彼が自分を馬鹿の側に引き付けて語っているということだ。

 私は彼と話していて、こいつ馬鹿だなと思ったことはない。学歴などは知らないが、高卒でも旧帝卒でも別に驚かない。彼のパーソナリティの深いところまで知っているわけではないが、おそらく、彼は馬鹿ではない。

 ではなぜ彼はこのような言説を好むのだろうか。可能性は二つ考えられる。第一に、自分を賢い側に置くよりも馬鹿の側に置いた方が謙虚な感じがして好まれる風潮があるということだ。まぁ私賢いですみたいな感じで振舞われたら鼻に突くだろう。第二に、馬鹿という言葉自体がポジティブな意味を獲得しつつあるのだろう。愚かだという意味より、一つのことに向かって真っすぐだというニュアンスの方が強まっているのかもしれない。「愚直」とかも同様の例だろう。

 彼がそのような言説を好むのは彼の勝手である。世間がそれを良しとするのも仕方のないことだ。ただ、そうであっても、私は自分を馬鹿に引き付けたくはない。小賢しいと揶揄されようが、私は知に誠実でありたいと思った。

お兄ちゃんはシスコンというやつではないのだろうか

 今年で中学生になった妹からLINEが来た。髪を切ったから見ろというのである。かわいいことを言うじゃないか。送られてきた写真はマスク着用+顔の右半分見切れという酷いものだったが、そもそも見るまでもなく可愛いのは明らかなので特に問題はない。

妹「お兄ちゃんが俺の妹可愛いだろって言えちゃうくらい可愛くなります!」
私「これまでもずっと言い続けてるんですが…」
妹「友達とかに自慢できるレベルのってことよ!」
私「してるが?」
妹「まじ?」
私「可愛くなりすぎたら逆に人に見せたくなくなるまであるかもしれん」
妹「それは困る」
私「じゃあお前の写真を知人に見せびらかしてほしいの…?」
妹「それはなんか変態みたいで嫌だなぁ」

 とまぁこんな感じで兄妹の他愛もない会話をしていたら、妹が突然ぶっこんで来た。

妹「お兄ちゃんはシスコンというやつではないのだろうか」

 こいつは何をいまさら当然のことを言っているんだという気持ちになったので、年の離れた妹を持つ兄貴はすべからくシスコンになると教えてあげた。

妹「私はブラコンだからお互い様だね!」

 なんてかわいいことを言うのか。アニメか漫画のキャラか何かかお前は。髪切った話なんかよりこのやり取りの方がよっぽど自慢したいぞ。妹に尋ねると、どうぞどうぞやっちゃってくだせえとのこと。理解がある妹で助かる。兄馬鹿と揶揄されようが、私は可愛い妹を見せびらかしたいと思った。





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