第八期指す将順位戦五回戦に向けて

 表題のやきそばさん戦がいよいよ明日に迫った。相変わらず準備が万全とは言い難いが、きっと明日の僕が何とかしてくれることであろう。

 …とここまで書いたところで本稿の執筆は止まってしまっていた。ここ数日、体は問題なく動くけど万全といえないといった軽微な身体的不調が続発しており、やや参り気味、やる気激低モードに突入していたのである。来週の動画マジでヤバイ。終わる気がせん。とまぁそんな感じで本稿はお蔵になるはずだったのだが…。

 という訳で書くことになった。本稿で何を書こうと思っていたのかというと、やきそば戦に向けての意気込みではない。五回戦に向けての意気込みである。過去5期の五回戦を私はどう戦ったのかを振り返っていきたい。

第三期 vs雪風さん戦

 第三期は、開幕四連勝という今期と同じ状況で五回戦を迎えた。今期と違うのは、初参加の期だったという点である。すなわち、仲間たちに支えられて昇級の喜びを味わった経験もなければ、前期に開幕五連敗して絶望の淵に立たされた経験も持っていなかったのである。

 将棋は私の天守閣美濃vs雪風さんの四間飛車であった。ただ、当時の私は天守閣をよく指していたわけではない。これは私が調子に乗っていたというよりは、当時の私の指す順に対する向き合い方が今とは違ったという感じである。勝ちに徹するというよりは、指す順を通して芸域を広げたいみたいな気持ちがあったのである。11回戦(不戦勝が一回あったので実質10回戦)で2~8筋まで全ての筋に飛車を振るチャレンジなども行っていた。まぁそんなスタイルだったこと自体、開幕四連勝という余裕が私にそうさせた可能性はある。

 結果から言えば、この対局は悲惨な結果を迎えることになった。私の良いところと悪いところがいかんなく発揮された名局(今の私ならばこれは迷局ではないといえる気がする)である。中盤で形勢を損ねた私は、端攻めを逆用して粘り倒し、遂に逆転に成功したのだ。そして最終盤、局面ははっきり勝ちになった。雪風さんが1五に居た馬を切ってきた(確か歩と刺し違えていたと思う)のだが、同金同竜と進んだ時に相手玉に詰みがあることを私は読み切っていたのである。なので馬を切ってきた時点で勝ちを確信し、気持ちが切れたのだ。これが敗着だった。同金と取った局面で、まさかの1五角打。馬をほぼタダ捨てしたうえで同じところに生角を打ち直すというこれ以上ない土下座をされた結果、私の思考回路は完全に破壊され、文字通り一手も読めない状態になってしまったのである。これが雪風マジック、メダパニ角と名高い1五角である。

 私は正確には一手しか読めない状況になっていた。候補手が一つしか浮かばず、複数浮かばない。そしてその候補手に対する相手の応手が一手も見えない。あれから五年たつが、今でもあの時と同じ経験はしたことがない。私は指だけをたよりに相手玉に迫った。実はこのとき持ち駒に角が入った結果敵玉に詰みが生じており、一手しか読めない私は実は正確にその順を選んでいたのである。しかし、脳が破壊されている状況ではそこまでが限界であった。あと一手、頭金さえ打てば勝ちという状況で、私はそれを逃した。それまで思考回路が破壊されていたのに正確に指せていた方がおかしいので、これが正常である。結局、そのまま私は負けてしまうのだった。開幕四連勝と最高のスタートを切った第三期は、結局6勝5敗という凡庸な成績で終えることになる。

 私島ノ葉の、記念すべき指す順一敗目であった。

第四期 vsアカサビさん戦

 第四期は開幕二連敗と前期とは打って変わってスタートダッシュに失敗した。が、後から思えばここで負けた二人(緑茶さんとほりさん)はその期に昇級しているので、ある意味仕方なかったのかもしれない。三回戦四回戦と連勝して星を五分に戻し、中盤の難所として迎えたのが五回戦であった。相手のアカサビさんは、今となっては私にとってはかけがえのない存在である。その第一の理由は、アカサビさんは第三期からB3に参加した同期であり、今期第八期まで全ての期において私と同じクラスに所属している唯一の人物だということである。一方で、当時はまだ指す順に参加して二期目であり、私にとってそのような存在はまだまだ沢山いた。

 この五回戦の将棋こそが、私にとって氏が重要である第二の理由である。この将棋は私のノーマル三間飛車対アカサビさんの急戦であった。当時からアカサビさんはずっと対振り急戦の大家である。私は序盤であっさり形勢を損ね、不利に陥った。しかしそこからが島ノ葉の本領発揮である。またもやクソ粘りを発揮し、またもや端の動きを逆用し、上部脱出のルートを作り混戦模様に持ち込んだのである。そこから上手く攻め合いにでて、いくつか間違えて貰い勝ちになったのである。アカサビ玉に詰みがあることを発見したのだ。この時点ですでに150手を越えている。やっと長い苦しみを抜けられる、これで勝ちだ。さて、詰みを最終確認しよう。おや、よく見たら思ったより簡単に詰んでいる。金を残して竜寄りから入る方が簡単か。それポチッとな。

 …あれ?これ玉寄って逃れてない?あれ?あー指された。あれ?いや、つまない…。つまない!

 血の気が引くとはこのことである。安堵は一瞬で絶望へと塗り替わり、心臓の鼓動だけがうるさく響いた。…負けにした。

 しかし、ここで気持ちが切れなかったのは、前年に雪風さん戦を経験していたからである。このときのことはよく覚えている。気持ちを切らすな!考えろ!いや俺はまだ考えることができる、思考を止めるな!と必死に自分を鼓舞した。鼓舞に必死であまり局面については読めていなかったかもしれないが、それくらいは許してほしい。

 その後完全に入玉されてしまい、自玉はガタガタと必敗形であった。が、アカサビさんが寄せ損なった一瞬のスキを突いて詰ましきることに成功した。実に209手150分の大激戦であり、これは私にとって指す順の最長手数・時間の対局である。指す順における私の目標の一つは、これを越える長さの将棋を指すことである。いつかアカサビさんと300手の将棋を指すんだ。

第五期 vsボロネーゼさん戦

 第五期は開幕戦を制し、3勝1敗で五回戦を迎えた。相手は同じく3-1のボロネーゼさんである。彼は居飛車党で、対振りは持久戦を志向する。ここでちょっと変化をつけてみようと思い四間飛車を採用した。二回戦で三間飛車を採用してのののさんにボコボコにされたのも影響したであろう。そしてそれが良くなかった。

 私は完全に穴熊に決め打っていたのだが、実際に採用されたのはミレニアムであった。完全に準備不足である。そしてその結果は悲惨なものだった。全く勝負どころもなく、一方的に蹂躙され、チャンスの兆しのようなものもないままに完敗した。過去経験したことがないレベルの完全敗北であった。これは二年前の雪風戦とはまた違うショックであり、かなりヘコんだのを覚えている。

 あまりにも完全な敗北は悔しささえ感じることを許さず、その対局について思い出を語ることさえ不可能にする。この敗北感の深さこそが、私にとって光に満ちた第五期の最大の闇であり、指す順の魅力だともいえるかもしれない。

第六期 vsラギィさん戦

 第六期の五回戦も、開幕二連敗からの二連勝で星を五分に戻して迎えることになった。相手はラギィさん。彼が僕にとってどれだけ特別な人物なのかはこちらの記事を読んでほしい。彼はひま研、こえ研のメンバーであり、私が指す順において交友関係を築く上で貴重なロールモデルとなった方なのである。そんなラギィさんと同じクラスで戦うことができるというだけで燃え上がったものだ。

 そうして迎えた対局はと言えば、これはまぁ何とも不甲斐ないものであった。適当に仕掛けた結果銀損し、そのまま負け。ボロさん戦のような歴史的大敗という訳でもなく、単に指して単に負け。しっかり悔しく、ただただ負けただけの対局だった。なにせこの期は僕が口説いてラギィさんに指す順に復帰してもらったところで、お互いに並々ならぬ気持ちで対局に臨んだはずなのである。それが手も足も出ないという意味での見どころさえない凡庸な敗局にしてしまったのは本当に情けない。

 ちなみに彼は本稿で紹介する人物の中で唯一、現在ネット上での活動を私が観測できていない人物である。私は彼とリアルで会ったこともあり、そういう人との関係性がほぼ切れているというのは非常に悲しい。いつか帰ってきてくれないだろうか。

 あなたは今どこで何をしていますか?
 この盤の向こう側にいますか?

第七期 vsわわわさん戦

 前期は開幕四連敗というかつてない最低の展開で五回戦を迎えた。相手は同じく四連敗中のわわわさんで、この対局を負けたら降級だろうな、と覚悟していた。この対局に際し私が何を感じていたのかはこちらを読んでほしい。

 ここまでこの記事はとくに過去の棋譜を振り返ったりせずに書いてきたのだが、本局に関しては負けたということ以外どんな将棋だったのか全く思い出せない。多分居飛車を持ったんだよな…?やはり、風呂から上がった時点で既に本局は終わっていたのではないだろうか。そう言っちゃうと失礼か。

第八期 vsやきそばさん戦

 今期は開幕四連勝と、初参加の第三期と同じ展開。だがそうなるとやきそばマジックに脳を破壊されて一手詰めを逃して負けることになってしまう。そうでなくとも五回戦はここまで1勝4敗と大きく負け越している。必勝を期したいところだが、かといって張り切りすぎるとラギィさん戦のように空回りしてしまいそうだ。

 こうして並べてみると、五回戦は星取が悪いという以上に、私の節目となるような特別な対局が集中していることに気づいた。そういう場面で負けているのは実に僕らしい。そして今期はやきそばさん戦だ。生半可な勝負にはなるまい。今期の山場になるだろう。

 歴史を背負うほどに歩みを進めるのは辛くなり、身に過ぎた重荷が私を苦しめる。それでも、立ち止まるくらいならば立ち向かわなければならない。毎年感じるこの気持ちは、今の私にとっては指す順でしか味わえないものだ。これを手放すわけにはいかない。ついつい熱くなってしまうのは暑夏のせいだろうか。最高の勝負を、などと言ってしまうのは私には似合わないだろう。きっともう少し斜に構えたくらいでちょうどいい。

 良い将棋を指したいと思います。第8期指す将順位戦五回戦やきそばさん戦は8/6(日)13:00〜です。

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