新タイトル戦の名前考えてみた

 先日伊藤新叡王が誕生したこともあり、叡王戦に注目が集まっていることであろう。最も新しいこのタイトル戦もすでに10期目を迎え、将棋ファンの間に定着してきた感もある。とはいえ、考えてみればよく分からない棋戦名ではないだろうか。「叡王」なんて言葉は存在しないし、字面の上でも特に将棋に関係がない。存在しない言葉としては棋王戦、特に将棋に関係ない言葉としては王座戦・王位戦があるが、両方を満たすのは叡王戦のみである。叡王のみならず、この時候補に挙がったものはいずれもそうであった。

 という訳で本稿は、伝統をしっかりと抑えたうえで、ありそうな棋戦名を考えてみようというものである。要するに与太話だ。四つ考えてみたので順に紹介しよう。

①鬼宗戦
 将棋界では伝統的に、卓越した実力を持つ者を鬼に例えてきた。代表的な所では、「鬼宗看」と呼ばれた七世名人三代伊藤宗看や、「鬼宗英」とよばれた九世名人大橋宗英などが上げられるだろう。この伝統に則った棋戦が鬼宗戦である。タイトル保持者は〇〇鬼宗と名乗っても良いが、ここは伝統に則って鬼宗〇と名乗るべきだろう。本名から一字とるのがかっこいいと思う。鬼宗聡とか鬼宗匠みたいな。囲碁でいう本因坊みたいなものである。かっこよくない?欠点は少しバカっぽいところだろうか。

②十三段戦
 将棋界では伝統的に、卓越した実力を持つ者を実力十三段と称えてきた。代表的な所では、江戸時代最強の名人といわれる大橋宗英や棋聖天野宗歩などが上げられるだろう。この伝統に則った棋戦が十三段戦である。かつては九段戦・十段戦というタイトルがあったこともあり、そういう意味でも伝統にそっている。やはりすこしバカっぽい気がするのが欠点だろうか。

③名匠戦
 時代はやや下って、昭和初期には過去の実力者を名匠と呼ぶ向きが生まれた。大崎熊雄『将棋名匠逸話と対局』(1927)や飯塚勘一郎『将棋名匠の面影』(1937)などがその代表例である。これはそのままタイトル戦の名前になっても違和感ないだろう。本命。唯一の気がかりはかつて名将戦という棋戦が実際に行われていたことであろうか。

④棋仙戦
 ちょっとアプローチを変えてみる。棋聖がいるなら棋仙もいるべきなんじゃないか?杜甫(詩聖)⇔李白(詩仙)の対照は伝統的に広く受けいれられている。なら棋聖⇔棋仙という対照があってしかるべきであろう。というかなんでこの棋戦ないんだろう。棋王戦なんて変な造語を作るくらいなら棋仙戦のほうが伝統に即してて良くないか…?唯一の欠点は「きせんせん」という響きが間抜けなことであろうか。

 以上四案考えてみた。まぁ考えたからって何だという話なのだが、ただの遊びである。皆さんも考えてみてはいかがだろうか。

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