今週の小話#17


道端のネギ

 先日、私は太秦を散歩していた。別に近所という訳でもないのだが、この辺りは好きなのでたまに来る。そんな見慣れた街に、異物を発見したのが始まりであった。道にネギが落ちている。

 ネギ。よくある白い長ネギである。厳密に言えばそれは道端に落ちていたわけではない。歩道沿いの民家の壁に立てかけられていた。……いや何これ?

 考えられる第一の仮説は、落とし物という可能性である。この近くにはマツモトと業務スーパーがあり、ネギを買って帰る人は多そうだ。ネギは長くてバランスが悪いので買い物バッグに挿していたらうっかり落としてしまった…。ありそうな話である。

 だが、思い出してほしい。ネギは落ちていたのではない。民家の壁に立てかけられていたのである。これは明らかに、意図的にこの場所にネギを配置した人物がいることを意味している。もちろん落とした人と立てかけた人が別人という可能性もあるが、落ちているネギを拾って近くの民家の壁に立てかける人がいるだろうか。やはり考えにくい。

 そこで考えられる第二の仮説は、何らかの風習という可能性である。例えば、初孫が生まれたら自宅の外周にネギを立てかけておくみたいな。……聞いたことないな。これでも京都に住んで10年目、そんな面白習俗があればさすがに取りこぼしていないと思う。そうであってほしい。

 結局、いくら考えても真相は分からなかった。まぁ道にネギが落ちているくらいきっとよくある話なのだろう。帰ったらニコ動で初音ミクの動画でも見ようかな。そんなことを考えるころには、私はネギへの興味を失っていた。


子どもの声


 先日散歩していると、小学生の群れの帰宅ロードにぶつかってしまった。まぁこれは仕方がない。小学生に混ざって大の大人が歩くのは少し恥ずかしいがまぁ許容範囲だろう。そんなことを考えていると、後方で小学生同士の会話が聞こえてきた。中学年くらいと思しき男の子が女子に話しかけている。

「なぁなぁ、俺の家と〇×の家、どっちが楽しかった?」
「ええー?○×の家はちょっと寄っただけやからなぁ…」

 かわいい。無限に妄想の余地がある。幼馴染か?男の子は女子のことが好きなのか?それは女子の側は分かっているのか?考え出すとあまりにも想像の余地が広い。女子の返答も思わせぶりなんや…。適当にかわす女子の返答に対して男の子がやたら食い下がるのも可愛かった。見た感じ男の子の方が年少っぽかったので、お姉さん格なんだと思うとテンションが上がる。

 小学生の群れを離れて帰路につく。交差点の信号待ちで、隣に立った女子高生二人組の会話が聞こえてきた。

「あさってからゴールデンウィークやんね」
「え、じゃあ明日が最後やん。しばらく会えんね」

 高校生のこういう感覚の何とみずみずしいことか。20代も後半になれば友達なんて年単位で会えないのが当たり前である。数日会えないだけでそれを大きなポイントだと捉える精神…。余りにも眩しい。

 家の近くまで帰ってきて、近所のスーパーで買い物をしていた時のことである。幼稚園生くらいであろう男の子の声が聞こえてきた。

 ……めちゃくちゃ綺麗な標準語しゃべるやん!この東京もんめ!お前ほんまに関西の民か?移住勢か?私はネイティブじゃないが、流石に10年住めば相手が関西人かどうか位は分かるぞ。どうなんやワレェ!けど俺は覚えてるぞ!スコットランドの小学校で先生ら大人はクソ訛りだったけど児童らはそこそこ綺麗な英語をしゃべってたたことを!やっぱり子供の方が標準語適性が高いんか?おお??それともやっぱり移民かワレェ!!!

 …とはまぁ口には出さない。子供の声は耳に入る。街を歩くのはやはり良いものだ。思い思いの青春を過ごして、その先に幸せを掴んでほしい。その傍観者にもなれないだろうが、そういう未来を掴める社会を作る大人でありたいとは思えた。


男子校

 私の妹は中学生なのだが、どうやらクソみたいに成績が悪いらしい。このままでは高校に行けるかどうかも怪しいのだとか。なんとも大問題である。先日実家に帰った際、それとなく妹に聞いてみた。

島ノ葉「お前行きたい高校とかないの?」

妹「〇×高校に行きたい!」

ノ「……」

ノ「そこ男子校だよ」

妹「えっ」

 こいつやっぱダメかもしれん。

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