B級5組再設置案について

 気が早いにもほどがあるが、来期以降の指す将順位戦について私見を述べておきたい。誰もが明らかに認めているところであろうが、指す将順位戦界隈のレートは明らかにインフレしている。この問題は深刻である。私が指す将順位戦に初参加した第三期は、B3がR400~700、B2が700~1100で募集していたと記憶している。それが現在ではB3の半数以上がR1000を越えているようだ。これの何が問題なのかと言えば、潜在的な参加者のプールがどんどん縮小してしまうということである。かつてはR400ならB3にも居場所があったが、今やもうないだろう。低レート者の参加ハードルがどんどん上がっていく一方で、高段者はそれに見合うくらい増えていくとは思われない。それはすなわち、参加者候補のプールが縮小する一方であることを意味している。指す順参加者のレートインフレは、こういう意味で由々しき事態である。毎年上の方のクラスで人数不足に悩まされるのは当然と言えよう。

 この問題を解決する一案は、各クラスの適正レートを決め、今後それを変えないという方法である。継続参加者のレートがどれだけインフレしようとも、新規参加者の入り口さえ固定しておけばプールの縮小という問題は発生しない。だが、この案には大きな問題があるだろう。この案を実行すれば、新規参加者にとって厳しい棋戦になってしまうことによって新規参加者の減少を招いてしまうかもしれない。なにより、既に減少したプールの回復につながらない。

 ここで私が提案するのは、B5の再設置である。現B4以上はそのままに、その下に新規参加者12名で1クラス作ることを目指してはどうだろうか。四月の参加者募集に先立って2月か3月あたりに、「B5を作りたいのでR400未満(数字は何でもよい)の方を募集しています。12名以上集まれば新規にクラスを立ち上げます」と宣言して募集をかけるのである。この提案の利点は、もし仮に12名集まらなくても、「すいません集まらなかったのでB5は作りませんが、B4に参加するということで如何でしょう?」とオファーを切り替えることが出来るということである。つまり、参加者が増えることはあっても損はほぼ何もない。

 これは、9クラス制に移行しようという提案ではない。もちろん一時的にはそうなるだろうが、それをそのまま固定化することは目指さなくても良い。どこかピンチになったタイミングで、参加者の少ない2クラスを合併させるという選択肢を常に持てるようにするということこそがこの提案の最大のメリットである。もしB5があれば、S級とA1を合併するという選択肢を相当に取りやすいだろう。これは9クラス制から8クラス制への移行を意味するが、その翌年に再びB5設置を目指して募集をかければよい。いわばストックとしてB5を確保することで、参加者候補プールの下限を設定し、インフレの問題に対応しようという提案である。

 このような制度設計は、各クラスの適正レートを固定化することなしにインフレの問題を解決する。下限としてのB5のみ適正レートを固定化しておけば、残りのクラスは継続参加者に合わせて変動させても良い。立ち行かなくなったクラスから合併していけば、レート上の潜在的参加者プールの規模を維持したまま8~9クラス制を維持することができる。

 唯一の問題点は、B5を募集したとして12名集まるかは疑わしいということである。だが、この問題は欠点というよりは解決するべき課題である。もしインフレが今後も進行するならば、現行の秩序をいつまでも維持しえないのは明らかである。プールの下限を広げる努力なしに本棋戦の維持は不可能である以上、このミッションはどれだけ困難であろうとも挑戦しなければならない課題である。ここから逃げれば、指す順に未来はない。

 また、本稿は、新たにB5を設置することを提案したが、同じことはB4に本稿でB5に与えた意味を与え直すことで同じ効果を持ちうる。だが、私はより積極的にクラスの増設を推したい。守りに入ったら発展はない。参加者数を減らさないように、などという発想になったらこれもまた指す順に未来はない。

 いうまでもなく、本稿で展開した議論は単なる思い付きであり深い考察に裏打ちされているわけではない。だが、参加者減少の問題とインフレの問題を合わせて考える視座は(それらが全く関係ないことを論証できないかぎり)、必要である。インフレはプールの下限が上昇していく過程であるはずなので、それに抗して下限を固定する努力が必要である。本稿のB5再設置提案はその一案であった。より良い提案があるのならばそれに勝るものは無い。

 

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