最近見たアニメについて2023夏


政宗くんのリベンジR

 一期からかなり時間が空いたような気がしたが無事2期まで実現して本当に良かった。とはいえ正直一期の内容もちゃんとは覚えていなかったので、思い出しながら見ていく感じになった。
 結局ミュリエルはなんのために出てきたキャラだったのかはよく分からない。可愛いから良いということにしておこう。吉乃の動きは最後まで、というか最後らへんがよく分からなかったのも少し引っかかる。おそらく1クールに綺麗に収めるために駆け足になってしまっていたのだろう。それにしてはよくまとまっていたのかもしれない。
 最後にワガママmirror heartが流れたのはしてやられた感があった。オタクは2期の最終回で一期のOPが流れるの好きなんでしょ?と馬鹿にされている気もしたが本当に好きなので仕方がない。ところで私の妹はアニメを見るときにOPを飛ばす人間なのだが、彼女はこういう喜びを得る機会を自ら放棄しているのだ。会うたびにOPも見ろと主張しているのだが受け入れてくれない。もったいないと思うんだけどなぁ。
 今期のOPで言えば、サビに入るところでママがケーキを持ってくるシーンがやけに躍動的なのが面白かった。サビなんて一番映えるところになんでママなんだ…。それでいて動きはちゃんとサビクオリティだし…。必見なのかもしれない。
 それにしても結局リベンジとは程遠い結末な気もする。が、そんなことは最初から分かりきっていたのでまぁ良いだろう。それにしてもやはり政宗が安達垣を好きになってからはストーリーの性格が大きく変わってしまったような印象もある。この手の話の難しいところか。

彼女、お借りしますseason3

 1期2期とずっと守勢にまわっていた和也の反転攻勢といったところであろうか。以前とは完全に体が入れ替わり、和也が強手を指すようになった。映画作りという明確な目標ができたのが大きく、ストーリーが新局面に入ったのが分かりやすく感じられる。
 特に和也と水原の関係で言えば、かつては恋愛をめぐる関係性が全面に出ていた。二人はそもそも恋愛を介しない関係性を持っているが、それは祖母に嘘がバレないようにするというある種消極的な共犯関係だった。しかし、映画作りというより積極的な共通目標が設定されたことにより、この共闘関係に大きなフォーカスが合わさるようになってきた印象である。バディものへの架橋と言っても良いかもしれない。
 ところでみにちゃん可愛いですね。後出しで追加されたヒロインとはいえ一歩引いたところから引っ掻き回すという明快な役割があってそこも良い。本人曰く弟子だが、あの後輩感がたまらないよね。
 それに引き換えすみちゃんは出番が少なく、まみはほぼ出番なし。ルカちゃんは相変わらず大正義だがストーリーの主眼が恋愛から映画に移ったせいでかなり割りを食っている。結果的にヒロイン間のパワーバランスは水原一強がより加速している感じだ。巻き返しがあるのか、期待がかかる。

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

 今期の農民枠である。よくある異世界ものからちょっとずらした感じのところは意外と目の付け所が面白かったりする。本作で言えば自販機に転生するわけだが、作者が自販機好きすぎないと書けない話だと思う。やはり人が出る作品が一番ということか。
 主人公であるにも関わらず人と会話をすることができず、ヒロインとさえ部分的な意思の疎通しかできないというキャラ設定はかなり思い切っていると思う。見てないけど剣は多分喋れるんじゃなかったっけ。しかも人間に戻る(話せるようになる)選択肢が将来的にはありえるにも関わらず、自販機ではない自分に価値はないという思考からその可能性を否定的に捉えるのは興味深い。こういう異世界ものは現世での抑圧経験や失敗経験から、異世界では俺TUEEEEするのが定跡だが、ハッコンは人間である自分と自販機である自分を分けて捉えているが故に異世界に転生してなお救済されきっていないわけだ。こういう心の機微をしっかり捉えることで、本作はただの馬鹿馬鹿しいアニメではなくなっている。…流石に過言か。
 こういうアニメで真面目に考えることではないが、あの世界で流通している貨幣は金貨や銀貨といった硬貨が主っぽい。それをハッコンは受け取って代わりにサービスを提供しているわけだが、ハッコンが溜め込んだ貨幣はそれ以上どこかへ流通することはなく、ハッコンの内部でポイントへと変換されて霧消する。この過程が続けば、あの世界はそのうち深刻な硬貨不足に陥り、深刻なデフレが起きそうだが大丈夫なのだろうか。というか金属貨幣を使い込んだら金属自体も不足しそうだ。鉄とアルミの価値は逆に暴落しそうである。ハッコンのせいで経済破綻、とかになったら…とか想像すると少し面白い。
 ところでヒロインのラッミスさんは言いづらすぎませんかね。途中までずっとランミスだと思ってたよ。声優さえも言えてないよ。人間には発音できない名前ですね。

無職転生Ⅱ ~異世界行ったら本気だす~

 OPが良い。あまり異世界ものアニメのOPとは合っていない雰囲気だが、それでもなんだか良い感じだった。上手く言語化できないが好きである。
 2期のテーマは一貫して、ルーデウスのEDを治すことである。一期のラストでエリスに捨てられた(とルーデウスは思い込んでいる)為に勃たなくなってしまったルーデウスがシルフィと再会して治るまでの話だ。私は幸いなことに彼と同じ苦しみを経験したことはないのだが、それ故に共感することができずやや苦しかった。おそらく本作を支持している人々の大部分は、経験したことがないにも関わらず共感しているものだと思われる。なぜそれが受け入れられているのかはよく分からない。想像力が足りないよ、ってことでしょうか。あえて悪い言い方をすれば、「勃たなきゃ男じゃない」という規範を打ち出しているようで受け入れ難かった。そんなに大事なことかなぁ…うーん…。
 見方を変えれば、ルーデウスの魔力や戦闘力、学識は何も失われていないにも関わらず、この一点だけで彼がああも自信を失ってしまうということをどう考えるかが重要なのかもしれない。彼は自意識においてはいまだにルーデウスではなく引きこもりおじさんのままであり、イメージの世界では杉田ボイスのおっさんである。あの状態の彼にとっては、魔力も剣術も借り物のような意識なのであろうか。あるいは、そんな現実離れした力よりも、女にモテるという生前からの価値規範の方が重要ということであろうか。いずれにせよ、本作を単なる俺tueeeeと区別する上で重要な視座がこのあたりにはあるのかもしれない。
 もう一つ考えたい重要な論点は、七星静香との邂逅であろう。自身と同様日本からの転生者(転移者)である七星と会った時、二人は日本語で会話をする。当然、現地人であるシルフィは日本語がわからないので「二人ともわかる言葉で喋ってよ」というが、二人はそれどころではなく日本語で喋り続ける。のちに今の言葉はなんだとシルフィに聞かれた七星は私とルーデウスは同郷でありそこの言葉だと説明するが、シルフィはルーデウスと同郷なのでそんなわけないと思うわけだ。
 実は本作においては一期から言語の問題が示されていた。ルーデウスは語学の勉強を頑張っていたし、それが彼の武器の一つだった。言語は断絶を生み出す原因であると同時にそれを架橋する道具でもあるのだ。そこに母語としてついに日本語が登場したインパクトは、おそらく一般に読み取られているよりも大きいものであると思う。それはルーデウスと七星にしか通じえない言語空間を作りだすだけではない。ルーデウスにとってはこの世界で勉強してきた言語とそれに付随する断絶と交流の経験を全て無化して、彼をあの忌々しい現代日本へと直接に接続してしまうのである。帰りたくない、と彼が日本語で述べたことはある意味で象徴的である。適当言いすぎた感もあるが、考えがいのあるテーマといえよう。
 2期は分割2クールで、後半も近く放送されるらしい。楽しみである。

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