個別指導塾の分析と、強みの活かし方

大学生のころのバイトは4年間、個別指導塾の講師でした。

始めの3年間は、漠然と自分の記憶のなかにある理想の教師像をトレースして教えていました。幸いなことにどの教科もどういう教わり方をしたのか漠然とおぼえていたのでそれらしい仕事ができました。

考え方が変わったのは、就職活動から復帰した大学4年生のころです。このころには大学の授業も減り始めていたのでシフトに入る回数も増えていて漠然とこなすには多すぎる時間を講師として過ごしていました。また、就活を通じて働くということをリアルに捉えらるようにもなったのかもしれません。

理由はともあれ、そのころから「個別指導塾の講師として何が求められているのか?」「個別指導ならではの強みはなにか?どうすれば強みを生かせるか?」といった問いについて考えるようになりました。

ここでは、その頃に考えていたことをまとめて今、や今後個別指導塾でバイトをしようと思っている大学生などの役に立ってやろうなどという思い上がりでノウハウをまとめてみます。(ノウハウのドキュメント化の練習がしたいという動機もあります)

記事の流れ

記事の流れを説明します。はじめに、個別指導の強みや弱みについて考察をしていきます。次に考察に基づいてどのような行動をしたのかを書いていこうと思います。

個別指導の弱み

個別指導の弱みは、「講師の質」「高コスト」の2点です。

講師の力が弱みというと現役の講師の方に失礼かもしれませんが、個別指導塾という形態が講師の質を高い水準に保つのが難しい構造です。

個別指導には沢山の講師が必要です。そしてその多くは大学生が担っています。つまり、そのほとんどは長くても4年で辞めてしまうわけです。平均勤続年数4年の職場にどれほどのノウハウが蓄積できるでしょうか?さらに、ほぼすべての講師はシフト制でシフトが異なれば一度も顔を合わせない講師もいます。このような状況でノウハウの共有を行うのはほぼ不可能です。

さらに、学校の先生や集団授業の塾講師の方の多くは教職免許を持っています。個別指導の担い手である大学生はよくて教職免許に向けた勉強中です。

講師の質で他の教育形態に太刀打ちができないという説明はこのくらいにします。このことを考えていた当時の僕も大学受験が終わってから年数が過ぎていて当時どのような教わり方をしたのかという記憶があいまいになっていました。

なので「講師の知識量」や「圧倒的に分かりやすい解説」といった領域で勝負をするのはあきらめようという結論に達しました。

次に「高コスト」です。個別指導塾の講師が他形態の講師よりもコストが低かったとしても、その講師を一人の生徒に張り付けてしまってはどうしても高コストになります。先ほどの議論で「知識量」や「解説のわかりやすさ」で勝負をすることをあきらめた以上、ほかの分野でコストに見合う価値を提供する責任があります。

個別指導の強み

個別指導塾の強みは「圧倒的な対話」と「カリキュラムの柔軟性」にあるという結論に達しました。

一般的な個別指導では約1時間にわたって生徒と講師は1対1で向き合います。解説を行う時間はもちろん問題を解いている最中もです。「どのような解き方をしているか」「どの工程に時間をかけているのか」といった情報を個別指導塾の講師は知ることができるのです。これは集団授業の講師、絵以上授業の講師、学校の先生、のいずれも得ることが難しい情報です。この情報を最大限活かせば専門的な訓練を受けていない講師であっても高コストに見合う価値を提供できるのではないかと考えました。

このグラフは各形態の強みと弱みをブルーオーシャン戦略で紹介されていた戦略キャンバスにあてはめてみたものです。

どのように活かしたか

ここからは、先ほど分析した弱みと強みをどのように落とし込んでいったかについて説明します。

僕が働いていた塾はどちらかというと補習塾に近く、学校の進度よりも先に単元を扱うことがまずなかったので単元の解説を最低限にしました。

解説中はどうしても一方通行になってしまいます。このような工程は映像授業を見るほうがはるかに低コストで質の高い解説を受けることができます。

個別指導の強みを最大限に活かすことのできる、工程は問題演習です。

きりがいい場所まで解き進めているのをただ眺めていては意味がありません。そんなことは問題集の別冊回答がいつもやっていることを給料をもらってやっているようなものです。

僕は、生徒が難なく解いているように見える問題であっても途中で止めて質問をしていました。

「なぜその答えを選んだのか?」「どうやって解いたのか?」「別解は思いつく?」

これらの問いかけは便利なもので問いかける側はなにも考えていなくても、聞かれた側の脳を回転させることができます。もちろん、問いかけっぱなしでは卑怯なので聞いてから慌てて自分でも考え始めます。

これらの問いをしてみると、完全に理解しているように見えた生徒も実は答えのパターンを覚えていただけであったり、勘違いしていたがたまたま同じ結論に達していたりといったことがあったりします。

これらの”バグ”は他の形態の塾や学校では見つけられずに、深い理解が求められる難易度の高いテストや高度な単元まで顕在化するはずだったかもしれません。このようなバクを見つけて修正することができれば個別指導の高コストも正当化することができるのではないでしょうか?

次にカリキュラムの柔軟性の活かし方を説明します。

他の塾は分かりませんが、僕の働いていた塾では決められた時間に決められた教科の授業を行っていればその内容についてはあまり介入されませんでした。なので、時間が足りない分野にはカリキュラム以上に時間をかけたり、定期テストの解きなおしに数コマつかったりという使い方が現場の判断でできました。これは、ほかの形態の塾や学校にはできないことだと思います。

これらの手法をつかって、通年で担当した生徒に関しては成績を上げることができたと思っています。

まとめ

個別指導塾は高コストで講師の質も保証できない。

一方で、対話の量やカリキュラムの柔軟性といった面で強みがある。

強みを生かすために、積極的な質問による理解確認や十分な演習時間を現場裁量で確保するなどの手法が考えられる。

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