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給与支払報告書と法定調書の作成・提出ガイド:期限内に正確な手続きを!


給与支払報告書や法定調書の提出は、事業者にとって避けられない大切な業務です。従業員の税金計算に関わるこれらの書類を、正確かつ期限内に提出することで、従業員が住民税や所得税を正しく支払えるだけでなく、事業者自身も罰則を回避することができます。しかし、その作成・提出は初めての事業者にとっては少々複雑に感じるかもしれません。本記事では、給与支払報告書と法定調書の作成方法、提出に関する重要なポイントを詳しく解説し、スムーズに手続きを進めるためのヒントをお伝えします。

給与支払報告書を作成・提出しよう


給与支払報告書は、法人や個人事業主が従業員に支払った給与の報告を行うための書類であり、毎年1月31日までに従業員がその年の1月1日現在で住んでいる市区町村に提出する必要があります。例えば、令和7年1月31日までに提出する令和6年度分の給与支払報告書は、令和7年1月1日現在の居住地の市区町村に提出します。

給与支払報告書は、従業員ごとの明細をまとめた個人別明細表と、全体の提出状況をまとめた総括表のセットで提出します。この報告書がもとになり、市区町村は住民税を計算します。適切な作成と提出が重要です。

個人別明細表の作成


個人別明細表は、源泉徴収票と同じ形式で従業員ごとに1枚ずつ作成し、市区町村に提出します。ただし、源泉徴収票とは異なり、給与支払報告書では個人番号(マイナンバー)や会社の法人番号を記載する必要があります。この個人別明細表に基づき、市区町村は給与を受け取った従業員の住民税を決定します。

重要なのは、令和5年度提出分から、個人別明細表の提出枚数が簡素化され、従業員1人あたり1枚の提出で済むようになったことです。以前は2枚提出する必要がありましたが、この変更によって手続きが少し簡単になりました。

また、源泉徴収票の作成については、他の投稿で詳しく解説されていますので、年末調整について詳しく知りたい場合は、そちらも参考にすることをお勧めします。

総括表の作成


総括表は、提出する個人別明細表の数や、報告書を提出する市区町村の数などをまとめた表です。市区町村ごとに総括表の形式が異なる場合があるため、各市区町村の指示に従って作成します。総括表には、以下の項目を記載します。

- 給与支払者の情報(法人番号、法人名、代表者名など)
- 事業の種類
- 受給者人数(1月1日現在の在職者数)
- 報告人員
- 所轄税務署名
- 給与支払方法と支払期日
- 納付書の送付希望
- 指定番号(市区町村が指定する番号)

この情報を正確に記入することで、給与支払報告書全体の信頼性が保たれます。

住民税徴収方法の選択


給与支払報告書を作成する際に重要なポイントの1つが、住民税の徴収方法を正しく選択することです。総括表の「報告人員欄」には、特別徴収や普通徴収の区別を明確に記入し、人数を報告します。

原則として、給与支払者は全ての従業員の住民税を特別徴収で徴収する義務があります。特別徴収とは、給与から住民税を天引きして、給与支払者が市区町村に代わって納付する仕組みです。これは、所得税の源泉徴収と同様の考え方です。給与受取者にとっては、住民税の納付を自分で行う必要がなくなるため、特別徴収の方が一般的です。

ただし、次の場合には例外として普通徴収を選択することが認められる場合があります。

- 他の会社で特別徴収が行われている
- 給与が少額で住民税が天引きできない
- 退職者で、給与が支給されない

普通徴収を選択する際には、「普通徴収切替理由書」を市区町村に提出する必要があります。普通徴収を選んだ場合、従業員自身が住民税を納付するため、従業員との確認が必要です。

法定調書を作成・提出しよう


法定調書は、源泉徴収票や支払調書など、さまざまな種類の支払いに関する情報を税務署に報告するための書類です。給与や報酬、利子、配当などの支払者が、支払先の情報を記載して提出します。法定調書は、支払いが行われた年の翌年1月31日までに提出する必要があります。

支払調書の種類


法定調書には60種類以上の支払調書がありますが、日常的に多くの企業で扱う主な支払調書は以下の6種類です。

1. 給与所得の源泉徴収票
2. 退職所得の源泉徴収票
3. 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
4. 不動産の使用料等の支払調書
5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
6. 不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書

これらの支払調書は、全て「法定調書合計表」と一緒に提出します。以下では、特に重要な支払調書について詳しく解説します。

給与所得の源泉徴収票


給与支払報告書とは異なり、源泉徴収票を税務署に提出する必要があるのは、年末調整が行われた従業員や特定の条件を満たす従業員のみです。具体的には、次のいずれかに該当する場合に源泉徴収票の提出が必要です。

1. 年末調整を行った場合

   - 法人の役員で、その年の給与が150万円を超える人
   - 従業員で、その年の給与が500万円を超える人
   - 弁護士、税理士、公認会計士などで、年収250万円以上の人

2. 年末調整をしていない場合

   - 給与が2,000万円を超え、年末調整を行わなかった人
   - 扶養控除等申告書を提出せず、年収50万円を超える人

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書


報酬や賞金に関する支払調書は、以下の要件を満たす場合に作成します。

- 弁護士や税理士などに対する報酬が年間5万円を超える
- 作家や画家に対する原稿料や講演料が年間5万円を超える
- 外交員やプロボクサーなどに支払った報酬が50万円を超える

なお、支払調書を作成する際には、消費税が明確に区別されている場合は消費税を除いた金額を記載することが認められます。

不動産の使用料等の支払調書


不動産使用料に関する支払調書は、法人が不動産業者である個人に対して15万円を超える支払いを行った場合に作成が必要です。ただし、法人が法人に対して支払う地代や家賃については、支払調書の提出は不要です。支払調書の提出が必要かどうかは以下のように区別します。

- 法人が不動産業者である個人に支払った権利金や更新料は提出が必要
- 一般の個人が支払った家賃や権利金は提出不要

まとめ


給与支払報告書や法定調書の作成・提出は、従業員の住民税や所得税に直結するため、非常に重要です。期限内に正確に提出しない場合、罰則の対象となる可能性があるため、必ず期限を守り、必要な書類をしっかりと作成しましょう

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