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地球に暮らす人間の責任とは?

 「いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの」という絵本がある。とてもカラフルでシンプルな絵本だが、内容は素晴らしい。私たち人間は、あたかもこの地球を自分たちが治めているかのような、傲慢でエゴイスティックな錯覚に陥っている。しかしながら、この絵本は、地球に数え切れないほど多種多様な生き物が暮らしていて、それぞれがお互いを必要とし、つながり、ひとつの大きくて美しい模様を描いていること、そして、ある生き物が絶滅するということは、そこに繋がっている生き物にとっても大問題だということを教えてくれる。すべての生き物が織りなす、複雑に絡み合ったその美しい模様を壊しているのは、実は私たち人間である。人間にとって生活しやすい環境を追求するあまり、空気や川や海を汚し、動植物を乱獲し、自然を破壊しているのだ。

 ワシントン条約は、国際取引によって生存を脅かされている野生動植物の保護を目的とする条約である。正式には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」という名の条約は、1973年にワシントンで採択され、1975年に発効された。日本は当時、世界有数の野生動植物とその加工品の輸入国であったため、早期加入が求められていたものの、国内法の整備に時間がかかり、ようやく1980年に締結国となった。しかしながら、そのワシントン条約が守られていない実態が世界には数多く存在する。昨年度のワシントン条約締約国会議でも大きな問題となったが、現在、アフリカゾウは15分に1頭が密猟目的で殺されている。印鑑や装飾品、和楽器のバチや茶道具などで日本に馴染みのある象牙は、ほとんどがアフリカゾウから採取された物である。ワシントン条約で守られているはずのアフリカゾウはここ3年で10万頭が殺されてしまった。早ければあと10年でアフリカゾウは絶滅すると予測されている。

 アフリカゾウはアフリカの生物多様性保全に重要な動物だ。アフリカの森林にはゾウの生態サイクルを利用して繁殖や拡大を繰り返す植物が存在し、ゾウが絶滅すれば森林やサバンナの生態系が崩れ、アフリカ全体の環境破壊が起こる恐れがあるという。中央アフリカの熱帯雨林は「地球の肺」とも言われており、その変調が地球全土に大きな影響を及ぼすことは容易に想像がつく。日本は、長年の象牙の消費によって、ゾウの個体数減少に大きく関わってきたにも関わらず、絶滅危惧の実態をほとんど知らされないまま消費を続けている。象牙輸入の管理が徹底していないこと、ネットショップで安価な象牙販売を継続していることを、海外メディアからは大きく批判されているのだ。いまこそ日本国民は、ゾウを始めとする動植物の『絶滅に貢献』するのではなく、世界の『生物多様性維持をリード』する国になるべきではないだろうか。

 「地球にとって 一番役立たずで 害になっていたのが 私たち人間だったなんて それも最近 やっと気付いたところです」
 星野富弘さんの詩が心に沁みる。

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